≪七節;捲土重來≫
〔しかし―――それから二・三日余り時間が経ち―――・・・〕
民:た、大変だぁぁ〜〜―――! また、あいつ等が・・・襲ってきたぁ〜―――!
兵:ご注進にござる――― また、黒き怪異なる軍団が、押し寄せた模様です!
ド:(ドウサン=大納言=セイトー;この国、ラー・ジャの国王)
何っ―――して、数は・・・
兵:二万五千――――いや、三万かと!!
ド:むむぅ〜〜―――大挙して押し寄せて来よったな・・・マサトラ!!
マ:(マサトラ=兵部=シノーラ;タケルの実父であり、ラー・ジャの軍師兼大老。)
ははっ―――
ド:貴下の部下、老中と巫女を率いて、これの迎撃に当たれ―――!
マ:ははっ―――かしこまって。
〔当国、ラー・ジャ国王―――ドウサンより、迎撃の任を与えられた、軍師兼大老のマサトラは、
すぐさま自分の邸宅にとって帰り、実子のタケルと、ジィルガを従え、戦場(いくさば)へ赴いたのでした。
そして―――自軍陣営にて、作戦会議が・・・〕
マ:これ―――状況はどのようになっておる・・・。
兵:はっ―――、数ではこちら側が、やや勝っているようですが・・・いかんせん向こうの方が、精兵揃いのようでして・・・
マ:(むぅ・・・)そうか、分かった――――
(何たる事だ・・・我が軍も、練度にかけては劣ってはいないはずなのだが・・・それを――――)
タ:父上―――、ならば、ボクが蹴散らしてまいりましょう―――
マ:そうか・・・お前が出てくれるか――― ならば、頼むぞ・・・タケルよ。
タ:はいっ―――!
〔味方の兵士から洩れた事―――『向こうのほうが精兵揃いである』――――だ、ということは、
なにも、この者一人がそう感じていたことではなく、全軍の兵士が肌身に感じていたこと・・・。
それゆえに、徐々に士気が落ちていきつつあるのを、マサトラも、そしてタケルもひしと感じていたのです。
そこで―――タケルが自ら討って出・・・全体的に士気を上げようということのようです。〕
タ:ぅおおお――――! かかれぇ〜〜―――!かかれぇ〜〜―――!!
〔馬上より、勇猛果敢に号令を下すタケル・・・いつもは、あどけない少年ぽさを持ち合わせており、義姉のジィルガに、甘えている印象が強い彼も―――
やはり、軍師の嫡流であるがゆえか、戦場(いくさば)を、愛馬・擂墨(スルスミ)で駆けている時は、まるで別人のよう・・・・
敵陣中央を突破し、迂回して、手薄な左翼を強襲したその様子は、さながら戦神(いくさがみ)が光臨した様に似たり―――だったようです。
そして―――この奇襲により、敵が浮き足立ったところへ―――・・・〕
マ:(よし―――)今だ!全軍を押し出せ―――!!
〔混乱したところに、全軍をして押し込められたなら、これほど脆いものはない・・・・
それは、強壮の兵で知られる、カ・ルマでも例に漏れない事――――
そして、このままカ・ルマ潰走――――・・・・と、そう思われた時。〕
ク:ザルエラ様―――、もう、そろそろ頃合・・・か、と。
ザ:GUFFF・・・・そうか、待ちくたびれたぞ――――
では・・・これから、存分に血の雨を降らせてくれようぞ!! この『破壊者』を冠したる、我が斧―――“デストロイヤー”でなぁ!!
〔彼らは―――不敵なまでの自信があった・・・。
旗色は、徐々にラー・ジャ側に傾きつつある・・・と、言うのに、その自信は、一体どこから来るのでしょうか・・・・。
それは―――
かつて、七万年前――――
その凶暴さをして、全人民を、恐怖のどん底に陥れてきた事実――――
それは『生命の簒奪』であり・・・『暴虐極まりない事』であり・・・
とどのつまりは、今、形勢が押されている形でも、すぐにひっくり返せれる事の示唆でもあり――――
そして、今―――― その、暴虐なる者、自らが・・・自身の斧を握り締め――――
屍山血河を築くために、戦場へと躍り出たのです・・・。〕