≪十節;葬儀の場・・・にて≫
〔そして―――ジィルガの告別の義にて・・・その場所には、なんとこの人物も・・・〕
ガ:(ヤレヤレ―――・・・何も責任感じて、死ぬことはないだろうに・・・・。
そういうとこは、全くもってあいつと変わんないねぇ―――・・・。)
〔それは、リッチー・ガラティア・・・でも、どうしてこの人物がここに?
それは、ご多分に漏れず、ジィルガの訃報を、耳に入れたから・・・。
そして、告別の義も、滞りなく終わり――――
でも、彼女を敬愛していた存在は、その棺の傍を、決して離れようとはしなかったのです・・・。〕
タ:うっ―――うっ――――ううっ・・・ヒグッ・・・・
ノ:な、なぁ―――タケル・・・
タ:ううっ―――ううっ―――うっ・うっ・う・・・
ノ:(はぁ・・・)あ―――っ!大老様!!
マ:タケル・・・もう泣くのを止めんか―――いくら待ったところで、死した者は甦ってきはしない・・・。
タ:――――・・・。
マ:・・・・気が済んだら、帰ってこい。
それまで、扉に閂(かんぬき)はかけておかんからな・・・。
〔代わる代わる、泣きじゃくる者に、労わりの声をかけてやる近親の者達・・・。
そして―――やがてそこには、誰もいなくなり・・・棺の前にはタケルがただ一人・・・
――――と、そこへ・・・〕
ガ:(スゥ―――)おや、まだここにいたのかい。
タ:あっ・・・あなたは、お姉さん―――どうしてここに?
ガ:この人が死んでしまったのは、自分に責任を感じてしまったからで、何もあんたの所為じゃあない・・・。
このことは、死の間際に、直接この人から聞いたんだろう?
タ:で―――でも!! 姉ちゃんは分からないことを言っていた・・・。
“私は違う”――――って・・・一体、何が違うと言うんだ・・・姉ちゃんは姉ちゃんで―――それ以上の何者でもないはずなのに!!
ガ:ふぅ〜―――ン・・・じゃあ、あんたは気付いていた―――って、言うんだねぇ・・・。
この人が、『女禍の魂』を有して“いない”ということを。
タ:そんなの―――そんなの関係ないっ―――!!
ただ・・・姉ちゃんは、ボクの傍にいて―――笑ってさえいてくれれば・・・それでいいんだ―――
ガ:そうかい――――
(キッ!!)甘ったれたこと、ぬかしてんじゃあないよ―――!!
タ:(え・・・?)お姉・・・さん?
ガ:それじゃあ―――あんたは何のために生かされてるんだ・・・これから世に出てくる、真に『女禍の魂』を有するお方をお護りする―――・・・
それが『清廉の騎士』の務めじゃあないのかい―――!!
タ:え―――・・・で、でも・・・・
ガ:はぁ〜〜あ! ――――ったくぅ・・・ヤレヤレだよ。
柄にもなく、他人に説教たれる―――だ、なんてさ・・・私も、焼きが廻ってきちゃったかねェ?
ほれ―――ちょっとそこ、どいて・・・
タ:(えっ―――あっ!!)ちょ・・・ちょっとお姉さん??! 姉ちゃんの棺を開けて、ナニ―――を・・・
ガ:する―――ってかい? なぁに、ちょいとした調べもんさね。
タ:(姉ちゃんの遺体から・・・採血??)あ・・・ああ――――っ!!
ガ:(ペロ・・・)ふぅ〜〜―――んむ・・・なぁるへそ〜、どうやら・・・その死に際しては、別に遺恨など残っていないみたいだぁね。
ただ―――あんたの事に関してだけは、少々心残りにはなっているようだ。
それに―――・・・
タ:それに??
ガ:いや――――なんでもないよ・・・。
(名前まで・・・一緒だったから、もしや―――と思ってたけれど・・・成る程ねェ、こんなところにいたとは―――)
〔唯一人―――しょげていたタケルに、一喝を入れた存在が・・・それが、ガラティアだったのです。
しかし、ガラティアは、タケルを元気付けるために、ここに来ていたわけではなく、とあることを調べるため・・・
そう、死したジィルガの身体から、血を採取して、その想いの中に“遺恨”があるかどうかを調べるために―――なのです。
そして結果としては・・・そんなものは遺されておらず、クリアーしたのですが・・・
どうやら―――彼女にしてみれば、もう一つの重大な事に、気付かされたようなのです。〕