今回の取引で、大きな損害を負わされてしまった「麻薬取引組織」は、この「落とし前」を付けさせるため、
せめて取引現場に来ていた、「二人」の内のどちらかを捕える為、血眼になって捜していた処・・・
「その助手」であると見られる女性が、事もあろうに、組織の近場にある酒場にいる―――との情報があり、至急そちらに数人向かわせた処・・・
情報があった通り、酒場のカウンターに座り、一杯飲っかけている女性の姿が。
すると―――・・・
チ:おい、ちょっとそこのあんた―――面ァ拝ませて貰いますかい・・・
助:・・・誰だい? あんたら―――
チ:(!)いましたぜ―――兄貴!
あの取引現場の時と同じ服装・・・「ストレッチ・レザースーツ」だったお陰で、すぐに「その助手」だと判別が付きました。
けれど、「あの当時」とは違っていた点が、たった一つ・・・
それが、隣りの椅子の背もたれに掛けてある、「黒革のコート」の存在・・・
しかし、「それ」以外は、「あの当時」と同じだったので、「兄貴」と呼ばれる上の存在に知らせると・・・
兄:ちょいと、事務所まで来て貰いましょうかい―――訊きたい事がありますもんで・・・
さあ、腰をあげてつかあさいや。
助:「そんな筋合いはない―――から断る」・・・って云ったら?
兄:「無理」にでも―――
助:そいつは頂けないわね―――
だったらここで、ひと暴れしなくちゃいけない。
けど・・・折角、旨い酒を飲ませてくれる店を知ったのに、すぐにぶっ壊さなきゃならなくなるってのは、私としては、気が引ける―――ってなもんよねぇ。
三下を含め、総勢十人は下らない人数に背後を押さえられても、微動だにしない・・・落ち着きを払っている、「その助手」と見られる女性・・・
それに、理屈は捏ねるモノの、こちらの云い分通り、腰をあげてくれるモノと思いきや・・・?
助:そこで一つ提案なんだけど、表へ出ない・・・?
そっちの方が、ここのお客も、安心してお酒を呑めるでしょうし―――w
兄:(この女ぁ・・・)減らず口を・・・
助:さ・・・出ましょうか、この私自ら、あんた達みたいなのに、云いなりになるのって珍しいんだから。
そう云って、女が、隣りの椅子の背もたれに掛けておいた黒革のコートを羽織ると・・・
その女性の正体が、次第に明らかになってきたのでした。
そう・・・今まで、自分達が「その助手」だと思っていた女性が、実は・・・
チ:(!)ああ・・・っ、兄貴! こいつのコートの背にある紋章―――「血塗られた逆十字」だ!!
兄:(!)なにぃ? するってぇと―――こいつは・・・
第百九十九話;右手に銃を、左手に聖典を―――背中には「血塗られた逆十字」を・・・
こう云った、彼らの業界内では、知らない者はいない―――「血塗られた逆十字」を背負う者の事を・・・『賞金稼ぎ・クルセイダー』を・・・
しかも、今回は相当に機嫌が好かったのか、彼の賞金稼ぎは、自身に容疑を掛けられても、その場でもめ事を起こさずに、場所を変えて―――と、してくれたのです。
けれど、「兄貴」と呼ばれた存在は、『クルセイダー』に纏わる「ある噂」を知っていました。
それは・・・殊の外、この人物は、疑いをかけられることが嫌いだ―――と、云うこと・・・
それが、もし・・・その事が知れたら―――
兄:も・・・申し訳ありやせん―――ひ、人違いでしたようで・・・
ヘ:・・・なんだって? 今更その事を云うのかい。
こっちは折角、酒を愉しんでた―――って云うのにさぁ・・・どーしてくれるのよ。
兄:申し訳ねぇこって―――! ですからここは・・・
へ:穏便に・・・行くモノだと思っていたの。
面白くないわね―――つまらない事を云うモノね、あんた達・・・
―――判った、あんた達の処の、「事務所」とやらに行こうじゃない。
兄:そ―――そいつだけは勘弁を! そいつをやっちまったら・・・
ヘ:なぁに―――気にして貰わなくってもww
あんたに案内して貰わなくっても、覚えているから・・・なにせ、一度行った処―――だしねぇ・・・w
ちょっとした誤解―――てっきり、自分達の組織が追っていたモノだと思っていた人物が、
その存在に関わって酷い目に遭わされた別の組織を知っていた事もあり、その兄貴分は、なににも増して平身低頭に謝罪を重ねるのですが・・・
実は、クルセイダーは・・・ヘレンは、「きっかけ」を狙っていたのです。
「紛い物」の取引現場に、自分も姿を見せる事によって、こうした「誤解」を生じさせる・・・
だから、最後のヘレンからの言葉を聞いた時、その場にいた組織の配下達は、皆一様にして「しまった」と思うしかなかったのです。
なにせ、自分達が疑ってかかっていたのは、「紛れもなく」本当に・・・『賞金稼ぎ・クルセイダー』である、ヘレン=サピロス=カーネギー・・・だったのですから。
それに・・・それこそは「傍若無人」―――
なぜヘレンが、フリーランスの「賞金稼ぎ」の内で、最強と謳われているのか・・・
彼らは、その身を以て知ることとなるのでした。
自分好みに改造をした「銃器」を、二挺同時に扱う技能「二挺拳銃」・・・
しかしそれは、その業界では、さして珍しいモノではなく、得てしてヘレンの名を頂点に昇らせしめたのは・・・「防御の面」―――
相手からの弾を、悉く遮断してしまう「黒革のコート」・・・コレの存在の「ある」と「なし」とでは、随分な差がありました。
逆に云えば、ヘレンは、この「コート」の存在のお陰で、「賞金稼ぎ」の頂点に昇り詰める事が出来ていたのです。
それに今回・・・ヘレンは、単独での行動ではありませんでした―――
時間の経過と共に現れた、今回の依頼に措いての、「援軍」の存在・・・身長190cmを誇る巨漢―――
いやしかし、「彼」こそが、今回の依頼の話しを、ヘレンに持ちかけてきた張本人・・・
ビ:ぃよう―――塩梅はよさそうじゃねえか・・・
ヘ:あ〜ら、今頃何をしに来たの。
あんたの分なんざ、少しも残っちゃいないわよ。
ビ:釣れねえ事を云うなよ―――相棒・・・
元はと云えば、オレがこの話しを持って来てやったんじゃないか。
そうだろう・・・ヘレン=サピロス=カーネギー
ヘ:フフン―――そのやり口、いつまで経っても変わらないわよね・・・ビリー=バンデット=マッコイ
ビリーのミドルネーム「B」とは、「バンデット」の「B」―――・・・
けれどこの「山賊」は、そんじょそこいらにいる賊連中とは、ひと味もふた味も違いました。
今回の行為も、他人の穿った見方からすれば、「卑怯」にも映るのかもしれませんが、
巧い云い方をするなら、「他人を出し抜く能力」―――・・・
だからと云って、「力勝負」は苦手としているわけではなく、ただ単に・・・適当な雑魚共のお相手は、煩わしかっただけ。
だからこの時でも、ヘレンから皮肉を云われ、苦笑交じりに返事をするビリーがいたのです。
そして・・・この一件が収まる頃には―――
麻薬取引組織の「一つ」を壊滅させ、硝煙交じりの空気と、血塗られた壁の中で、「雰囲気」を愉しむ二人の姿が・・・
ビ:・・・終わっちまったなぁ―――やけにあっさりと・・・
ヘ:けど、これからが大変なんでしょう〜♪
色々あったりするのは♪
ビ:お前・・・とてもシスターとは思えねえ発言するのな。
それに・・・科白と表情が一致してねえぜ。
ヘ:バカね、ビリー・・・今の私は、シスターなんかじゃないし、
折角の「いい雰囲気」―――ブチ壊すもんじゃないわよ。
互いに口唇を交り合わせ、粘膜と粘膜を味わう二人―――・・・
そして「行為」を一通り終わらせた処で、飛散している資料を整理していると、実に面白い事が判明してきたのです。
それと云うのも―――・・・
どうして今回、レヴェッカが、自分に話しを持ってきたのか―――
その理由は、彼女から述べられはしましたが、「何か」が・・・どこかで引っかかっていた―――
それが、最初は「何なのか」が判りませんでしたが、今回、自分達が襲った組織の一つが保有していた、「ある資料」・・・
それは・・・ここ最近、鳴り物入りで「宇宙会議」入りが取り沙汰されている、とある宙域から選出された、「大物議員」・・・
この「大物議員」は、これまでにも、そんな話しは一つとして浮かんでくるモノではなく、実に「聖人君主然」としていた・・・
けれど、他人からすれば、「そんな事」を隠すのが巧みなのだ・・・との「噂」があったりしたものでしたが、
『火のない処に煙は立たない』―――
「この資料」こそは、その大物議員が、自身の「政治活動資金」に充てる為の、「裏金作り」・・・
つまりは、麻薬を売りさばいた「お金」こそが、大物議員の政治活動の基盤ともなっていた―――
言葉通り、『火のある処に煙は立っていた』―――のです。
=続く=