「人格」を持ってしまった「プログラム」・・・通称を『オメガ』であり、「現在」の「七人の魔女」の一人である『ロクサーヌ』は、ここに消滅しました・・・。
そして残されるのはあと一人・・・「過去」のメンバー『マーリーン』にして、「現在」のメンバーのNo,1である『ヴィヴイアン』。
その由来も、さある「聖剣伝説」に基づく「師弟」関係にあり、お話しの上では「弟子」であった『ヴィヴィアン』は、「師匠」であった『マーリーン』を封じた・・・
つまり、現在の自分は、かつての自分を超えた存在である・・・と、そう云いたかったようなのですが・・・
しかしながら、「現在」の「七人の魔女」は、あまり好くない影響を世間に及ぼし始めていた―――
言い替えるならば、世間の均衡を『混沌』へと導いていたのです。
その事を感じ、これ以上の事態の静観を危険視した存在「達」が、水面下で動き始めたのです・・・。
閑 話 休 題―――
残りのメンバーが、自分を残すのみとなった事を知った『ヴィヴィアン』は・・・
ヴ:(『ロクサーヌ』まで消滅しましたか・・・。
それにしても、なんと云う不手際にして失態! これでは我らが主「ザッハーク」様に、申し訳が立たぬではありませんか!!
しかし・・・『リヘンツェル』達だけならいざ知らず、なぜ上位の「魔女」である『テレジア』や『ロクサーヌ』達まで、その存在が知れたのでしょうか・・・)
その場所は―――「礼拝堂」・・・
神聖なるその場所で存在をしていたのは、これまで自分が犯した事を・・・「罪」を悔いる者の姿ではなく、
自分達が成就しようとしていた事―――「宇宙を混沌へと導く事」・・・
それを、何者かによる阻止によって中断せざるを得なくなった事を、痛恨に感じていた姿だったのです。
それに、「その人物」は・・・皮肉にも、非常に高い徳を修め、「組織」・・・教会の内外を問わず「不正」を取締まる「役職」・・・
「異端審問」の長でもあったのです。
それが・・・どうして―――・・・
ですが―――こうした・・・高い徳を修めた人物ですら、あるきっかけをして「堕 天」をしてしまう場合があったのです。
そして「彼女」・・・レイア=アルゲディ=メーテルリンクも、過去にそうした「きっかけ」があったのです。
そう・・・あれは―――・・・
現在より、遥か遠くの昔・・・約100億も昔の事でした。
当時のレイアは、一人の孤児の少年を引き取って育てていました。
その「少年」は・・・「純真」で「無垢」で、「穢れ」と云うモノを知らない―――真っ白な存在・・・
何が「善」で「悪」かを、全く知らない存在・・・
そんな存在に、もし、「「善」を装った「悪」」が近付いてきたら、どうなるのか―――
しかしそれは・・・
「少年」は、「純真」であり「無垢」であるが故に、悪意ある者を「善」だと思い込み、「悪」の道を選んでしまった・・・
その事を、レイアが知った時には既に手遅れで、それでもどうにかならないものかと、
当時「コミュニティ・サイト」を通じ、知り合いになっていた「七人の魔女」のメンバーに、相談を持ちかけたのです。
が・・・なぜか、自分の相談を、取り合って貰うどころか―――その「ツイッター」の管理者である『スカータハ』からは・・・
ス:「だから・・・云ってるだろう?」
「あの「坊や」は危険だ―――って・・・」
「それにね・・・もうそうなってしまった以上は、私達の手には負えない・・・これも、以前から云っていた事だったよね。」
マ:「ですから・・・そこをなんとか!!」
「あの子が・・・あの子自身が、何も知らずに「混沌」を択ぶなんて・・・考えたくもありません!」
ス:「あのねえ・・・」
「あんた―――あの「坊や」が、「何も知らずに」そうなったと思ってしまっているようだけど・・・」
「仕方がない・・・ほんの少しだけど真相を話してあげよう。」
「あの「坊や」はね、むしろ「そうなる為に」この世に生まれ出てきた様なものなんだよ。」
「過去」のメンバー『スカータハ』・・・ガラティア=ヤドランカ=イグレイシャスは、自身も『宇宙倫理規定』の選定に関わっていた事もあり、
世の中の理の総てを識っていました。
そして・・・「ある計画」のことも・・・
現在の我々には、理解し難い項目―――宇宙創世期には、「善」「悪」の区別がなかった・・・
どこからどこまでが「善」で、どこからどこまでが「悪」なのか・・・
判断する事も儘ならなかった―――・・・
それに・・・これでは、「世間の均衡」が取れない―――
だからこそ、明確に判る様に「判断基準」を設けようとしたのです。
その「基準」の、「判断材料」となったのが、レイアが育てていた―――「一見して」の「少年」・・・
名を・・・「ザッハーク」―――
しかし、この「少年」こそは、さある「五人」もの有志・・・と、「天帝」との間の取り決めで「提唱」された存在―――
その際には、「天帝」の細胞を使い、「天帝」とは全く違う「ベクトル」を、その「肉体」に組み込む作業が必要だったのです。
そこで選ばれたのが・・・レイアではなく、ジィルガ=エスペラント=デルフィーネ―――・・・
しかし、ここで手違いが生じ、なぜか「少年」―――「ザッハーク」はレイアの下に・・・
ところが、この「手違い」も、想定範囲の内だと唱えたガラティアにより、その「計画」も続行されたのでしたが・・・
思っていた以上にレイアがザッハークに対し愛情を注ぎこんでいる状況に、ある種の「危険」を感じ始めた『五人組』のメンバーの提言により、
ガラティアはレイアに総ての事情を話し、なんとか理解を得ようとはしたのでしたが・・・
予想以上の激しい抵抗に遭い、その交渉は決裂に終わってしまった―――・・・
しかし、「計画」を中止するわけにもいかず、当初の「計画」通りに、ジィルガが「善を装った悪」に扮し、
「少年」を「正しき道」へと導いた・・・
(ここで云う「正しき道」とは、ザッハークが「悪」の道を選ぶ・・・と、云う事。)
その事を知らない―――理解しようとはしなかったレイアは悲観に暮れ、
件の・・・「魔女達の呟き最終ログ」を呟いて、仲間達との交信を一切断ってしまったのです。
それから・・・100億もの年月が過ぎ去き―――
今度はレイアそのものが、「悪」の道に染まってしまった・・・
それも・・・かつて我が子の様に愛した、ザッハークの手によって・・・
その事態を静観し、思う処となったガラティアは、レイアの計画を阻止すべく、レイアの下に「ある刺客」を送り込んだのです。
修:あ・・・あの―――・・・
レ:(!!)誰です―――!?
何ですか、あなたは・・・
修:いえ・・・その・・・い、「異端審問官」になりたいのですが・・・よろしかったのでしょうか。
レ:(・・・)どうして「異端審問官」になろうと・・・?
どうして・・・皆から忌み嫌われる、この役職に就こうとしたのですか。
修:動機付け・・・ですか・・・。
だってわたくし、周囲りから嫌われていますので・・・
レ:そう・・・あなたも・・・
でも、よく考えなさい。
本当に、あなたの周囲りが、あなたの事を嫌いなのか・・・
たった一人でも―――信じるに足る存在がいるのなら、考えを改め直しても好いのですよ・・・。
「異端審問官」の長レイアは、「グレゴール正教会」の本部にある礼拝堂で、傍から見れば何かの思案に没頭しているかのようでした。
―――と、そこへ・・・
新たに「異端審問官」への道を歩みたい・・・と、申し出た、若い修道女の姿が・・・
第一印象からして、敬虔そうで―――意思も強そうな表情・・・
だからこそ「異端審問官」に最適合ではないかと思われたのですが、なぜかレイアの口からは、「もう一度考え直してみる必要があるのでは」・・・
そう―――レイアは心得ていたのです。
同じ組織、同じ考え方、同じ志を持つ者達―――「仲間」に対し、疑義の眼差しをかけなければならないと云うのは、
お互いに対し、どんなにか辛い事であるか―――と、云う事を・・・。
だからこその、その言葉・・・
こんなにも深い罪業は、自分達だけでいい―――・・・
そうとも受け取られるレイアの言葉に、若い修道女からは・・・
修:そう・・・ですね―――・・・
あなたの云う通りかもしれません・・・。
でも―――・・・
レ:(・・・うん?)
修:ではなぜあなたは―――敢えて茨の道を選んだのですか。
辛く―――険しく―――困難な道程を・・・
レ:私は・・・私はもう、いいのです。
一度踏み外してしまった道は、もう後戻りはできない・・・
修:本当に・・・そうお思いなのですか。
レ:(・・・)ええ―――今なら、そう思えてしまいます・・・。
あの時の・・・あの人の言葉を、そのまま受け入れられていれば・・・
それが出来なかったのも、当時の私が若過ぎた・・・と、云う事があるのかもしれませんね。
レイアは・・・今の自分が、何をしようとしているのかなど、判っていました。
こんな事をする為に、自分は聖職に就いたのではない・・・
自分はただ・・・正しき道理を、世に広める為に・・・
しかし、自分のその思いとは裏腹に、自分の正義に照らし合わせた時、なんと世間の穢れている事か・・・
ならば・・・ここは自分の心を鬼にして―――
けれど「その思い」が、本当の「鬼」を呼び込む事になってしまおうとは・・・
それに、その「鬼」とは、具体性・抽象性がなく、いわばその「鬼」こそは、レイアの「心の闇」が産んでしまった、負の産物に他ならなかったのです。
そしてレイアは・・・自らが「鬼」になってしまう事により、時間の概念から外れてしまった・・・
100億の歳月を過ぎても―――経る事のない年齢・・・
「不死者」でも「生物」でも・・・そのどちらでもない、「曖昧」な存在・・・
だから、その若い修道女は―――
修:その事が判っていて・・・後戻りができない・・・。
あなたは、かつてのわたくしと同じなのですね―――
レ:(!?)何者だ・・・お前は―――
ユ:かつてのわたくしも・・・「純然たる悪意を持つ、誰でもない者」―――と云う、「曖昧」な存在でした・・・。
レ:(く・・・)まさか―――お前は!!
ユ:けれどわたくしは、「もう一人のわたくし」を見つける事により、今はこうして「一つの個」として、成り立つ事が出来ているのです。
ですから・・・あなたも・・・
レ:かつて宇宙を震撼させていた、「黒衣の未亡人」―――その首魁である『ヱニグマ』!!
そのお前がここにいると云う事は・・・
ユ:その事以外の、何があると云うのでしょう・・・。
けれど、わたくしは、そうはしたくはなかった・・・
あなたの事を調べて行く内に、どこか、かつてのわたくしを見ているかのようだった・・・
ならば―――と、思い、あなたの「もう一人のあなた」を見つけようとはしましたが・・・
残念な事に、「もう一人のあなた」は・・・それに、「今」のあなた「も」―――・・・
レ:聞く耳は持たない―――!
私はあの子に・・・いえ、あの方に身も心も捧げた存在!!
ザッハーク様がいかなる存在であろうとも、私は・・・片時も、あの方の傍らにいる事を望む!!
若い修道女に扮したユリアは、今回―――盟主・ガラティアからの指令により、「或る存在」・・・
「現在」の「七人の魔女」のNo,1である『ヴィヴィアン』・・・レイア=アルゲディ=メーテルリンクを討ち滅ぼすよう云いつかっていました。
そしてこの女性の経歴を調べて行く内、どこか過去の自分にも似た境遇であった事が判り、
また、盟主・ガラティアが、どうして自分に、この指令を出したのかを理解したのです。
それが、「似て非なる者」・・・
確かに、レイアはどこか、自分に似てはいましたが、やはりどこかが違う―――
その点を細かく分析してみた処、ある事実が浮上してきたのです。
それが、いわば「もう一人の自分」・・・
「個」としては弱い「自分」が、「依存をする存在」・・・
ユリアである自分は、相互作用のある「女禍」を見つけ、「乾坤」となる事が出来た・・・
しかし・・・レイアは違う―――
「強き闇の存在」であるザッハークに惹き込まれ、レイア自身が「闇」そのものに染まってしまった・・・
「純白」だったモノが、「漆黒」に染め上げられてしまったのは―――レイアの方・・・
哀しいけれど、もう・・・救いの手段がない―――・・・
だからこそガラティアは、「かつての自分」を、ユリア自身が裁く事により、「けじめ」の一つを着けさせようとしたのだ・・・
そうユリアは理解しました。
そして―――・・・
第二百五十三話;「七人の魔女」崩壊
レ:だから私は、この先も生き続け―――ザッハーク様の為になる為、お前を排除する!!
受けなさい・・・『セレスティアル・バーニング』―――
「聖職者」であり、優れた術者であるレイアは、『聖なる焔』を召喚しました。
「魔」を・・・「邪」を・・・焼き尽くすと云う『聖なる焔』―――
しかし、ユリアには―――・・・
レ:(!)な・・・ナニ?! 私の召喚した『聖なる焔』が・・・
ユ:なるほど、こう云う布石でしたか―――
今にして、どうして盟主・ガラティアが、あなたを討滅するのにわたくしを択んだのか・・・理解できました。
それに・・・『聖なる焔』を扱えるのは、あなただけに限らないのですよ。
レ:ナニ・・・ガラティア?! するとお前は、あの人の―――
それに・・・なぜ、生来悪だったお前が―――・・・
ユ:もう・・・お終いにしましょう―――・・・
そして・・・安らかなる眠りについて下さい・・・
別名を「聖なる焔を拝む者」―――『アーティファクト・ツァラツストラ』・・・
つまりは、同じ属性を操る者同士であり、必ずやレイアは、自分が持てる最大の奥義をして、ユリアに挑んでくるだろう・・・
しかし、術式の威力と制御は、また別の問題・・・
それにもし―――いや・・・必ずレイアは、先に仕掛けてくるには違いはない。
そこで予め、レイアが放った術の威力・効力を、逃がしながら取り込み、
そしてユリアの持てる最大の奥義をして、意趣返しをすればいい―――
ユリアの盟主である、ガラティアの読みは的確でした・・・
現実として、そうなってしまったのですから・・・
そして、ユリアが放った最大奥義も―――『スアラ・ナラカ』・・・
それは、喩え「不死者」だったとしても、「存在」までも焼き尽くす「業火」・・・
それは、「鬼」となってしまったレイアも、例外ではありませんでした。
こうしてようやく・・・彼女にも安らぎが―――・・・
「「逝く」とはこう云う事だったのですね・・・」
「今まで、あれほど憎らしいと思っていた事が、今では不思議とそんなには感じられない・・・」
「強き信念を貫いてきたと思っていたのに、私以上の信念の強き者がいたなんて・・・」
「感謝します・・・最期の相手が、あなただったと云う事を・・・」
こうして―――「現在」の「七人の魔女」は、メンバー全員の死により、壊滅・・・
宇宙の均衡が「混沌」へと傾くのを、また一つ防いだのですが・・・
また別の課題も、残されていたのでした。
=続く=