殺された仲間の為―――・・・又、幕府転覆の大陰謀を暴く為、リリア達一行は、穢戸より離れた「洛中」の街に来ていました。

 

それにしても・・・リリアは、この街を訪れたのは、これで二度目になるのですが・・・。

以前来た時と比べてみても、何一つ変わり映えのしない・・・

規模としては、自分が住んでいる街―――ノーブリックにも匹敵するのだろうに・・・生気が―――活気が感じられない・・・「街」。

 

「物」や「人」が、機械的に動き、表情一つ浮かべないその有り様に、リリアは、ここが本当に、人間達が住んでいる街なのかと疑ってしまうのです。

 

しかし、この街が、こうなってしまった原因を、過去に住んだ事のある、二人の人物から証言されるに至り・・・

 

 

 

市:ここは―――歴史の上でも、常磐の都でもあったのです。

  しかし、今では帝の権威も地に堕ち、やがて権力は、幕府のある穢戸に・・・

  だから、穢戸の街があんなにも栄え、この街は、こんなにも(さび)れてしまったのです。

 

た:それにのう―――ここは、場所的にも霊力が集中し易い処でもある。

  それは・・・人間は(もと)より、わしのような(あやかし)も好むモノなのじゃ。

  だから、争いが絶えなんだ・・・いつかは、強力な霊力を我がモノにせん―――と、そうした「慾」ばかりが、清濁を合わせて集まり、

  (かつ)て「華の都」とまで(たた)えられたこの街が、今ではこんなにも荒れ果ててしもうたのじゃ。

 

ミ:つまり―――あなたは、嘗てはこの街が、どんな処であったかを知っていらっしゃるのですね・・・。

  その気持ちはよく判ります・・・。

  本来の姿を知っているだけに、醜く(けが)された姿を見せられては、最早後に残るのは・・・憎悪の情念のみ―――ですからね。

 

 

 

最上業物(さいじょうのもの)欲しさに、(むらがり)くる数多(あ ま た)の存在―――

その(なか)で、殺し合い・奪い合いが繰り返され、現在では、見るも無惨な姿になってしまった・・・と、嘗ての華やかさを知っていた者達は語りました。

 

「総てを欲し、やがては天地(あめつち)(ことわり)をも手に入れたいとする(さが)は、栄達を極めた者の、病的なまでの「業」と云うモノだ。」

 

現在の自分を、斯くあるべきまで導いてくれた恩人の(ことば)を、今更ながらに噛み締めるリリア・・・

 

「本当に恐ろしいのは、妖魔の類ではなく、私達人間なのかもしれない・・・」

 

そして次第に、現在の洛中を(かんが)みるにつけ、そう思うようにもなってくるのでした。

 

 

けれどその前に、やってしまわなければならない事がある―――・・・

現在、この洛中の、最上業物(さいじょうのもの)独占(ひとりじめ)にし、世を、未曽有の混乱に貶めようとしている人物・・・「道鏡」―――

この人物を退治してしまわねば、世の秩序が回復する見込みはないモノとし、

一行は、拠点の一つであると目されている、「伏見城」がよく見える地点に宿を取り、

そこから、どう攻めて行くべきかの話し合いが為されたのです。

 

 

 

リ:ここはさぁ―――・・・やっぱ正面から、「ガツン☆」と、行くべきだよなぁ。

た:それでは、あの城を任されておる者に辿り着く前に、へとへとになってしまうぞぃ・・・よく考えんか。

市:確かに・・・彼の者―――「道鏡」の活動の拠点となるべき処ですからね・・・生半可な備えではないと思います。

 

 

 

武芸の「腕」に覚えありき―――の、リリアは、正面からの攻略を進めてみるのですが、

「敵も然る者」―――と、軽く一蹴され、早くもその案は見直しとなってしまったのです。

 

それに、相手は「城」と云う要塞に立て篭もっているわけであり、容易に決着を見通せる案が、中々出て来なかった―――・・・の、でしたが、

何かの意を決したのか、車椅子の美少女が・・・

 

 

 

第百四十七話;第三の眸(サ ー ド ・ ア イ)

 

 

 

ミ:―――仕方ありませんね・・・ここは一つ、この私が、何とかしてみましょう・・・。

メ:(!?)・・・ミリア様? まさか―――・・・

た:(・・・。)そなたに、どうにかできる数ではありませんぞ・・・。

 

ミ:フッ・・・雑魚など、この際モノの数ではございません。

  ですから、この私が、雑魚共の足止めをしている間に、この城にいるはずの「テュポーン」を・・・

  そうすれば、統率(あ た ま)を失った雑魚共(て あ し)は、(おの)ずと霧散することになりましょう・・・。

 

 

 

下肢が不自由で、車椅子にて移動をしなければならない―――そんな痛ましい少女・・・

その少女が、有象無象にいる、伏見城を守護する為に駐在する雑魚の妖魔達を、たった一人で「どうにかする」と云うのです。

 

そのことに、リリアを含める他の者達は、甚だ疑問に思ったのですが・・・ただ一人、心当たりがあるモノと見えるメイドは、驚きの声を揚げるのでした。

 

そう・・・メイベルは、知っているのです。

主・ミリヤが、そうすることができる能力を持っていると云う事を―――・・・

しかもその能力は、「月詠(つくよみ)」と云う能力の、真に畏るべき姿であると云う事を。

 

 

 

メ:ですがミリア様・・・アレは危険すぎます!

  ただでさえ膨大な能力を消費する、アレは―――!!

 

ミ:心配をしてくれると云うの・・・メイ―――可愛い()・・・。

  けれど、そうすることで、あなたも「ヤツ」と心置きなく闘える・・・

  忘れたわけではないのでしょう、ここへと来た、本来の目的を―――・・・

 

  それにね、フフフ・・・この私が、誰かの為に何かをしてやろう―――なんて、本当に久方ぶりなのですもの・・・。

 

  だから、あなたは、この私の喜びそうな成果を、指示(さししめ)して頂戴。

 

 

 

彼女達、主従間の会話は、中々その本質とする処が見えてはきませんでしたが、概ねの事は推察が出来ました。

それによると、これからミリヤがしようとしている事は、強力ながらも、大変なリスクも伴ってくる事らしく、

その事について、メイベルは苦言を呈していたようなのです。

 

そうした心配をしてくれる、自分のメイドに、ミリアは「可愛い」と云いました。

本当は・・・自分の命を狙う、「暗殺者」で、あったのに・・・いつしか、こんなにも自分の事を、親身になって心配をしてくれる―――その事に。

 

けれども、ミリヤの決意は、(かたく)なでもあったのです。

その事が、一番よく現されているのが―――「この私が、誰かの為に何かをしてやろう」・・・

つまり、有償を求めず、無償のそれ(ボ   ラ   ン   テ   ィ   ア)が、実にミリアの(なか)に、久方ぶりに湧いてきた・・・

そして、そんなミリヤの視線の先には、たまもとリリアの姿が―――・・・

 

ミリヤ自身、数々の陰謀に揉まれ、一時(いっとき)は「人間不信」にすら、陥った経緯(コ ト)がありました。

・・・が―――今回、そうした事(ボ ラ ン テ ィ ア)をしてみよう・・・と、云う気になったのも、今ここに(つど)う者達が、本当に気持ちの好い連中だったから・・・

 

 

かくして、伏見城・大手門前に、戦士達は揃い・・・

 

 

 

リ:さあ―――て、精々(せいぜい)派手に、暴れてやろうぜいっ!

蓮:望む処にござる!

市:蓮也殿、リリアさん・・・余り無茶をしないように・・・

 

秋:しのぉ・・・お前の仇、必ず取ってやるからなぁ・・・!

た:秋定(ときさだ)、怨恨を鎮めい! ・・・で、ないと、あ奴らに取り込まれてしまうぞ!

 

メ:ミリヤ様・・・それでは、成果の報―――ご期待下さいませ。

 

ミ:愉しみにしているわ・・・メイ。

  それでは―――突撃を前に、一つご忠告を・・・

  皆さん、私はこれから、私に備わっている、或る能力の解放を試みます。

  が―――・・・その後、決して私の方を見ないようにして下さい・・・。

  そうでないと、これからここに残る、私とたまもさん目掛け、襲い来るであろう者達と、同じ運命となってしまうでしょうから・・・。

 

 

 

実に思わせぶりな言葉で、発破(は っ ぱ)をかけ、先陣を切る者達を送り出した、たまもにミリヤ・・・

 

そして、大方の予想通り―――

正面を固める、この城を護る者達に対し、正面突破を図るリリア達・・・

すると当然、リリア達を阻むかのように、雑魚達が押し寄せてくるわけなのですが・・・

 

それとほぼ同時に―――背後から・・・刺すような、何かが・・・

しかも、その正体とは、やはり―――・・・

 

 

 

ミ:たまもさん・・・先程は申しませんでしたが、実は―――あなたも、数の内に入っているのですよ・・・

  ですから・・・決して―――私の方を、見てはなりませんよ・・・

 

 

 

そう云うと・・・美少女の額が縦に割れ―――そこからは・・・なんと・・・もう一つの「眸」らしきモノが・・・?

 

そう―――ミリヤこそは、「第三の眸(サ ー ド ・ ア イ)」を持つ種族にして、「月詠(つくよみ)」と云う、稀に見る強力な感応を持って、この世に出てきた「突然変異体(ミ  ュ  ー  タ  ン  ト)」・・・

それ故に、妬まれ・忌み嫌われ・・・遙かな過去に、ある「人為的災害」を引き起こした事のある、張本人でもあったのです。

 

そしてミリヤは裁かれ、大惨事を引き起こしたとしても、当時の状況から鑑みて、情状酌量が与えられた・・・

その結果として、行き着いた先が、現在、彼女達が住まう「クーレ」と云う惑星・・・

 

このままひっそりと暮らし・・・大過を招いた「能力」を、封印すると云う条件付きで、その生命だけは、永らえる事を赦されたのですが・・・

 

かの「人為的災害」を調査していくにつれ、「ある人物」の目に留まったとしたら・・・?

 

それは「偶然」ではなく、「必然」―――

 

ミリヤ自身、「天使の翼をもつ悪魔」と評した「その人物」は、永き(とき)を経て、ミリヤの「身許保障人」となる権利を獲得。

遙かなる過去に引き起こされた、「人為的災害」の記憶が、人々の内から薄らごうとしていた時、

マエストロ・デルフィーネは、強力な能力を、易々と手に入れてしまっていたのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと