ル:ほむ・・・すべからく よきなり

  なれば―――『標的はエリーゼ=ポルックス=フェルナンデス・・・ファイル20/100を解放せよ』

 

P:『受諾(アクセプト)

  『コレヨリ ファイル20/100ヲ解放シ 速ヤカナル標的ノ沈黙化ヲ 行イマス』

 

 

 

最早、何の感情も持たない「機械」―――・・・

ただ、創造(つ く)った(マスター)から下された命令(オーダー)を、否応なくこなして行く「機械(マシーン)」―――・・・

 

だがしかし―――そこには、この「殺戮マシーン」を創造(つ く)ったルーシアでさえ知らなかった、

ある・・・云うなれば、「後天的」に仕組まれた「何か」が、密かに進行していたのです。

 

しかし、その事が表面化してくるのは、「現在(い ま)」ではなく―――・・・

 

 

 

第二百二十五話;バ グ(侵食する者)

 

 

 

リ:うっほ! すっげえ〜〜ありゃあ、歩く武器庫だぜ!

ト:(だがしかし・・・数撃てばいいモノではない。

  その証拠に、あの者は全くダメージを受けていないではないか!)

 

エ:『うるさい蠅じゃねぇ〜〜すり潰しちゃるんじゃわいね!!』

 

P:『標的ヨリノ反撃確認』

  『コレヨリ リパルサー ヲ テンカ・・・』

 

リ:ありゃっ?! あいつ潰されちまったぞ?

 

ル:ほむ えさらじなり(無理もない事)

  あの「バリヤー」のたへにしは 「10t」であるかし

 

ト:(!!)と・・・云う事は、あの者の拳圧は、遙かに「それ」を凌駕すると云うか!!

リ:げ! じゃあ・・・「アレ」どうすんだよ―――「アレ」!!

 

ル:きにとがめむ(心配には及びません) そも こうなりしは わっちの「想定内」なりしかば・・・

  どれ―――「コード・ナタラージャ」

 

P:『コード受諾(アクセプト)

  『コレヨリ 標的ノ能力ノ解析ト 破極点(カタストロフィー)ノ模索ヲ検索イタシマス』

 

 

 

「バルカン砲」や「無反動砲」・・・果ては、「重粒子加速砲」等を展開するモノの、

巨大化してしまっているエリーゼにしてみれば、「(つぶて)」と同じ様なモノでした。

 

それに・・・そのこと自体をも煩わしく感じたのか、エリーゼは「Project_No,2501」を、その拳圧のみで潰してしまったのです。

 

ですが・・・そうであったとしても、所詮は「道具」―――

()してや、戦闘用の道具である「兵器」には、そうした状況は不可欠であるとの認識をしていたルーシアは、

全く動ずることなく、淡々と次の指令を出したのです。

 

すると、粉砕され―――最早復活は困難とされていた兵器は、破損した部分を素早く修復し、また元の状態へと戻ったのです。

そして、「創主(マ ス タ ー)」より、次に下された命令(オーダー)こそが、この兵器に内蔵されている、最大級の破壊力を誇る、

例の武器―――『アポカリプス』の、「始動コード」だったのです。

 

ところが―――・・・

 

 

 

P:『パワーセルニ 異状発生―――』

  『「アポカリプス」始動デキマセン』

 

ル:(なんと?!)いんは なになりか(原因は なんであるのか)―――

 

P:『判リマセン』

  『原因究明ト共ニ 太陽光ヲ コンバートシテ充電中 ・ ・ ・ 現在30%デス』

 

 

 

その武器を使用するにあたって、内蔵されているバッテリーの多くを消費してしまう事は、創造(つ く)った本人であるルーシアは百をも承知でした。

 

それにしても・・・の、低い蓄電率―――

確かにその数値では、例の武器は始動できない・・・けれども、一旦初期化をし、この場へと来るのに確認はしていたのです。

 

その時には、二発程度ならば「可能」―――と、思っていたのに・・・

それが、この数値まで下がっていたモノとは―――・・・

 

しかしルーシアには、思い当たることが一つだけありました・・・

 

 

 

ル:『原因の究明を中止、直ちに別経由にて走査しているプログラムを検索せよ』

 

P:『了解』

  『デスガ ソノ間 コノ荒ブレル者ノ 抑制ハ・・・?』

 

リ:ヘッ―――そいつは私に任しときな!

  おい! お前も・・・そこで伸びてる奴を連れて、一緒にこっちへ来い!!

 

ト:(!)だが、貴様とは―――・・・

 

リ:死にてぇのか? なら別に構やしないけどなぁ・・・

  まあこっちも、久々だから、出るかどうかまでは保証出来ねぇんだけども・・・な。

 

ト:(・・・)よかろう、それに今は一時休戦中であったな。

  ならば貴様のその言葉に、甘えさせて頂こう・・・。

 

 

 

「異状なまでの蓄電率の低下」―――その原因を、現在捜査しているプログラムとは別の、「プログラム」が走査しているのではないか・・・と、ルーシアは仮定しました。

そして早急に、自分の最高傑作に、その事を検索させようとするのですが・・・

その事は同時に、破壊衝動に駆られている「破壊神」の相手が出来なくなる・・・ことでもあったのでしたが、

そこを・・・なんとリリアが、一か八かの賭けに出ようとしていたのです。

 

そう・・・リリア自身が所有する、「晄楯」の展開―――

 

けれども「それ」は、今出に意識的に出せた試しはなく、過去の例に措いても、自分自身や仲間が危機に陥った時のみ発動できていたからなのでしたが・・・

それでもリリアは、その「賭け」を実行に移したのです。

 

すると―――・・・

 

 

 

ト:ぬおっ―――!?

  (これが・・・噂に聞く・・・)

 

 

 

「一か八かの賭け」は、「吉」と出た・・・

やはりこの時も、自分達が危機に陥ったと判断したからなのか、万事の災禍を退ける「(ひかり)の楯」は出現したのです。

 

 

「それにしても美しい・・・」

「晄り輝ける楯もそうではあるが、貴様と云う人間は何にも増して・・・」

「どうやら私達は、貴様と云う人間を見誤っていたようだ・・・」

 

 

今回彼らが受けた依頼は、「天帝の后を抹殺せよ」―――でした。

 

確かにその依頼は、単純にして明解―――だからトーマスとハンスの兄弟は快く引き受けました。

 

けれどそこには、「天帝の后」のパーソナル・データはなかった・・・

それに彼ら兄弟も、「天帝の后」も「やんごとなき連中」の一人と思っていただけに、

躊躇なく終わらせ―――またすぐに終わるモノだと思っていた・・・

 

それが・・・蓋を開けてみれば、「天帝の后」とは、比類なき好戦家であり、また・・・生命を奪いに来た自分達に対しても寛容であった・・・

事実―――「天帝の后」の仲間であった者が暴走を起こし、その場にいた全員に類が及ぼうとするまでに、自分達にも救いの手を差し伸べて来たのだから・・・

だから、そうした「后」の姿勢に、トーマスは、次第にこの依頼をしてきた「依頼主」と、この依頼「自体」に、思う処となってきたのです。

 

 

それに・・・一方のこちらでも―――・・

 

 

 

P:『ピーッ ピーッ ガ ・ ガ ・ ガ ・ 』

  『検索中断―――検索中断―――』

  『現在 プログラムver1ヲ 侵食シテイル バグ 尚モ増大中』

  『制御デキマ・・・』

 

 

 

現在その躯体で走査しているプログラムを、侵食しつつ―――また改変しようとしているプログラムは、確かに存在していました。

そしてそれを、現在のプログラム「ver1」は、「バグ」とみなし、「デバック」を行おうとしていたのですが・・・

 

その「バグ」は、思いの(ほか)、強かった―――・・・

 

だとしたら「これ(バグ)」は、「コンピュータ・ウイルス」の類ではないか・・・と、思われたのですが―――

 

現在のプログラム「ver1」・・・それは、「創主」であるルーシア自身が組んだモノ・・・

ですが、現在よりほんのちょっと昔に、実働していたのは―――・・・

 

 

 

ナ:ん・・・ん〜〜・・・あれ? なんだ?ここ―――・・・つて、うわ!! な、なんだあ〜?ありゃあ〜!!

 

リ:ん・だあ〜? 私の背後(う し)ろで、間の抜けた事を云う奴は―――

 

ナ:それに、おわ!! リリア・・・つて―――あれ? っかしいなあ〜〜確かリリアは、数十年前に死んだはず・・・

 

リ:失礼なやっちゃなぁ〜私は生きてるよ!!

  なんだよ・・・て、云うか! 「死んだ私」・・・って―――

 

ナ:それに・・・今気付いたけど、なんでリリアがタケルの「晄楯」を使えてるんだあ〜?

 

リ:(!!)ちょ・・・ちょっと待て―――って! な・・・なんでお前が、タケルさんの事を知ってんだよ!!

 

 

 

一見して噛み合わない会話・・・

けれど、そう・・・現在、この躯体を支配しているのは、現在よりちょっと昔・・・

350年程前に実働していたプログラム―――「ver3」なのでした。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと