≪九節;サヨナラは、別離の言葉―――≫
〔それは―――・・・
彼女が、義弟を愛するが故の行動であり――――
それは―――・・・
辛くも、また哀しむべき事であり――――
それは―――・・・
どうすることも出来ない――――――〕
それは――――
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ザ:くわぁ〜――――ッカッカッカ! 覚悟せい!小童ァ――――!!!
タ:くう――――っ!!(こ、これまで―――・・・)
ヒュン―――・・・
ザ:うりゃぁあ〜―――!!
ド・ガ・ッ・・・・
ジ:うぐ・・・・ッ――――!!
タ:(え―――?)ね、姉ちゃ――――・・・?!
〔それは―――・・・眼を疑う光景でした・・・。
かの魔将との一騎討ちにて、落馬してしまったタケルに・・・容赦なく襲い掛かる魔の斧――――
一時(いっとき)は、彼も観念したのですが―――・・・
そんなタケルの目の前に、突如として現れたのは、日頃敬愛してやまない義姉のジィルガが――――・・・
その彼女が、今、自分の目の前で、朱に塗れていく姿を・・・どうして正視できたでしょうか――――
ただ・・・幸いなことに、彼らに二の撃は加わることはなかったのです。〕
なぜならば―――
ザ・ザァァ――――――!
ザ:(むん・・・)フフ―――どうやら引き上げ時のようだなァ・・・・。
(ククク―――・・・)貴様らが生きていたなら、また会う時もあるだろう―――
その時まで・・・せいぜい己の非力さを呪うことだな! は〜〜――――っはっははは!!
〔それは、突然の降雨――――・・・これは、この『女禍の魂』を有していた(で、あろう)ジィルガの身に、残されていた最後の天佑だったのか・・・
それとも、ザルエラの単なる気まぐれだったのか――――・・・
どちらにせよ、タケルたちには、二の撃が加わることがなかったにしろ、お護りしなければならない存在に、護られてしまったのは、
その者にとって痛恨であり・・・その失意は計り知れないところがあったのです。〕
ジ:―――――・・・ぅっ。
タ:(はっ―――!!)ま・・・まだ、生きてる??
ね、姉ちゃん――――・・・衛生兵―――――衛生兵―――――!!
〔しかし―――魔将に、腹を割られた者は・・・失われつつある、総ての力を振り絞り、意識を取り戻したのです。
なぜならば・・・これから遺されてゆく、愛すべき義弟に、総ての事を告白する――― ただ、それだけのために・・・・。〕
タ:姉ちゃん――― 今、衛生兵を呼んだからね――― 助ける・・・きっと助けてあげるよ―――!!?
ジ:タケル―――も・・・もう、いいの―――・・・もう、わ―――うっ!! 私・・・・助からない―――から・・・
タ:な―――なに言ってるんだよ・・・しっかりしてよ!!
ジ:そ、それより・・・私・・・あ、あなたに・・・あ、謝らなければ――――いけないことが・・・
タ:(え??)ね・・・姉ちゃん??!
ジ:私――――違うの・・・・
タ:違うって――――なにが??!
ジ:私は――――違う・・・そのことは・・・・・私自身が・・・・一番感じてて――――(ゴフッ!)
タ:ああっ――――ダメだよ・・・喋っちゃあ―――血が・・・血が・・・!!
ジ:でも・・・こ、このことが・・・分かってしまうと・・・・ぃ、今・・・まで・・・信じてくれていた皆に―――申し・・・訳が・・・立たなくて・・・
ううん・・・本当は・・・タケル―――ちゃん・・・あなたに・・・嫌われる・・・こと―――が・・・
あなたと―――離れ・・・離れ・・・に、なることが・・・怖かった――――から・・・
タ:ね・・・姉ちゃん??一体何を言って――― それに、どうしてボクが姉ちゃんの事を嫌わなくっちゃ・・・・
ジ:ゴメン―――ゴメン―――ね・・・(つぅぅ〜〜―――)ワタシ・・・ノ・・・・・・・タ・・・・ケ・・・・・・・・ル――――――
タ:ね、姉ちゃん??姉ちゃん!! う・・・ウソだろ―――姉ちゃん――――!!姉ちゃん―――――!!!
〔しかし―――それ以上、彼女の名を呼んでも、決して返事は返されることはなかったのです。
そう―――このときを以(もっ)て、当時『女禍の魂』を持っていた(と、される)者は、死去してしまったのです。〕