エクステナー大陸で、局地的に起きてしまった災害―――「地震」・・・

今となっては「余震」も収まり、人々の心の中にも平安が取り戻し始めた頃・・・

ただ一人、心中穏やかならぬ人物が、そこにいたのです。

 

 

第百九十四話;彼女が心中穏やかならぬ原因

 

 

不意にテラを襲った地震から(およ)そ三週間・・・急ピッチで「災害救援に関わる法案」を可決させ、

エクステナー大陸と陸続きになっているロマリア大陸から街道を整備しながら、テラの旧首都であるユーニス城に辿り着いたジョカリーヌは・・・

丁度、リリアからの指示により、資材を運んでいた「ある人物」と鉢合わせになってしまうのでした。

 

 

 

ジ:(復旧の方は、どうにか進んでいるみたいだね・・・。

  それにしても、この有り様を見てみると、「直下型」―――それに、恐らく「(マグニチュード)」としては、7か8と云ったところだろう・・・

  そうした場合、今後、陸地で起こってしまった場合には―――・・・)

 

ポ:ぃよいしょっ―――と・・・

  これ、ここに置いときますよ。

 

ジ:(ん?)ああ―――ごくろ・・・

  (!!)あ・・・あなた・・・は?!!

 

ポ:うん? おや、君は―――・・・

 

 

 

今回の被害の状況を鑑みて、ジョカリーヌは感慨一入(ひとしお)になっていました。

そんな時に、自分の隣りに来た「ある人物」を見て、ジョカリーヌは動揺をしてしまったのです。

 

それもそのはず、彼女「も」、彼の正体を知る人間の一人・・・

 

だから、自然と出てきた言葉が―――

 

 

 

ジ:あ・・・あなたが、なぜこんな処に?

 

ポ:う〜ん?

  ボクが、こんな処にいちゃ、いけないって云うのかい。

 

 

  それにしても・・・本当に久しぶりだねぇ。

  最期に会った頃から、いつ以来になるのかな。

 

ジ:茶化さないでください―――それに、第一・・・今頃「あそこ」は・・・

 

ポ:バレていないからこそ、どこも平穏無事だ・・・と、思うんだけどねぇ。

  それに、今回は、万が一・・・と、云う事もない、それだけの手続きを踏んできているからね。

 

 

 

珍しくジョカリーヌは、緊張をしていました。

この地球の、「大皇(おおきみ)」である、あのジョカリーヌが・・・

 

けれどもそれは、彼女がそうなっても仕方のない事実が、そこにあった―――と、云うだけの話し・・・

 

もし、この「不詳ポール某」が、ある場所にいない事が知れたら、今、自分達が、この場でこうしていることすら出来なくなってしまう・・・

 

この時のジョカリーヌは、この「ポール」と云う人物に対処している反面、この世界に(ひず)みが出来てはいないか・・・また、(たわ)んではいないか・・・

その事の確認に追われていたのです。

 

そして丁度、確認が終わった時、()の人物からの「ある言葉」に抵触したジョカリーヌは・・・

 

 

 

ジ:(はあ・・・どうやら大丈夫なようだ―――・・・

  ・・・ん? なんだって??)

  「は」? 今回・・・「は」?? すると―――では・・・以前にも一度こちらに??

 

ポ:おやおや、こいつはつい「うっかり」w

  流石は、あの人達の妹さんだけの事はある・・・よく気が付いたね。

 

 

 

この・・・「ある事実」を、当の本人より聞かされた時、流石のジョカリーヌも身震いが止まりませんでした。

 

それもそのはず、この世界は、この人物の気紛れにも近い感情によって、少なくとも二回は滅亡の危機に晒されていたのですから・・・

 

しかも、間の悪い事と云ったら、自分のこんな蒼褪めた表情を、作業の進行度合いを確かめに来たリリアに・・・

 

 

 

リ:あっ、ジョカリーヌさん、来てくれたん・・・だ?

  どうしたの、顔色悪いぞ?

 

ポ:ああ、昼夜を問わずの突貫だったらしいからね、疲れが出たんだろう。

 

リ:あっ、またお前は・・・サボろうとしやがって。

  大体お前はなぁ―――

 

ジ:リリ・・・ア? この方の事を、知っているの?

 

リ:はあ?(「方」??)

  いや、知ってるも何も・・・いい加減な野郎でさ―――

  それよか・・・本当に大丈夫か?

 

ポ:大ぁい丈夫―――大丈夫、このボクが、救護所に連れて行くよ。

 

リ:はっ―――お前の口から、「大丈夫」って言葉自体が出るのが不思議だぜ。

 

 

 

今の、彼と彼女とのやり取りを通じて、ジョカリーヌが至れた(こたえ)がありました。

そのことを確認する為、ポールの肩に(もた)れかかり、救護所に足を運ぶ事にしたのです。

 

そして、リリアより幾分か離れた距離で―――

 

 

 

ジ:そう云うこと・・・だったのですか―――

  今ので、ようやく理解に至れましたよ・・・。

 

  ですが、どうして彼女を?

 

ポ:フフ―――自分の「後継者」たる人間を、ボク如きに横取りされて、悔しい・・・ってところかな。

  けれど、君自身も心得ているはずだ、このボクと、「そうした役割」の存在の事を・・・。

 

  悪いけど、しばらく貸してはくれないモノかな。

 

 

 

やり(にく)いことこの上ない―――

それが、今のジョカリーヌの心境でした。

 

まるで、二人の自分の姉達と交渉をしているような感覚・・・

相手の方が、一枚も二枚も上手(う わ て)な感覚・・・

 

それに―――・・・だからこそ「彼」は、満を持した上で、オンドゥへと出していた自分の腹心を呼び寄せ、「彼女」を迎えに来たのだろうから・・・

 

自分の「后」として―――・・・

 

 

けれど、理屈では「そう」だとは判っていても、中々決断するまでには至れなかったのです。

 

そんな・・・そうした思案顔を、自分のお見舞いに来てくれた「彼女」に見られてしまい、一様にして心配をされたモノでしたが、

「そんなことはないよ・・・」と、空元気で装ってはみても、即席の芝居では容易く見破られてしまうモノらしく・・・

 

そうした間の悪さが、三者三様を包み込んでしまい―――

 

 

 

リ:・・・やっぱそう云う事か―――お前が原因だと云う事の様だな!

ジ:あっ―――待って、リリア・・・

 

リ:いいんです、判ってますよ―――

  こいつのお陰で、ジョカリーヌさんの元気がなくなっているんだ。

 

ポ:う〜ん、いいねぇ・・・まさしく、他人が見ても羨ましくなる。

 

リ:ん・だとぉ〜? 手前ぇ・・・この野郎―――よくもそんなスカした事を云ってられるな!!

ジ:ま、待ちなさい、リリア・・・その方は―――

 

ポ:・・・フッ、いいのかい―――こんな処で「公表」してしまって・・・

 

リ:(??)

  ・・・さっきから、何の事を云ってるんだ? あんたら―――・・・

 

 

 

どうもジョカリーヌは、ポールと会う(ごと)に、どこか怯えているような感じがする・・・

 

そうしたリリアの直感は、間違いではなかったのですが、実は、ジョカリーヌは、「ポール」と云う存在自体に怯えているのではなく、

彼が、本来いるべき場所にいないから・・・まさに、その一点に措いて、そうしていたのです。

(それに、今のジョカリーヌと同じ感情を、やはりジョカリーヌのアレロパシーであるユリアも、以前に感じていた事がある。)

 

そして、意を決したジョカリーヌは、「ポール」の正体を、リリアのみに「公表」しようとしていた・・・

それがどんな危険を孕んでいるのかを、ポールは説こうとしていた・・・

 

そしてリリアは・・・不思議な―――とても不思議なやり取りを交わしている二人に、疑問を抱き始めた・・・

 

けれど、今一番、自分の事を判っていたのは―――・・・

 

 

 

ジ:(・・・)心配には、及びません―――

  私が、あなた様の事を説明し、彼女が理解に至れるまでの時間・・・それまでの時間くらいは、稼げれる様になりましたから。

 

リ:ちょ―――ちょっと待ってくれよ・・・何の事だか、話しが全然見えてこないんだけど??

 

ジ:いいから・・・よく聞きなさいリリア。

  この方は、この世に措ける、たった一人の「天帝」であり、名を・・・「ダンテ=ポラリス=ゾディアックスター」

  そして、この場にいるのも、リリア・・・君を、「后」に迎えようとしているからなんだ。

 

 

 

今回、テラでは地震が起きてしまった・・・この事自体は哀しむべき事態だったのですが、

その事は同時に、100万年と云う永い間、「生命維持装置」としての役割を果たしていた、ジョカリーヌ自身の宇宙艦「シャクラディア」の復帰の契機ともなり、

又こうして、以前の顕現(チ カ ラ)を行使出来るようになってきた・・・

 

しかしながら、復帰したとしても、まだそんなには間も経っていない―――と、云う事で、幾分かの不安要素もあったのですが、

一か八か試してみた処、今の処は順調に済んでいる・・・

 

時間制限(タ イ ム ・ リ ミ ッ ト)は僅かしかない―――と云う事を知っての事なのか、ジョカリーヌは手早く・・・そして簡潔に状況の説明をし、終えました。

 

しかし・・・それでも納得はいかない―――いや、理解には至らない・・・

 

(いま)だ初めて聞く存在・・・

 

「天帝」―――?

「ダンテ=ポラリス=ゾディアックスター」―――??

「その后」―――???

 

そんな事を一度に聞かされても、リリアの頭の仲では様々な事柄が盤根錯節―――

事態は、収まる処を知らなかったのです。

(*「盤根錯節」―――入り組んだ根や節の様に、解決の難しい複雑な事件・事柄の事)

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと