≪三節;祝宴の最中―――≫
〔それはそうと、今回の侵略を撃退できた事で、勝利の美酒に酔いしれる者達が・・・
――――と、そんな宴の最中、実に奇妙な出で立ちの者が、この国の、その場所にいたのです。
これは、もしかすると、あの侵略者の間者なのでしょうか・・・いえ、それもちょっと違うようです。〕
謎:(ふふ―――・・・お気楽なもんだ、やつらが一時的に撤退したのには、考えあっての事なのに・・・
それを早くも戦勝気取り―――とは・・・)
〔その者―――紅く燃え盛る“焔”のような、『熾緋(しひ)色』の頭髪を成し・・・
その瞳には、冷静かつ理知的な、“菫”のような、『菫紫(きんし)色』を宿している・・・
が―――しかし、彼の者が、その身に纏える物は、落ち着きがあり、
かつ何者にも染まり、混ざる事がない『漆黒』の導衣であるという・・・。
しかも、ヨロシク昨今の状況を把握できている―――と、いうのです。
では、この者は一体誰なるか――――・・・と、それよりも?〕
役:さぁ―――さささ・・・ジィルガ殿も一献―――
ジ:いけませんわ―――若年寄様ッたら・・・
役:まァまァそんな難(かた)い事をいわずに・・・
今日の勝利は、いわば『女禍の魂』を有しておられるあなたと、『清廉の騎士』のあなたの義弟のお陰なのですから―――
謎:(なに―――?!)(ピク!)
ジ:そうですか―――? でしたら、一杯だけ・・・(くいっ)
美味しい、ものですね―――・・・
謎:(今・・・確かに、あの者の口から、あの子の名前が――― すると、あの女性がそうなのかい・・・)
―――ちょいと・・・確かめてみる必要性が、ありそうだねぇ。(に)
〔この国の重臣の一人が、巫女であるジィルガに、勝利の美酒をオススメしようとしたところ―――
そのある発言が、このなぞめいた人物の耳に止まったようです。
では、その謎の人物が気に留めた一言とは―――
『女禍の魂』
―――それだったのです。
そして、その人物は、それが本物であるかどうかを確かめるために、これから自身の眼(まなこ)で見定めるようです。〕
ジ:・・・―――すみません、ちょっと酔ったようですので、風に当たって参ります――――
役:あ? あぁ――――どうぞ、どうぞ・・・
ジ:では、失礼して――――・・・
〔愉しく杯を酌み交わしていたジィルガ・・・一体その時になにを感じてしまったのか、
自分が酔ってしまった事を理由に、座を抜けるようですが―――・・・どこへ?
それは――― 風当たりのよい、開けた場所・・・・ではなく、むしろ薄暗い、路地のような狭い場所・・・・
すると、そこには―――〕
ジ:さぁ――― いい加減出てきたらどうなのです? 先程から、怪しげなる氣が・・・駄々漏れですよ。
謎:ふ――― 私が醸し出していたモノを捉え、ここまで来る―――とは・・・中々大したものじゃあないか、
まづは褒めておいてやろう。
ジ:あなたは――――?
謎:ふぅん・・・中々に強い魔力を有しているようだけど――― あの子特有の耀きが見えてこない・・・
本当にあんたがそうなのかい?
ジ:なんの事を言っているの―――・・・それに、今、質問をしているのは私なのよ・・・
謎:(フフ―――)知れた事・・・お前が―――真に『女禍の魂』を有する者か・・・ってことがさ―――
それにねぇ、私が“誰”であるか・・・・そんな些細な事、どうだっていいじゃないか――――違うかい?
ジ:そう―――・・・ね、じゃあ、私がそうであったとして、どうしようというの・・・
まさか、『仁君』の偉大なる“魂”を奪いに来た―――と、でも・・・? そんな嗤い話にもならないようなことをしに来たのかしら?
謎:―――――だ、とすると・・・どうするというんだぁ〜い?(ニヤリ)
ジ:人知れず――――滅させていただく・・・まで!!
{オン―――・・・}
謎:ほぉう――― 『シンゴン』の術式かい、いかほどのものか、見極めさせてもらうよ・・・
ジ:ぬかせ―――! はぁ―――――――っ!!
謎:(フッ―――・・・)位相―――(ブゥゥン・・・)
(ブゥゥン・・・)――――反転:謎
ジ:(な・・・あぁっ?!!)い、一瞬にして―――私の背後に?!!
(ま、まずい・・・)っっ――――く!(バッ―――バババッ)
謎:ほぉ―――・・・あんた、その手指の動き・・・『印形』まで心得があるとはねェ―――ヒューマンにしては中々にやる・・・
だぁが――――・・・・(ス―――・・・グッ!!)
ジ:あぁ―――ッ!
(な、なんてこと・・・私の“切り札”である『印形』の、≪広目天印≫が、こうもたやすく破られるなんて・・・
ん―――? ぁあ・・・・!!あれは―――! ≪降魔杵印≫・・・私が今結んだ印よりも、上位なるものをもって・・・
だ、だとしたら、この人は何者―――??)
〔このとき、彼女―――ジィルガが駆使したもの・・・
ディザスターボルト―――光の弾を9個投げつける術、当たると付与していた雷属性が発動する。
(ちなみに、唱えていたものが『シンゴン』にあたり、これでも、人間界では高等魔術とされている。)
広目天印―――『印形』のひとつ、“広目天”の力を借り、須らく魔を折伏する。
(ちなみに、『広目天』とは、この世に介する数多の神の一人であり、中妖程度なら難なく討ち鎮められる、だが・・・・?)
しかし、彼女が駆使したものは、一体いかなるわけなのか、相手に届く前に避わされたり、
その片手で握りつぶしたあと、そのままの形で地面に添えるように置かれていたのです。
そう――――つまり、ジイルガの駆使した魔術は、謎の人物に全く通用しなかったのです。〕