良過ぎた理解―――普通ならば、自身を囮に使用されると云う事は、非常に腹立たしい事なのですが、

計画の一部を打ち明けた処、その全部までも聞かないうちに、超一流のプロフェッショナルは依頼を受けたのでした。

 

当初ユリアは―――この事に疑問があったモノでしたが、

ノーミの大統領が暗殺された・・・と、云う事実よりも(さき)に、「ピース・メイカー」が、他の誰かよりその手の依頼を受けていたのではないか・・・と云う噂が、

既に各方面に流されていた事を知ったのです。

 

けれど「それ」は・・・本来は、ユリア自身がするべき予定だった―――

なのに、なぜ・・・

 

心当たりがあるとするならば、ただ一つ―――

つまり、その噂のリークは、フランソワ自身からなされたモノであるとしか、考えられなかったのです。

 

その証拠として―――惑星・オンドゥにて、無銭飲食の軽犯罪で、現逮(げんたい)(現行犯逮捕の略)された人物を見て、マリアは・・・

 

 

 

第百八十八話;自首の真意

 

 

 

マ:(―――っっ!)・・・どうしたの―――

署:どーしたじゃありませんよ、こいつ・・・

  ふてぇことに、無銭飲食繰り返している奴がいるから、来てくれ・・・って云うんで行ってみたら―――

  素知らぬ顔を決め込みやがって、オレらが来たところで知らん顔してやがるんですぜ?

  それに・・・こっちも大人の対応で、「事情なりとでも聞きましょうか」―――と、聴取しようとしたら・・・

  あくまでだんまり決め込むもんだから、「それじゃ、署まで来て貰いましょうか」・・・って、背後に回った途端―――

 

マ:攻撃を受けた・・・と―――

  つまり、公務の執行妨害ね・・・

署:幸い、やられた奴は、奇蹟的に急所を免れたみたいですが・・・

  ねぇ・・・どうします、拘置所にでもぶち込んどきますか?

 

マ:いえ、いいわ・・・すぐにでも取り調べ―――

  いや、やはりここは、私が直接行いましょう。

 

 

 

「絶句」―――最早それしかありませんでした。

なにしろ、現在世間で騒がれている噂の人物が、なんと、自分が管轄する所の管区内で、なんとも信じられない様な軽い罪で連行されてきた・・・

 

ただ―――不幸中の幸いだったのは、フランソワを連行してきた署員が、この女性の真の正体を知らなかった・・・と、云う事でした。

 

けれど、自分はある経緯により、この女性の真の正体について知っていたがため、

署長であるマリア自身が、フランソワの取り調べを行う事にしたのです。

 

ですが・・・予想した通り―――

 

 

 

マ:全く・・・何を考えているのか―――

  こんな事をして、どう云うつもりだったんですか、それに、ここがどう云う処かも、あなたには判っていたはず―――

  なのに、どうして―――・・・

フ:―――・・・。

 

マ:(・・・。)

  飽くまで黙秘―――聞いていた以上に、手強いと云った処ね。

  ・・・少し、私の見解を述べてもいいかしら。

フ:―――・・・。

 

マ:返事は、なし・・・と、云う事は、いいのね―――

  恐らく、あなたは・・・今回何もしていない―――そして、ここへと来たのも、自分の身柄の安全を確保できる・・・と、そう判断したに過ぎない・・・。

  なによりここは、監獄の惑星であり、この私が目を光らせている内は、脱獄―――()してや、口封じの為の刺客も入らせはしない・・・

  そして、あなたから何の証言を得られないと云う事は、その事によって、あなたとあなたの依頼主に障害が生じてしまうから・・・違いますか、「ピース・メイカー」。

フ:―――・・・。

 

マ:フ・・・まあいいわ―――ヘレンには、ここにいる事は云わないでおきますから・・・

  それと、何か用があったら、直接私に云って下さいね。

 

 

 

「ピース・メイカー」は、口が堅い事でも有名・・・あの噂は本当なのだと、マリアは確信しました。

事実、マリアの勝手な推測を述べている時でも、フランソワは一言も返さなかった・・・

けれどマリアは、「暗殺」と云う事件の性格上、何かしらの陰謀が進行中なのではないか―――と、(さと)り、

しばらくはフランソワを、名を伏せた上でこの署に匿う事にしたのです。

 

 

処変わって―――現在、外宇宙で他の星間国家と交渉の折衝に当たっている、ユリアとイリスは・・・

 

 

 

イ:あの・・・昨夜はどこへと行かれていたのですか。

ユ:少し所用で・・・外へと散歩に出ていましたの。

 

イ:それは困ります!

  ユリアさん・・・あなたみたいな美しいご婦人が、深夜に外へと出歩かれると云う事は・・・

ユ:イリスさん、それは違います。

  わたくしは、こう見えて「弱い」ワケではありません。

 

  確かに、戦闘力としては、リリアさんやあなたに劣っていると云えますが、

  わたくし達がこれまでに会ってきた、外宇宙の人々―――彼らも同じように、戦闘力としては、そんなにはありません。

  ただ・・・各勢力の「経済力」と云う武器を以て、日夜「闘争」を繰り広げているのです。

 

イ:「闘争」を・・・!?

 

ユ:そう・・・「経済」と云うモノは、一つの「戦争」―――

  それも、血の流れない「戦争」なのです。

 

  そんな彼らと交渉すると云うのも、云わば違った意味での「戦闘力」を身につけないといけない・・・

  幸いにも、わたくしにはその能力が備わっています・・・。

  だからこそ、わたくしの盟友や盟主は、わたくしにその事を託してきたと思っているのです。

 

  ですから、イリスさん・・・あなたは、このわたくしの側にいて、わたくしの交渉術なりを修めてくれれば良いのです。

  そして、それがいつかは、あなたの掛け替えのない方の、支えとなる事が出来るでしょうから・・・。

 

 

 

イリスは、今回の対外宇宙との折衝で、ユリアと同行することを許されていました。

 

しかしそこで・・・イリスは、昨夜ユリアが、彼女自身の部屋にいない事に気が付き、宿泊施設の周辺を(くま)なく探していたのです。

それから小一時間経っても見つからなかったので、諦めて宿泊施設に戻り、ユリアの部屋を覗いてみた処・・・

いつの間にかユリアは、戻ってきていて就寝していたのです。

 

そこでイリスは、翌日に、ユリアが昨夜何をしていたのか―――と、訊くのですが・・・

ユリアからは本心は語られず、おまけには、どこか適当な言葉で誤魔化されてしまったのです。

 

 

それから数カ月が過ぎた頃・・・

オンドゥに収監されている、疑惑の人物が―――・・・

 

 

 

フ:・・・ねえ、少し話しがあるんだけど。

看:ああん? なんだ―――今までだんまり決め込みやがってたくせに・・・

 

フ:ここの署長さん―――呼んできてくれない?

 

 

 

(くだん)の事件のほとぼりが冷めた頃・・・今まで一言も発しなかったフランソワが、初めて口を利いたか―――と、思えば、

それは、オンドゥの署長であり、「獄長」てセもあるマリアを呼んで欲しい・・・と、云う事でした。

 

しかも、今回もその用件を述べたのみで、それ以外の事を話そうとはしなかったので、

取りつく島がないと感じた看守は、渋々マリアを呼ぶこととなったのですが・・・

 

 

 

マ:・・・何か?

フ:―――そろそろ出るわ・・・

 

 

 

そう云うなり、格子越しにマリアを捕え、生きた盾・・・つまり人質に取るフランソワ―――

しかもその際に、マリアが携帯していた銃を奪い、看守に見せるようにして檻の封を開けさせた・・・

 

「お前達の署長など、いつでも殺せる」―――との意思表示を出した上で、駆け引きを行う交渉力・・・

 

そして、まんまと署の外へと出たフランソワは、マリアの銃で署のサインを撃ち抜き、自分への追っ手の道を阻ませたのです。

 

次に彼女が向かったのは、宇宙港―――

都合よく、小型の定期便があったので、ハイ・ジャックし―――次の自分の目的地へと飛ばさせた・・・

 

それこそは、まさしくテロリストの手口であり、またそうした連中は、他人の都合など考えないのですが・・・

次にフランソワが降り立った場所こそは、それこそ彼女本来の標的があった・・・と、そう思うのに十分だったのです。

 

それを証拠に、ハイ・ジャックをした艦から、降り立つ前に―――・・・

 

 

 

フ:フフ・・・ご苦労だったわね―――

  なにしろ、無理を云って、こんな処に来て貰ったのだから・・・

 

 

 

そう云うとフランソワは、脱出用の小型カプセルを持ちいて、その惑星―――「ソウミ」に降り立ったのでした。

(尚、この惑星「ソウミ」には、ゲリラ上がりの「殺し屋」が潜んでいるのだとか・・・)

(・・・と、なると、フランソワの、今回の一連の不可解な行動にも、一定の理解が得られようと云うモノ・・・)

(しかしなぜ―――フランソワが、この惑星に潜む「殺し屋」を訪ねようとしたのか・・・)

(それは、あの事件の真犯人だと云う事を、確信していたからではないだろうか・・・)

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと