今までの、総ての「問題」に関し、傍観をしていた「謎の少年」ポールが、自らの意思で介入しようとしている・・・

これは、「宇宙」にとっては、「問題中の“大”問題」でもあったのです。

 

その事を(あらかじ)め知っていた為、ユリアは、その問題性について、危機感を抱いていたのです。

なぜならば―――・・・

 

 

 

ユ:あなた・・・ご自分の仰っている事が―――

ポ:「判って」いるよ。

  この僕自身が「動く」ことが、どんな大変な事かくらい・・・

 

ユ:―――でしたら、なぜ・・・

ポ:フッ・・・「なぜ」―――か・・・本当に、「なぜ」なんだろうね・・・。

  まあ、一つ云えるとしたら、とても気になっている()が、今ちょっと困っているからねぇ。

  ほんの少しだけ、手助け程度に考えている事は、間違いないかな。

 

ユ:そんな・・・! そんな軽々しい「動機」で、あなたと云う人は―――!

 

 

 

第百六十五話;中庸(moderation)

 

 

 

性格の温厚なユリアにしては、今回、この謎の少年が取ろうとしている「行動」に対し、珍しく激しい意見を述べていました。

 

しかしそれは―――宇宙に措いての、この「謎の人物」の立ち位置・・・

 

『総ての事象に関し、「善」「悪」の区別なく、偏らない事』

 

つまり、「中庸」でなければ、ならない事を述べたのです。

 

 

ではどうして、そんな事をしなければならないのか・・・

その事は、ある意味では、この「地球」を管理しているジョカリーヌや、太陽系全域を管轄しているジィルガ―――

そして、第七銀河系を担当しているガラティアにも云えた事なのです。

 

つまり、周囲の者達より、抜きん出た実力を持つ者が、対立している・・・或いは、しようとしている一方の勢力に対して、介入をしてはならない・・・

そうしなければ、力の均衡(パワー・バランス)が崩れ、やがては崩壊の一途を辿る事になる・・・

嘗ての、この地球がそうなりかけたように―――・・・

 

だから、その事を知っていたユリアは、この人物が、自分の意思で動くことを危ぶんだのです。

 

それと云うのも・・・この人物については、自分の主であるガラティアでさえも、意見を差し控えている嫌いもあるくらいなのですから。

 

なのに―――ガラティアの部下であるユリアが,そんな人物に対して、意見を直接述べ様と云う様な事は、本当は恐れ多い事なのですが・・・

 

今、「謎の少年」ポールは・・・自分の「好き」「嫌い」の感情のみで、偏ろうとしている・・・

その結果として、この宇宙の未来が、左右されてしまうという危機感に対し、ユリアも・・・またポール自身も、一定の理解を示していたのです。

 

だからこその―――「なぜ」・・・

 

なぜ・・・どうして・・・この人物は、その事を判っておきながら、そうしようとしているのか。

疑問は多々残るのですが、ユリアが出来たのは、そこまでだったのです。

 

一度決定された事は、覆らない・・・

()してや、その「謎の人物」が、「総ての頂点に立ち得る主」ならば、尚のこと・・・

だからユリアは、その人物が歩み出している歩を、止める事が出来なかったのです。

 

 

それはそうと、「大江山」の方では―――

ようやく、ウイルス・ソフトを構築し終えたジゼルが、大江山のシステム管理をしている、マザー・コンピュータにハッキングをし、

ウイルス・ソフトをアップ・ロードしようとしていた処だったのです。

 

それに、この様子は、大江山の防犯システムにより感知される処となり、「ディーヴァ」達の行動を阻止するべく、

茨木童子や前鬼・後鬼・・・そして更には、新たな鬼達を加えた勢で、迎撃・駆逐に当たろうとしていたのです。

 

しかし―――こちらは、戦力となれるのは、「ドゥルガー」と「カーリー」のみ・・・

このままでは、圧倒的不利―――に、なるかと思っていた、その時・・・

 

 

 

市:助太刀に参りました! 御覚悟なさいませ―――!

蓮:相手にとって、不足はなし!

秋:へっ―――纏めて片してやるぜ!!

し:(せん)ちゃん―――あんまり無茶しちゃだめだよ・・・

た:ふっ―――これで、ようやく役者が揃ったようじゃの・・・

  さあ、観念するがよい!!

 

ミ:フフフフ・・・信じていましたよ、たまもさん。

  ですが―――・・・

 

 

 

満を持して―――と、云うべきか、「妖改方(あやかしあらためがた)」の面々に、市子や蓮也までも加わった助勢が現れたのです。

 

それを見て、期待を膨らませるミリヤ・・・だったのですが―――

 

実は、そこには、戦力にはならないと見られていた、「ある人物」もいた為、ミリヤの口から厳しい意見が飛び交ってしまったのです。

その「ある人物」とは―――・・・

 

 

 

ミ:リリアさん―――なぜ、あなたまでついてきたのですか。

  今のあなたでは、私達の足手まといに、なりかねないと云うのに。

 

  それとも・・・失った記憶を、取り戻せたとでも?

 

リ:ああ・・・ううぅ・・・

 

マ:あの〜〜ミリヤ様・・・そのお言葉、ちょっときついですって。

ミ:あなたは黙ってらっしぇい!

 

マ:あいぃぃ・・・

 

た:まあまあ、ミリヤ殿―――ここは一つ、わしの顔を、立ててはくれませんか。

  それに・・・何かの拍子で―――と、云う事も、あるかもしれませんでな・・・

ミ:(・・・。)たまもさんがそう云うのであれば、仕方がありません―――不問に附しましょう・・・。

 

 

 

未だに記憶の戻らないリリアを見て、ミリヤは厳しいまでの判断を下しました。

そんなミリヤの、強い態度に、すっかりリリアは委縮してしまっていたのです。

 

そんな・・・嘗ては、命と命の駆け引きまでした事のある、好敵手の現在の姿に、市子は・・・かなり重症であると、改めて感じるのでしたが―――

相手が相手であるだけに、自分の事だけで、精一杯だったのです。

 

それよりも・・・そうしている間に、リリアやミリヤ達の側に、助勢として現れたのが―――

 

 

 

リ:あっ・・・ユリアさん―――!

 

ユ:わたくしも、及ばずながら力添えを致しましょう・・・。

 

ミ:あなたは・・・まだいらしていたというのですか。

  それに、私の「(つく)(よみ)」にかからなかったと云う事は、感知圏内にいなかった―――と、見るべきなのでしょうね。

 

 

 

ミリヤが率いる「ディーヴァ」にしてみれば、未だ謎多き行動を取り続ける存在―――ユリア・・・

そして、この人物も、「大江山の鬼退治」のキャンペーン参加に、乗り出してきたのです。

 

それに・・・そこでミリヤが申し立てたように、今回の敵・味方に関わらず、ミリヤは、その動静を知る事が出来ていました・・・。

 

けれども、このユリアと、あともう一人・・・この二名だけは、「どこにいて」「なにをしていたか」が、判明していなかったのです。

 

そして、今になって、疑惑の二名の一人である、ユリアだけが現れてきた・・・

だから―――当面、ミリヤが注意を払うべきは、シュトゥエルニダルフの動向と、ユリアの動向に・・・だったのです。

 

それに、ミリヤからの質問に、返事をしないユリアを見て、ミリヤは―――・・・

 

 

 

ミ:メイ・・・少し厳しいかもしれないけど、ユリアの動きにも注意を払って―――

メ:―――御意・・・

 

 

 

こちらの質問に対しても、応じようとはしないユリアの態度を見て、ミリヤは、

「味方なのかもしれないけれど、要注意人物」―――と、云う、少し複雑な状況判断を下し、ユリアの監視をメイベルに委託したのです。

 

 

そして―――・・・それぞれの戦闘準備が終わり、決戦の火蓋が切って落とされようとしていた頃・・・

こちらの人物も、ある所定の位置についていたのでした。

 

その人物こそ・・・

 

 

 

フ:(どうやら・・・彼女達も動き出したようね。

  それに対応し、こちら側も迎撃部隊を出撃させた・・・

  後は―――私が雇った者が、指示通り、中央管制室内に、爆弾を仕掛けられたかどうか・・・なのだけれど。)

 

 

 

ユリアからの依頼を受け、標的(ターゲット)抹殺(デ リ ー ト)の為に、「超一流のプロ」である「ピース・メイカー」・・・フランソワが、その場に来ていたのでした。

 

そして、フランソワ自身、大江山のセキュリティ・システムを破壊する工作を、大江山に勤める下っ端を籠絡させて、金で雇って解決しようとし、

間もなく「その時」が訪れるのを、待ってはいたのですが・・・

 

ですが、それは―――ある一人の人物の、予測のつかない行動によって、

フランソワの「破壊工作」や、ジゼルの「ウィルス感染」等の行為が、徒労に終わってしまう事を、意味していたのでした。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと