≪三節;身の程知らず≫
―――しかし・・・
キ:フフン―――まあいい・・・少々気が変わった・・・。
このまま、名乗らずに縊(くび)り殺してやろうと思っていたが・・・
このオレ様の名を抱いてから地獄へ逝けィ―――!
―――すると、その時・・・
ジ:うわわぁぁ〜〜―――!!
ズガシュッ―――
リ:(あ―――ッ、あのバカ・・・)
セ:(一体何を考えて・・・今までの様子を見ていなかったの??!)
イ:ジ・・・ジュヌーン!!
〔なぜ―――・・・あの時イセリアの許婚は、名乗りの最中をしている敵将に対し、剣を振り下ろすことが出来たのか・・・
なぜ―――・・・日頃蔑まれていた存在が、その恐怖で手足の指先まで痺れて動かせなかった彼女たちを尻目に、
“魔将”相手に、一太刀を浴びせる事が出来たのか・・・
しかし、それこそは――――〕
ジ:み―――見てよ・・・イセリア・・・
ボクは―――ボクは―――・・・キ、君たちが云うほど・・・臆病なんかじゃあない・・・
リ:(そ―――そんなことで?!!)
セ:(き・・・気持ちは分からなくはないけれど・・・時と場所と相手を選びなさいよ―――)
イ:ジ・・・ジュヌーン・・・あなたって人は―――
〔そう―――彼自身も、また・・・不甲斐のない連中の一人だということを、自覚していたに違いはありませんでした・・・。
けれども、国にゴマンといる、そんな連中より一つ違っていた事は、彼の許婚の存在―――
ハイネス・ブルグの三本柱として敬愛されている、イセリアという存在に感化されたから・・・なのかもしれません。
けれども―――向かっていった相手が・・・最悪すぎました。〕
キ:――――・・・ヤってくれるじゃあねぇか・・・小僧。
だぁァが、そんなもので再生者<リジェネレーター>である、この
キュクノス=アムド=オズモ
―――様に通用するとでも思っていたのかぁ?!!
リ:ええっ―――リジェネレーター??
セ:さ・・・再生者―――それに・・・
イ:キュクノス―――・・・普通の将ではないとは思ってはいましたが、よもや『七魔将』の一人とは―――・・・
相手が悪すぎたわ、ジュヌーン! ここはひとまづ撤退を!!
キ:そうはいくかぁ―――!! 貴様等は・・・このオレ様の身体を傷つけすぎた・・・
それをこれから――――(ジャラン)・・・キサマらの命で償ってもらうとするぞ・・・
〔“彼”―――キュクノスの正体は、リジェネレーター『再生者』・・・
それは、生きながらにして、不死の王・ヴァンパイア並みの“再生能力”を手に入れている・・・
―――と、される 異能 の持ち主・・・。
しかも―――彼が『七魔将』の一人であることを知ったとき、自分たちでは敵う筈もない事を悟ったイセリアは、
一旦クレメンスへと撤退する事を選択したのです。
ですが―――キュクノスは・・・魔将の一人である者は、それを許すはずもなかった・・・
自分の身体を好き放題に傷付けた者達を・・・
だから、彼は自らの得物を見せたのです。
そう―――見るからに痛々しそうなその得物・・・
その棘(トゲ)が鎖のように繋がれたる武器――――それを古人(いにしえびと)曰く・・・
百 足 鎖 鞭
む か で さ べ ん
―――と、云う・・・〕
リ:あ―――あれが・・・“魔将”の武器・・・
セ:なんておぞましい―――未だあれの手にかかって死に絶えた者達の血ノリが・・・こびりついたままじゃない―――!
イ:ジュヌーン―――! 早くその場を離れて!!
キ:はァ〜〜―――ッはっはぁ!! そうはさせるかぁ!!
キサマらは今ここで死に絶えるのだぁ〜!!
イ:あぁ―――いけない・・・私が、あの人を助けないと―――・・・!!
り:な―――なにをしているの?!イセリア!! セシル―――!!
セ:判っているわ―――
〔仲間内から、『ダメ男』だとか、『頼りのない男』だとか揶揄されていたとしても、
自分にはかけがえのない存在―――・・・だから、自分を犠牲にしてまでも、
イセリアは自分の許婚であるジュヌーンを救おうとしたのです・・・。
けれども、同僚であるリリアやセシルにしてみれば、彼女は国の舵取り役であり、雪月花の三将の一人・・・
名家とはいえど、凡将である者と―――国の要人―――・・・
果たしてどちらが大事であるのか、それは如実に態度に表れていたことでしょう。〕