『宇宙警察機構』―――社会的弱者の立場にある「民間」を保護し、擁護する・・・云わば「正義の執行代理人」。
得てして「彼ら」「彼女達」の敵とは、そんな弱者達を虐げ、暴を振るう・・・云わば「反社会勢力」、
いわゆる「マフィア」や「ヤクザ組」などでした。
しかし―――近年の「彼ら」「彼女達」と云えば、比較的治安が整っている「中央」は、そうではなくとも・・・
「辺境」と呼ばれている宙域などでは、それは惨々たる有様で、「恐喝」や「賄賂」等が横行し、
時には「マフィア」や「ヤクザ組」とも手を組み、どちらかと云えば、そんな警官達が率先して、民間を虐げている処も少なくはなかったのです。
では・・・なぜ「UP」が―――「正義の執行代理人」でなければならないはずの「彼ら」「彼女達」が、そんなにまで堕ちてしまったのか・・・
なぜ・・・「主幹」の思惑が、「末端」まで行き届かないのか・・・
なぜ―――・・・
しかし、その答えは明確にして簡潔。
そう・・・そもそもの「主幹」が―――・・・
長:(フ・フ・・・終にこの機が来たか―――
思えば永かった―――・・・ようやく、私の盟主も、重い腰を上げる気になったようだ・・・
そうだ・・・今こそ、今こそ!! この私が理想に描く「正義」を執り行う為、立ち上がるべきなのだ!!)
ドロシー=ソロトル=ハイネ―――何を隠そう彼の人物こそは、現在のUPの長・・・つまり、「長官」なのでした。
しかし、不思議に思うのは、そんな彼女が紡いだ負の思惑・・・感情―――
けれどそれこそは―――・・・
現・「UP長官」であるドロシーは、何も彼女自身が望んで「悪堕ち」ワケではありませんでした・・・。
ただ―――良く云えば、状況が作用してしまった・・・また、悪く云えば、神の姿を模した悪魔に魅入られ・・・そして誑し込まれてしまった・・・
しかし、それも「言い訳」―――・・・
ある者から云わせてみれば、鋼にも勝る強固な意志さえ持てば、悪魔の甘やかな勧誘・誘惑に屈しないのだと云う・・・
そう―――云ってしまえば、ドロシーには、そうした「鋼の意志」が欠落していた・・・そう云わざるを得ないのです。
とは云え、ドロシーの為に弁護を一つ―――
「長官」にまでなった彼女の意志は、ならば云われるだけ脆かったのか・・・弱かったのか・・・と、そう思いたくもなるのですが、
実は「そう」ではなく・・・
云うなればドロシー自身でも云っていたように、「彼女自身の盟主」の存在・・・
第二百四十八話;結成の背景
あれは―――・・・ドロシーがまだ、「警視」だった頃の話し・・・
その頃も、相も変わらず犯罪が横行し、中々治安が良くならない現状を憂い、偶々―――
そう・・・「偶々」―――
悪が蔓延る世に対し、自分の無力さを痛感した・・・そんな、この世の弱者達に対して詫びる為、
「偶々」訪れた「グレゴール正教会」の、とある教会の告解室にて、「二人」は運命的とも云える出会いを果たしてしまうのでした。
修:汝―――己が罪を告解せよ・・・
ド:主よ・・・私は無力―――・・・
いくら私が正義に燃え、悪を懲らしめんとしても、「悪意の芽」は次々と芽生えてくるのです・・・
それに、私が目の前の犯罪に目を留め、防止・抑制を試みようとも、この広大なる宇宙では、それ以上の凶悪な犯罪が、どこかで横行をしているのです・・・
嗚呼・・・私は―――こんなにも無力な私は、どうしたら良いのでしょう!!
「偶々」―――そう・・・何者がの意思が働かない・・・働いていない時期にて、ドロシーの罪の告白を受けた者こそ、
この当時でも豪腕・辣腕を振るっていた、「異端審問員」の長・・・レイア=アルゲディ=メーテルリンクその人だったのです。
そんなレイアも、ドロシーからの告解を受け入れた当初、「よくある事」・・・と、思い、聞き流そうとしていたのでしたが―――
レ:そう・・・ですか・・・汝も、私と同じ様な苦しみを背負いし者の様ですね・・・判ります。
ド:(!)本当ですか―――?! 判って下さるのですか?!!
レ:ええ・・・我が事の様に―――・・・
なのに、周囲りの者達は、そんな私達の悩みを軽んじ、剩、嘲り笑う始末・・・
苦しかったのでしょう・・・あなたも―――・・・
ド:おぉ・・・おお!! 我が主よ・・・有難うございます・・・!
こんな私めの苦しみを、共有して下されて・・・本当に感謝いたします!!
この広い宇宙―――・・・この広い宇宙には、よく似たような悩みがあるモノだ・・・
この私も、かつて自分の無力さを呪った時期がある・・・
その無力さを、かつての仲間達は、相手もしてくれなかった・・・
そうだ・・・この世には「善」も「悪」もなかったならば、また「一」からの世界を創世しよう・・・
そうすれば、新しい世界ならば、この私の望むとおりの世界にする事が出来る・・・!
それが、「現在」の私ならば可能なはず・・・
階位では「司祭」止まりだけれど、「神力」「霊力」に措いては、既に現・大司教をも凌いでいる・・・
ただ私は・・・この世に絶望し、昇格を望まなかっただけ・・・!
そうだ・・・やろう―――!
今ここに、同じ志を持つ者がいる―――
この宇宙は広大い・・・ならば、私達の様な感情を持ち合わせている者達は、まだまだいるはず!
そして、かつての仲間達の様に「七人」集め、「かつての仲間達」の名を貶めてやろう・・・
「かつての仲間達」・・・「七人の魔女」こそは、口だけの集団・・・
ならば、私が創る「新生」「七人の魔女」は、「有言実行」・・・口にした事は必ずや実行に移そう!!
そうしなければ、あの子の・・・
無垢だった「あの子」の魂が救済されない・・・
主よ―――感謝し申し上げると共に、私に力を・・・!!
この世を変える勇気を―――私に!!
その「出会い」こそは、今からしてみれば、この世に起こる不幸の前兆―――と云っても、差し支えなかったことでしょう・・・
レイアとドロシー・・・この二人が、互いに抱える負の感情を共有してしまったことにより、
現在の「七人の魔女」の骨格が出来上がってしまった・・・
互いに捻じ曲がってしまった「正義」・・・
それは最早「悪意」と同義であり、ここにこうして、現在の世の中を破滅に導かんとする、悪意ある集団―――
「七人の魔女」が結成されてしまったのです。
そして―――・・・
破滅へのシナリオの「Goサイン」を、『ヴィヴィアン』から受け取った『テレジア』は・・・
テ:(フ・フ・・・では、早速―――
一番目障りな「ディーヴァ」なる組織を・・・おお―――その前に、この地下施設に格納されている「アレ」を・・・)
(?!)―――何者だ!
やはり・・・「秘密」とは云えども、メンバーの内に現職の警官がいるともなれば、立ち所に知れてしまうようで・・・
それに、かつて「大惨事」の「未遂」があったと云えども、その引き金ともなった―――と、見られている「物的証拠」が、足元にあるのだから・・・
その、どちらかの抹消の「優先事項」を迷っていた処―――
この・・・堅牢な―――軍事要塞並みの防御を誇り、セキュリティに関しても常に最新技術を導入している、UP本庁の・・・それも「長官室」に―――
しかも、その部屋の主たる『テレジア』・・・ドロシー=ソロトル=ハイネが気付かないうちに侵入をしていた存在がいたのです。
誰:フッ・・・フフフ―――案外、ザルみたいなもんよのぅ・・・ここのセキュリティも。
テ:何奴・・・名を名乗れ―――!
いや・・・それにしても、どうやってこの部屋に―――?!
この部屋は、この私「しか」入れないはず・・・なのに―――
誰:(・・・)「技術」―――を、駆逐するんも、また「技術」・・・
知っちょるか、ここのセキュリティを創った奴の事を・・・。
テ:(?!)何をおかしなことを・・・ここのセキュリティを構築したのは、私の同志である『ロクサーヌ』―――
誰:はっはっはは―――
テ:(!)何が可笑しい!!
誰:こがいなわてのカマにかけられるようじゃあ、おんどれも、あんまし大したこたぁなさそうじゃのぅ―――
テ:(?)
(・・・!)しまっ―――
「語るに落ちる」・・・未明の侵入者の言に釣られ、つい口にしてしまった―――
『私の同志である「ロクサーヌ」』―――
つまり、『テレジア』であるドロシーは、気が動転する余りに、現在自分が所属するもう一つの組織・・・
そして、自分がその組織の一員である事を、暴露してしまっていたのです。
=続く=