危険地帯に、単独で降下してきた存在―――
しかし、それまでの根回し・・・所謂、情報の操作「流布」によって、その存在が「定期航路便のハイ・ジャック未遂犯」である事を知らしめると、
その惑星に根を張る「業突く張り」共は、挙って「我先に」―――と、その「未遂犯=賞金首」を追ったモノでした。
そして、皆一様にして思い描いたのは、この騒動も一過性のモノ・・・
まだ更には、「暇つぶし」くらいにしか考えていないのでした。
しかし―――現実は、そう甘くはなかった・・・
それもそのはず、この「賞金首」は、ずぶの素人でもなければ、ヘマをやらかした間抜けでもない・・・
―――だとしたならば・・・
それは、小遣い稼ぎに・・・と、顔を出し、彼の者の標的に収まって、その命の華を散らして逝こうとする者達の、最期の思考だったのです。
そんな彼らのやられ様を、看過していなかった、この人物は―――・・・
暗:(・・・ここもやられている―――
それにしても、何て奴だ・・・奴は、ヘマをしたのでも、況してや素人でもない・・・。
自分自身を囮とすることで、狙ってくる連中を、確実に仕留めようとしている・・・それは、この私とて例外ではあるまい・・・。
ならば―――・・・)
・・・ここを、棄てる必要がある様だな―――
彼の者が仕掛けた罠によって、死に絶えて逝く者達の様を見て、
今回の獲物が、実は自分を含める「連中」を釣り出し、殲滅を加える―――と云った様な、云わば「プロ」の手並みである事に、『ジルドア』は気付き始めたのです。
そして、なんら迷うことなく、この惑星を離れる判断をするのでした。
確かに、この惑星の特性として、隠れ家にするには最適だったし、それを手放してしまうのは惜しいとさえ思ったのですが・・・
この状況判断を間違えば、自分は、明日の日の出を見られなくなる・・・
そう思い、足早にこの惑星を後にしたのです。
その・・・僅か数分後に、『ジルドア』の隠れ家に辿り着いたフランソワは―――・・・
フ:(フフ・・・私の描くシナリオ通りの動きをしてくれているわね。)
次はどこかしら・・・そう―――次は、ここ・・・「メイトーク」ね。
実は、フランソワは、最初から・・・『ジルドア』が主に活動の拠点としている「ソウミ」で、『ジルドア』を仕留めよう・・・などとは、思ってはいませんでした。
ではなぜ、フランソワは、こんな非効率的な事をするのか。
それは、フランソワ自身が、こうした暗殺を請け負う上で、矜持としている事にも顕れていたのです。
それが・・・『死を想え』―――
これから・・・死に逝く者達へ・・・
「死」とは・・・何なのかを、問いかけるかのような姿勢に、フランソワの標的となり逝く者達は、震えながら・・・藁の様に死んで逝くのです。
第百九十一話;謀略の死角
そんなフランソワに、今回、「七人の魔女」の一人と目されている『ジルドア』を抹殺してくれるよう、依頼をしたユリアは・・・
今回、交渉の手腕を見納めてくるように・・・と、ジョカリーヌから諭されて、随行をしているイリスと一緒に、ある宙域連合の交渉係と会っていた処なのでした。
交:なるほど・・・そちらの云い分は判りました。
それでは引き続き・・・積み荷の護衛に関しまして―――
ユ:ああ、その件でしたら、「不要」です。
交:ほう―――どうして・・・
護衛を付けなければ、荷の安全は保証しかねませんよ。
ユ:ええ・・・ですから、この護衛は、こちら側で負担を致しますので。
なぜか―――と、申しますと、この宙域近辺では、未だに「海賊が出る」・・・と、云う噂ですから・・・。
交:ほほほ―――美しい顔に似合わず、厳しい事を仰られる様だ。
だからこそ・・・
ユ:―――その「海賊」も・・・「本当の」海賊ならば、問題とはしないのです・・・。
交:(・・・)なんなんですかな―――その仰り様・・・
それではまるで、私どもが、海賊に「扮して」いるかのようだ・・・
ユ:あら・・・「違う」―――のですか。
私共が乗って来た定期航路便・・・アレを襲った艦の塗装が剥がれかけ、ほら―――あそこに見える、あなた方「連合」の艦と、程なく良く似た色遣いが見えたモノですから・・・
交:(!!)ふ・・・不愉快なっ! なんと云う言い草だ! ぜ―――前言の撤回を・・・
ユ:あらあら・・・随分な狼狽ぶりですわね。
ああ、それと―――・・・最初に云っておくのを失念しましたが、わたくしが所属しているのは「フロンティア」・・・ですので、
そこの処を、お間違えのなきよう・・・。
自分達との契約を提携し、流通を交わして行こうとする「団体」、または「組織」がある―――・・・
そんな「交易の品」を狙って襲う―――と云う、云わば「賊」を生業としている者達もいました。
だからこそ、交易の品を護る目的の護衛が付き、賊が出没しなくなる宙域まで護送する―――・・・
それは、至極当たり前で、そうするのが、本来「正しい」ことなのですが・・・
中には、そうした交易相手が「賊に扮し」、不当に利益を得ようとしている連中もいる・・・
そのことに、ユリアは言及していたのです。
すると、交渉係も、程度の憤りを現すのですが、動揺で声を震わせ・・・てしまっては、説得に欠ける部分があった様です。
それに・・・ユリアも、「鎌をかけて来た」―――かもしれないのに・・・
(事実だけを述べると、「実はその通り」w)
それにしても…の、この狼狽ぶりには、「本当にそうしているのではないか」―――と、イリスも疑いの眼差しを向けるしかなかったようです。
故に・・・この交渉自体、結局―――「保留」ということになってしまい、また日を改めて・・・と、云う事になったのです。
この事を受けて、まだ当分、この惑星に逗留することになったユリア達・・・
そんなユリアに、イリスは質問を投げかけてみるのでした。
イ:あの・・・ユリアさん、大丈夫なのでしょうか。
ユ:ウフフフ・・・不安?
けれど・・・そうね、あの彼の狼狽ぶりを見るからでは、わたくしの申した事も、強ち間違いではなかったように思うわね。
イ:(!)では・・・本当に―――?!
ユ:「嘘」・・・でしたらば、この交渉自体が御破算となり、わたくし達も留まってはいないはず・・・
「本当」・・・でしたらば、向こう側からの反応が、すぐにでもあります。
そうね―――遅かれ早かれ・・・「今夜中」には・・・ね。
ユリアは、一言で尽くせば、「策略家」・・・
(この事を裏付ける証拠として、あのミリヤをして、「一目置く存在)と云わしめている。)
「女禍」と、存在意義を共有していた、「アヱカ」の頃の様に、清廉潔白ではなく―――
大元の「ヱニグマ」の頃の様に、奸智にも長けた存在・・・云うならくは―――
この世の「表」も「裏」も、「酸い」も「甘い」も噛み分けた事のある存在・・・
だからこそ、ジョカリーヌからの抜擢により、宙外の各勢力と交渉し合う役目を担った・・・
そうイリスは理解していたのですが・・・
実は、「それ」だけでは、まだ不十分だったのです。
何しろユリアは、以前は「黒衣の未亡人」なる、重犯罪組織を束ねていた事もある程の人物でもあった・・・
だからこそ、そうした者達の立場に立って、物事を考える事が出来ていたのです。
つまりは―――今回ユリアが、相手に鎌をかけたと云うのも、「自分だったらば・・・」と、云う立場で、申し立てをしただけ・・・
そしてまた、「痛い処を衝かれてしまった」―――と云う様な、相手がいただけ・・・
それに、またもや・・・自分が、「そうした立場だったなら」―――と、事前予測しただけ・・・
すると、まるで用意されていた台本の様に・・・
ユリアとイリスが、宿泊している施設の、各々の部屋に―――・・・
襲:―――それっ・・・殺れいっ!
襲:(・・・)どうだ、殺ったか・・・?
安らかな寝息を立てて就寝している女性二人に、襲撃者達の兇刃が襲いかかる・・・
哀れ、ユリアとイリスは、暴漢達の手により、その儚い命を露と散らしてしまった・・・
―――はず・・・だったのですが・・・
先程のユリアの言の通りならば、「こうした事」も、既に織り込み済み・・・
―――だ・・・と、したならば・・・
遁れえぬ証拠を掴まれてからの交渉は、なんら障害になる様な事はなかった・・・と、云われています。
=続く=