「これからまたしばらく旅に出る」―――そう云って、自分の国の官達の前で広言したにも拘らず、
その時のリリアの出で立ちとは、普通の旅装束ではなく・・・どこか「戦」の臭りが漂っていたものでした。
けれども、周囲りの人間達は、いつにもまして非常識極まりない事を云い出す、オデッセイアの新たな主に早くも落胆の色を見せ始めたのです。
しかし―――・・・今回奇しくもリリアの随伴を赦された蓮也は、彼らとはまた違った別の見方をして、今回のリリアのこの奇妙な言動を捉えていました。
けれど蓮也は、官達が居る前ではその事を、一言たりとも口にしたりはしませんでした。
彼がその事についてようやく口にしたのは、リリアと並んで歩を進めていた時に―――
蓮:―――もう、この辺でよろしいのでは・・・
リリア殿、今回の事について話してはもらえぬものでござろうか。
リ:何の事だ―――蓮也、要領を得ないな。
蓮:まさか・・・とは思いまするが、拙者をあの者達と同じように―――
リ:考えているのなら、こんな風に一緒について来させはしない・・・違うか。
それに・・・そちらももうそろそろいいんじゃないのか―――
改めてリリアの本心を聞こうとした蓮也ではありましたが、その事をリリアも察したモノと見え、それでも本心を語るのはまだ早い―――と、したのです。
その代わりに・・・あの重要な場面には顔すら見せなかったある者達に、リリアの方から催促をかけてみたのです。
すると―――・・・
マ:ぃよっ―――と♪ なぁ〜んだ・・・と、思ってたら、やっぱし気付いちゃってたか〜w
蓮:そなたらは―――・・・
マ:よいっす―――☆ マキちゃんだぴょんw
ラ:フ・・・ッ、それにしてもお嬢―――巧くやったようだな。
リ:当り前さね。
こんな面白い事、日和見連中に任せられるか―――っての。
小休止を摂る為に、木立の影に入って今回の事を話し合うリリアと蓮也。
そんな時、リリアから促されて実体化したのは、マキとラスネールなのでした。
それにどうやらこの二人は、リリアが今回の行動に踏み切るのを知っていたらしく、今のラスネールの科白にもその事が伺われたのです。
しかもそれを裏付けるかのように、リリアの口からは「面白い事」―――と、何やら含みのある言葉が・・・
その事に蓮也も何やら感ずるものがあったらしく―――・・・
蓮:やはり・・・何か考えがあって、市子殿にもあのような返答を―――
リ:ああ・・・その通りさ―――それにしても、ソフィアも中々的をついた事をやってくれる。
ここ最近で親交が深くなった市子を遣わしてきたんだもんな―――だから・・・思わず今回の計画の事、喋っちゃいそうになっちゃった〜♪
マ:ちょっとぉ〜? リリアちゃ〜ん?!
リ:・・・と、まあ―――そりゃ冗談だ。
―――と、云うよりも、市子ですら欺けられなかったら、どうしてソフィアも云わんや・・・と、云う事だ。
それでは、今回の私の計画―――順を追って説明してやろう・・・
やはり―――リリアは、ここ数日見ない間に随分と大きく成長をしていました。
それにしても・・・一体何が、彼女をこんなに変えてしまったのか―――そこの処は、現在の蓮也では判らないままでした・・・。
しかし、一つだけ云えた事は、これからリリアが何かやらかそうとしている「計画」に、蓮也は反対する事はなく、
寧ろリリアの強い後ろ盾になってやろう―――と、まで決意させるまでに至ったのです。
それからしばらくして―――南下してくるプロメテウス軍を、どう防ぎきるかの作戦会議を行っている、サライ国ユーニス城に・・・また新たな速報が舞い込んできたのです。
ところが―――その速報と云うのが・・・
伝:報告です―――侵攻してくるプロメテウス軍は、イコン河より渡って来れないもようです・・・。
ソ:(・・・ん?)それ―――どう云う事なの・・・
(侵攻してこようと云う―――プロメテウスが、河を渡れない・・・)将軍―――確かあの河に橋は・・・
将:はっ―――確か、四つ架けられていたモノと覚えております。
ソ:(それを渡って来られない・・・と、云う事は―――?)
何か原因不明の障害があり、プロメテウス軍の侵攻に弊害が生じてしまっている事を、ソフィアは知ることになったのです。
それにしても―――なぜ・・・?
サライは、まさに今そのことを議論するため、各将軍や軍師達を動員し、意見の交換を求めあっていた最中であり、
戦でも交通でも「要衝」と成り得ている「橋」を、抑えるために軍を動かせる余裕などある筈がなかった―――
なのに・・・
―――ならば、どこの何者が、イコン河の付近でプロメテウス軍を食い止めてくれているのか・・・
そこでソフィアは一計を案じ、イコン河付近で何が起こっているのかを突き止めさせたのです。
すると・・・思いがけない事が―――
第二十話;正体不明の援軍
ソ:―――なんですって??!
メインの橋梁である「クレッシュ」を中心に―――「オーレク」「ベッシュ」「セレック」・・・そのいずれの橋・・・しかも、プロメテウス領内に陣取っている何者かの存在が・・・
斥:はい・・・それに、憚られながらも我らが確認をした時、クレッシュの橋にてプロメテウス軍を寄せ付けずにいたのは・・・
ソフィアが放った斥候からの報告によると、河の向こう側―――つまり、プロメテウスの領内に、
サライの方角に背を向けて、プロメテウスの軍場を寄せ付けない・・・何者かの存在がある―――と、報告されたのです。
しかも・・・またも耳を疑う事に、誰がどう見てもそうである―――この度、救援要請を断ってきたはずの当事国の姫君の姿が、
遠目ながらも、サライとプロメテウスとを繋ぐメインの橋梁に、確認された―――とも云われたのです。
けれども・・・次の報告を聞いて、ソフィアは一層の疑念に駆られてしまうのでした。
それと云うのも、もしその存在がリリアだったならば―――軍が師団単位で動いてもいいはず・・・なのに―――
斥:いえ―――それが・・・申し上げにくいのですが・・・
兵は・・・オデッセイアの軍旗は基より―――兵士の姿も、況してや軍馬の姿も・・・どこにも見当たりませんでした。
「莫迦な―――??!」
その一言は、総ての報告を聞き終えたサライ国女王が齎したモノでした。
信じられようはずがない―――何しろプロメテウス軍の強さは、自分達が身をもって知っているのだから・・・
国単位では敵うはずもない―――だから不文律で締結を交わし、プロメテウスからの侵攻があった場合には、二国間協力の下、これを撃退させる・・・
今回、ソフィアが市子をオデッセイアへと送り込ませたのも、云わばこの条約の手続きを忠実に行ったまで―――
しかし、リリアはその事を平然と断り、剩―――自分達の事は自分達でしろ・・・と、まで云ってきた・・・
なのに―――ナゼリリアらしき人物が、今回の侵攻騒ぎの渦中にいるのか・・・
それともう一つ―――
ならば、あと残る三つの橋の付近には、一体何者がプロメテウス軍を足止めさせているのか―――・・・
皆さまには、もうお忘れになられたであろうか―――・・・
嘗て、某国より派遣されてきた者達は、誰一人として本国へと戻っていない―――と、云う事を・・・
そして・・・今一度噛み締めて欲しい―――大皇・ジョカリーヌのあの言葉・・・
「我が国の兵は、一兵たりとも関与するを禁ず」―――
大皇・ジョカリーヌの、あの言葉の前後に・・・彼女はかの二将軍から何を与っていたのか―――
そして、あの巨漢には、何を云い含めさせていたのか―――を・・・。
=続く=