≪五節;一時(いっとき)の優勢≫

 

 

〔その一方で―――クレメンスのイセリアたちは・・・〕

 

 

イ:さぁ―――ジュヌーン、沢山食べて精をつけてね〜

  何しろ、あなたはハイネスの名家、ガフガリオン家期待の星なのだから〜

 

ジ:分かっているさ―――イセリア。

  明日の勝利は、ぼくたちの輝かしい未来のためにあるようなモノなのだからね。

 

イ:ああ―――ジュヌーン・・・(うっとり)

 

 

リ:(うっはぁ〜〜あの一辺だけ異様に盛り上がっちゃって・・・

  確かに―――言ってることはまともなんだけどさぁ〜〜―――)

セ:(なんだか―――見てるこっちが、バカらしく&恥ずかしくなってきちゃうわよね。)

 

リ:(けどさぁ〜〜―――上の連中も、よくよくあいつを合格させる気になったもんよね。)

セ:(・・・結構圧力とかあったんぢゃない?)

 

リ:(あ―――なぁ〜る・・・)

 

 

〔クレメンス砦の増援軍として現れたのは、“雪”の宿将・イセリアの許婚である、ジュヌーンという青年将校でした。

でも彼は、これまでに86回も『騎士検定』という試験に落第してきたという経歴の持ち主でもあるのです。

それがこの度、念願かなって87回目にして合格を果たし―――許婚のいるこの砦へと馳せ参じてきたというのです。

 

ですが―――・・・彼が合格をしたという背景には、様々な思惑があったからなのではないか―――と、揶揄する“月”と“花”なのですが・・・

こちらのイセリアの方では、もう自分には後ろ指を差されるようなことはなくなったこともあるからなのか、ご満悦の様子・・・

 

 

けれど―――哀しい事に・・・この表情も、永くは続かなかったのです・・・

 

 

それはそれとして――― 1万5千もの大増援に、気勢の上がるハイネス・ブルグ側は、

このまま果敢にも野戦に持ち込んだのです。〕

 

 

イ:わが軍よ―――私に続き、その鋭意を持って敵を打ち崩さんっ―――!!

セ:私たちも―――!イセリアの軍には劣らない事を証明するのよ!!

リ:こちらも――――あのときの二の轍は踏まない! 続けえぇ〜〜―――っ!!

 

〜わぁぁ――――っ〜

 

〔雪月花の三将率いる軍は、気勢の上がったまま進攻を続けました。

そしてそれは―――カ・ルマ側にも、少なからずの動揺を与えていたのです。〕

 

 

ヨ:フン―――小癪な事を・・・。

  よし―――・・・ならば、私のほうも撃って出るとしてやろうではないか・・・。

  何も、机上にて策を弄するばかりが能ではないことを、思い知らしめてくれる!!

 

 

〔このまま―――敵の気勢に呑まれたままでは、さすがにまづいと思ったのか、

ヨキが自らの得物『双咬牙』を手に、戦場へと赴いたのです。〕

 

 

セ:(むっ――?)あなたは―――・・・

 

ヨ:私は、カ・ルマはパロアの守将であるヨミという者だ・・・

  この私の手にかかって死ねる事を、光栄に思うがいい!

 

セ:・・・成る程―――つまり、あなたを斃せば、あなたの率いる軍は雲散霧消と化す―――と、いうことですね。

  ならば、不肖“花”のセシルがお相手し、申し上げる―――!!

 

ヨ:フン―――・・・付け入る隙など、与えんよ・・・

 

 

〔その戦場で―――このヴェネフィックの片割れと対峙することになったのは、“花”の宿将であるセシル・・

でも・・・所詮強がって息巻いたところで、武官と文官との能力の違いには、哀しいまでの開きがあったのです。

 

そう―――ヨミは“知略”で軍(いくさ)を行う者であり・・・セシルはその“武勇”を持って軍を行う者・・・

早い話が、直接的な戦闘においては、武力にしても、経験にしても、はるかに圧倒的にセシルの方に分があったのです。〕

 

 

セ:吼えよ――――わが剣=イクセリオン=!!!

 

ヨ:う―――ぐおっ?!! お・・・おのれ・・・・な、中々にやる!!

セ:覚悟しなさいっ―――!!

 

ヨ:(フフ・・・)だが・・・そう簡単にはやらせんよ―――

セ:――――ナニ??

 

――シャ                   ン☆――

 

ヨ:フフフ・・・ハハハ―――――今日のところはこのまま退いてやる! ありがたく思うんだな!!

 

 

〔その者は・・・大言壮語するばかりで、実力は然程なかった―――

に、しても・・・今まで自分たちが苦しめられてきたのは、彼の者のその“智”であったことには間違いはなく、

それゆえにセシルは余り深追いはせず、今回のところはそれで収まらせたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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