思わずも進められていく話しに、どこか戸惑いを感じている様子のリリア・・・
それは確かに―――宇宙の壮大さは、直接目にして知ってはいましたが、依然として経験もないままにだったので、どんなモノなのか計り知れなかったのです。
とは云え、ガラティア達も、そんな未経験者達を、右も左も判らないような処に放置しておける程、厳しくはなかったので、取り敢えずは・・・
リ:―――え? ジョカリーヌさんの?
ガ:そだよ〜。
ま・・・取り敢えずは、この子に付いて「研修」―――てな具合になるかねぇ。
それにあんた達も、どんな奴が待ち構えているか、知れない処に孤立するのも心細い―――てなことになるだろう。
ジョ:姉さん・・・そんなに脅さなくても―――
けれど、まあ・・・確かに、悪事も千差万別してあれば、期待が持てる可能性を秘めている者達も、千差万別としてある・・・。
何もそんなに、不安がることなんてないんだよ。
それに、今回は私に付いてくると云う事で、他の宙域から来る連中が、どう云った考え方を持っているか、知って貰えるいい機会でもあるんだ。
リ:ええ〜っと・・・もうなに云ってるか、判んないんですけど―――
ジィ:まあ〜要するにね、ジョカリーヌちゃんに付いて行けば、なんも問題ナッシングぅ〜!―――てな訳なのよ。
色々な可能性―――「善」もあれば「悪」もある・・・
けれど、「死せる賢者」は思うのです。
「宇宙の創成期には、そんなモノはなかった」―――と・・・
しかし現実として、「宇宙倫理規定」に照らし合わせれば、明確な「善」「悪」の線引きが引かれてしまった今日では、
その「規定」を創った者達の意向にそぐわなければ、総て「悪」とみなされてしまうのです。
そのことを、「死せる賢者」は・・・
「昔に比べれば、世間は狭くなってしまったモノだ・・・」と、嘆くのですが―――
それはまた、別の話し・・・
それはそうと、今回の計画に伴い、ジョカリーヌの「配下」として付いて行く人選は・・・と、云うと―――
ジョ:それでは―――今回、私に付いて来て貰う人達の事だけれど・・・
先ずは、リリア―――それからイリス、そして蓮也に市子だ。
そしてもう一人・・・デイドリヒ―――
次々と読み上げられていく名前には、これまでリリアが培ってきた友誼を素にした構成ではありましたが・・・
只一人、それほど親交は深くなかったモノの、その名前に聞き覚えのあった者は―――・・・
た:「でいどりひ」・・・とな? はて―――どこぞかで聞いた覚えのある様な・・・
「その名を、最近聞いた事がある・・・」そのたまもの記憶は、間違いではありませんでした。
それに、実はリリアも―――・・・
しかも、彼らの邂逅の記憶は、すぐに現実と云う象になって露わとなってきたのです。
そう・・・デイドリヒ本人が、リリア達の前に現れた時―――
デ:お呼びにより、参上いたしました・・・。
リ:ああっ―――? お前は・・・?!
し:ボク達の・・・行く手を阻んだ―――
た:(やはり・・・)どう云う事か―――説明して頂けますかのう?
デ:その必要はない―――
私は、主命が下ったからこそ、それに従い行動するまで・・・。
なによりも、「お遊び」気分でいるお前達とは、その心構えからして違うのだ。
リ:にゃにお〜う?!
このヤロウ―――いい度胸してるじゃないか! あんときの決着・・・今ここで付けてやろうか!!
デ:フッ・・・私ならば、一向に構わんが―――?
リ:おお! 上等だ―――抜けや!ゴルぁ゛!!
ジョ:二人とも、止めなさい・・・それより姉さん―――
ジィ:あらあら、二人とも・・・困った子達ねぇ。
まあ―――初対面は、遺恨の残る象になっちゃったけど、あの場で偶然にかち遇っちゃったことだしねえ〜。
だ・か・ら・・・この私の顔に免じて、ここは矛先を収めて貰えない?
デ:・・・主上が、そう仰られるのなら―――
リ:・・・ケッ! 命拾いしたな―――!
なんとも・・・血の気の多いリリアの発言により、周囲りの雰囲気は一気に昂まり、一同は冷や冷やとしたモノでしたが・・・
所詮は、内輪での揉め事なので、ここはデイドリヒの主であるジィルガが、旨く取り纏めたのです。
しかし・・・どうしてこんな人選を―――
ですがそれは、デイドリヒ本人からの強い要望あってのことだったのです。
しかも、彼は・・・今回の件に関して、「リリア達が参加するから」・・・と、云う様な事ではなく、寧ろ―――
今回関わってくる者達・・・所謂、交渉に関してくる者達―――つまりは、「私的」にではなく、「公的」に・・・
だとすると、「エグゼビア大陸」で「邂逅」してしまったのは、全くの「偶然」だったのです。
それに、二人の姉達からしても、水が合わない者達同志を、どう纏めるか―――妹の手腕を見極める上でも、絶好の判断材料にする思惑もあったようです。
ともあれ・・・「舞台」を「空中庭園最上階」に移し、早速、「トロイア国」を治めるイリスも呼び寄せ、これからの段取りを話し合う事となり―――
イ:―――リリアお姉サマ〜!
リ:お・・・おお・・・げ、元気にしてたか?
イ:―――はいっ!
それに今回は、お姉サマと一緒にいられる時間が、多く取れるとのことで、私は感激しておりますっ!!
リ:(は・・・ハハ―――久々にやられると、強烈と云うか・・・なんと云うか・・・)
な・・・なぁ〜〜イリス―――もうそろそろ・・・いいだろ?
イ:えっ? あっ・・・はい―――
デ:フッ・・・いい気なモノだ―――
リ:ん゛〜だとぅ―――?!
市:リリアさん・・・
イ:―――誰なんですか?あの人・・・
蓮:拙者達の、「仲間」ということらしい・・・
リ:だけどな、あいつからその「輪」を崩そうとしてやがんだ・・・。
「こんな時に、玉藻前様がいてくれたなら―――・・・」と、市子は心の中でそう思うのですが、
今回の人選には加えられていなかったので、無いモノねだりではあったようです。
それに、些細なことですぐに衝突をしてしまう二人―――
こんな者達を引率する、ジョカリーヌの胸中たるや、いかばかりのモノがあったか・・・余人には知るべくもなかったのです。
ともあれ今は、「中継施設」である「宇宙港」がある、「月の裏側」に移動し・・・
第百七話;月の裏側
リ:つっ―――・・・月の裏側に・・・
イ:こんな施設が出来上がっているなんて・・・
蓮:それにこれは・・・「鉄」―――なのでござろうか・・・?
市:「尋常」・・・では、ありませんね―――
何もかもが目新しい―――
見慣れない超金属を加工し、それを一つの「施設」に仕立て上げ、今までにも見た事もない「装置」が、稼働をしている・・・
それこそが「未来」―――
今まで、自分達が修めてきた「知識」も、強ち間違いではないけれど・・・
自分達が住んでいる「地球」から、凡そ三十数万km離れた場所に、こんなにも未知の・・・近未来の技術が、確立していようとは―――
そんな事は、リリア達にしてみれば、到底信じられない出来事でもあったのです。
それに、ジョカリーヌに随行していると、実に様々な事が判ってきたのでした。
その一つに、この「施設」の総責任者―――・・・
責:あら・・・もう上がって来られたんですか?
連絡を頂ければ、迎えに行かせましたのに―――
ジ:やあ、ゼシカ―――どうやら、見た処・・・作業は順調のようだね。
リ:え〜〜と・・・誰??
ジ:ああ―――彼女は、この「施設」の設計と管理、補修を一手に請け負っている・・・
そう云えば・・・君が「パライソ」に来ていた頃から上がっていたから・・・これが初対面になるね。
ゼ:ゼシカ=ノーム=ヴェスティアリです―――初めまして!
ゼシカ=ノーム=ヴェスティアリ―――彼女こそは、宙外から持ち込まれた技術を、
より発展させ・・・より高性能化・・・よりデザイン性に特化したモノに仕上げる事が出来る―――「ハード・デバイスの申し子」でした。
それに、「外見」だけは立派でも、「中味」が伴わなければ、意味をなさない・・・
実は、この二・三日前までは、「ソフト・デバイスの申し子」と呼ばれていた人物・・・
リ:え? ルリさんも一昨日までここに? でもあの人―――「西の評議員」だぜ??
ゼ:そう云われても・・・でも、近い内に、ここを使うと云う事でしたから、
それまでに―――30万光年先の、惑星言語群の、翻訳ソフトのインストールとアップデートを・・・
リ:・・・ナニ云ってんのか判んないよ―――も少し、判り易くさぁ〜
デ:基本的な予備知識さえないままに―――とは・・・聞いて呆れる。
リ:―――悪かったな、お莫迦さんでよぅ。
デ:まあいい、一つだけ参考にしておくといい。
オクタヴィアヌス=ガーランド様が為された事とは、お前達やこの私ですらも、知らずの内に恩恵を給わっている事なのだ。
イ:私達―――や、あなたでも・・・?
彼女達は―――知らない・・・また、知る由もない・・・
嘗ての地球は、様々な言語が錯綜し合い、まともな意見同士の疎通が、満足に出来なかった処だと云う事を・・・
「言語」の・・・「文化」の・・・疎通不備は、様々な処で弊害を齎し、やがては「争い」にまで発展していく―――
それは、哀しむべき行程―――・・・
「戦争」の・・・血で彩られた歴史でもあったのです。
その事を憂慮したジョカリーヌは、そんな弊害となっている原因の一つを緩和する為、少なくとも地球上での交流を、潤滑にさせるようなシステムを導入―――
それが、現在から100万年もの過去の出来事でもあったのです。
そうした苦労があったからか、既成の―――地球にあった言語は一つに纏められ、
少なくとも・・・それからというモノは、喩え初見であったとしても、言語での疎通の不備はなくなっていたのです。
しかし―――これからは、地球上の交流だけには留まらない・・・。
各外宇宙が相手となる・・・
けれど、そのこと自体が大変だと云う事は、正直、未だリリアには、自覚のなかったことだったのです。
=続く=