≪十一節;貮蓮―――その真の姿・・・≫

 

ガ:さて―――と・・・ねェ、ちょっと、坊や? あんたの持ってる貮蓮・・・出してみて。

タ:あの・・・ボクはタケルという名前です、“坊や”なんかじゃ・・・

 

ガ:あ゛〜〜そうかい・・・そいつわ悪かったねェ。

  じゃあ、タケル・・・お前が、清廉の騎士である証し―――それを出して御覧。

タ:は・・・はい。

  (ゴソゴソ・・・)これですか―――?

 

ガ:そ―――、ンじゃあ・・・次は、刃を出してみようか?

タ:はい―――(ブゥゥン・・・)・・・・こうでいいですか?

 

ガ:ふぅ〜〜―――ン・・・(気の所為・・・と、思ったけれど――――やはり、か・・・)

 

 

〔そして、次にガラティアが気になったこと・・・

それを識るために、タケルが常日頃持っている、貮蓮を出してみるように、彼に促せたのですが・・・

彼が氣の刃を見せたことにより、確信したことが一つ・・・・それは―――〕

 

 

ガ:ねぇ―――タケル・・・どうして、貮蓮の刃・・・“片方”しか出てないんだい?

タ:はい―――(って)ぇえ?!片方・・・って、どういう事です?!

 

ガ:なぁ〜る・・・どうやら貮蓮の特性―――その半分も識っちゃあいなかったようだねェ。

  どれ・・・私に貸して御覧―――

 

タ:ええっ―――でも・・・これ、持ち主にしか反応しないんじゃあ・・・

ガ:いいから―――、この私が、下世話ついでに、あんたにこの武器の完全な姿を、見せてやろうってんだ・・・

  見ないと、損するよぉ〜?

 

タ:(え―――・・この、貮蓮の完全なる姿・・・)は、はい―――

ガ:ふふ〜―――ん♪どうも・・・

  いいかい―――よぅく、見ときなよ・・・・はぁああ――――っ!!

 

 

〔その剣の名――――『貮蓮』の由来ともなったある言葉・・・

“貮つに蓮なる、緋の刃”

 

そう・・・タケルは、初め―――柄の片方側からにしか、氣の刃を生じさせてはおらず、もう片側からは、何も出てはいなかった・・・

つまりは、完全な態を取っていなかったのです。

 

でも―――これの持ち主ではない、ガラティアが、彼からこの剣を借り―――同じ要領をして、気の刃を生じさせたことにより、

この武器本来の・・・・完全な態が、この時見えたのです。〕

 

 

タ:あ――――あ・あ・ぁ・・・・

ガ:(ふぅぅ・・・)・・・・どう、ビックリしたかい?

 

タ:は――――はい・・・柄の両側から、刃を発生させるなんて・・・・知らなかった。

ガ:フフ――ん♪ こぉんなもんで、驚いてもらっちゃあ、いけないねぇ〜〜♪

 

タ:(え・・・)どういう・・・こと??

ガ:それはね、いくら形態ばかりいっぱしでも、その実が伴わないことにはねぇ〜・・・

  そん時は、今度こそ、本当の『女禍の魂』を有したる者をお護りできない―――ってことになるんだよ。

 

  どれ―――・・・でてきな、ヴェンダー

 

ヴ:ははっ―――

 

タ:う、うわっ――― お、お姉さんの影から・・・魔物?!!

ガ:フフ〜ん・・・(ち・ち・ち・・・・)そいつは、ちょいと違うねぇ―――

  こいつは、私のもう一つの研究の成果の賜物・・・ホムンクルスのヴェンダーと言う者さ。

 

ヴ:創造主御ン自ら紹介いただけるとは・・・恐縮にございます、主上・・・。

 

 

〔ガラティアの影より、突如として現れた、『形容(かたち)のなき生命』<ホムンクルス>そのなを“ヴェンダー”・・・。

その姿は透明であり、その“眼”たる存在が、ただ不気味に光る存在だったのですが―――・・・

 

ならば、リッチー・ガラティアは、この存在を喚起して、ナニをするつもりだったのでしょうか?

それは・・・・ご多分に漏れず、演舞の開始――――〕

 

 

ガ:それより――――いくよっ!! はぁああ――――っ!!

ヴ:むむっ―――流石は主上・・・ならば、こちらも―――(ズ・ズ・ズ・・・)

 

ガ:ほほぅ―――『人狼形態』か・・・素早さで勝負に来るとは―――来いっ!!

ヴ:≪参る―――!≫

 

 

〔そこに―――タケルは不思議なモノを見ていました。

 

火花飛び散る、剣撃と牙と爪―――それとともに、見え隠れする、薄く晄る“盾”のようなモノ・・・

しかし、それこそが――――〕

 

 

ガ:どれ・・・タケル、あんたもやってみるかい?

タ:ええっ―――で、でも・・・ボクには・・・・

 

ガ:“出来ない”・・・って思っちゃあダメだよ。

  まァ、初めなんだから、今の私みたいにスムーズに出すのは無理としても・・・ね、要はイメージすることこそが大事なんだ。

 

タ:は――――あ・・・。

  ―――――・・・。(ス―――・・・)

 

ヴ:≪主上・・・≫

ガ:≪しっ―――黙ってな・・・≫

 

タ:んんっ―――!(ヴゥゥン―――/ヴゥゥン―――) あっ・・・・・で、出た!!

ヴ:ほう―――!

ガ:やるじゃないか―――だけど、それだけで満足しちゃあダメだよ・・・。

  続いて―――“盾”のほうなんだが・・・こればっかりは、実戦通してやらないと―――ね。

 

  ヴェンダー。

 

ヴ:は・・・しかし―――主上・・。

ガ:≪まぁ―――私と違って、この子は生身の体なんだし・・・思いっきり手加減してあげな。

  それと、時限(とき)の流れも、ここの場所だけ緩慢にしてある・・・

この子が『晄盾』<コウジュン>を習得するには、十分に過ぎるだろうよ・・・≫

 

ヴ:そういうことならば――― では、清廉の騎士よ・・・お手合わせ願う!!

タ:・・・はいっ―――!お願いしますっ!!

 

 

〔悠久なる時限(とき)の流れの中で・・・清廉の騎士としての、全スキルを習得すべく、

再び光の聖剣をその手に握るタケル・・・果たして―――?!!

 

 

 

 

あれから―――・・・どれだけの時間が経ったのでしょうか――――〕

 

・・・ケル――――

 

タ:(ぅ・・・・ん――――)

 

・・・・い・・・・タケル――――

 

タ:ん―――・・・・んん・・・・っ。

 

ノ:おい―――タケル!!

タ:(はっ!!)の・・・ノブシゲ??! ど、どうしたんだ――― 一体・・・

 

ノ:それはこっちのセリフだ!! お前の親父さんが、いつまで経っても帰ってこない―――っていうから、ここに来てみれば・・・

  そりゃまァ―――確かに、お前がジィルガ様を、実の姉以上に慕っていたのは、分かっていたことだけどもなァ・・・・

 

タ:あ・・・あぁ―――そうだったな、すまなかった・・・。

  (ボク、一体―――)

 

 

〔こうして―――、清廉の騎士であるタケルが、その総てに於いて愛していた存在を失った事件は、一応の収束を見ることになり・・・

それから程なくして、老中職を辞退―――本編でも語られるところの『竹林の庵』へと隠遁するわけなのです。

 

 

 

ここで―――余談としては・・・

彼が、その深い眠りより醒めた時には、彼の者達と鍛錬をした記憶は、すっぽりと抜け落ちており・・・

ですが―――その代わりに、未修得であった技能は、須らく自分のモノにしていた―――と、言うことのようです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あと