周囲(ま わ)りが権謀術策渦巻く中―――その場所は意外に平静が保たれていました・・・。

 

しかし、そこにいる「主」は、「そう」感じていたようではなく・・・

云わば、「嵐の前の静けさ」が、似合いの表現とさえ思っていました。

 

 

そして―――・・・

 

 

 

ク:私―――を、お呼び・・・とか

ダ:ヨヴか・・・すまないな―――

 

ク:(・・・)全くです、また「彼女」を怒らせる原因・・・いや、もうすでになっていますか―――

ダ:ところで・・・いつまでボクが、気付かない「フリ」をすればいい・・・

 

ク:難しい―――問題ですな・・・

  とは云え、「そんな事」を口の端に(のぼ)らせているようでは・・・

ダ:(そろそろ限界―――か・・・)

  それで・・・?

 

 

 

急遽、マリアの監視役も兼ねているクラウドマン(ヨヴ)を、自分の下に()()せ―――これからの事態の推移と対策・傾向を練ろうとしている、天帝・ダンテ・・・

しかし彼は、元来から自分の周囲で起こっている事態など「無関心」―――の、はず・・・だったのに・・・

なぜか・・・今の言葉は、「そんな風」に「装っている」感じすら見受けられた・・・

 

それにしても―――「この宇宙」の明暗すら分けるとされる「主」が、こんなにも「悩める」理由・・・とは?

 

すると、クラウドマンは口を噤み、しばらく考え込むと・・・

 

 

 

ク:(・・・)やはり―――私程度の者には、考えが及びません・・・

  が、「あの方」の云われには・・・『打てるだけの手は打ってきた』―――と・・・

ダ:「変貌」を目にして、驚きはしないかな・・・

 

ク:心配―――なので?

ダ:(・・・)いや、バカな詮索だったよ、それに、何より「その為」の顕現(チ カ ラ)だった・・・

 

 

 

第二百九十五話;かつて―――ボクが「その重さ」に耐え兼ね 手離してしまった顕現(チ カ ラ)・・・

 

 

 

そう天帝・ダンテが呟くと、彼の参謀である「ヨヴ」ことクラウドマンに、苦渋の表情が現れてきました。

 

「天帝」であるダンテが、この「宇宙」の天体の運営管理を司る役目以外に、重きに過ぎた・・・と感想を漏らすほどの使命―――とは?

(ここで注目をして置かれたいのは、表現を「この「宇宙」」としている事、以前の様に「第○号」と着けないのは、「その総て」を含んでいるから。

つまり前話の「トゥルヴァドゥール」のいた「第11号宇宙」もそうであれば、我々のいる地球―――「太陽系」や、それを含む「銀河系」を含む「第71号宇宙」も、「この「宇宙」」に含まれているのである。

とどのつまり、「天帝」とは、数ある「小宇宙」を統括する役目であり、以前まで誰かさんが勤めていた「后」がこなしていた業務は、勿論こうした「小宇宙」からの申し立てを処理していたのである。)

 

すると・・・沈黙を護っていたクラウドマンからは―――・・・

 

 

 

ク:かつての「勇者」が持っていたとされる「无楯」・・・

  しかし「アレ」は、「勇者」自身か・・・その血統でなければ、扱える事はできません。

  それをあなたは・・・その重き荷に耐え兼ね、「无楯」を手離してしまった・・・

  だから「无楯」は、自然消滅するモノ―――と、誰しもが思っていました。

  そして・・・「終わり」だ―――とも・・・

 

 

 

かつて・・・「宇宙」の創世期(はじまりのとき)、最初にあったとされる争い―――「大禍」・・・

宇宙(せ か い)」そのモノを喰らい尽くさんとし―――自分だけが望まんとする「宇宙(せ か い)」を創り上げようとした存在・・・

その存在に対抗すべく立ち上がった「勇者」―――・・・

 

その「勇者」が所有していた、唯一にして無二・・・或いは無比の強さを誇ったのが「无楯」と云う顕現・・・

 

そう―――「无楯」とは、「宇宙(せ か い)」を救った「勇者」・・・「のみ」が持っていた顕現(チ カ ラ)だったのです。

 

しかし・・・それがどうして、純粋な地球人―――なはずの、リリアが持っていたのか・・・

 

 

それはそれとしても、先程クラウドマンは、重要な事を述べていました。

そう・・・「勇者」より受け継いだ、「勇者」直属の血統である「天帝」は、理由はどうあれ―――

「无楯」を手離した・・・と、云う「事実」―――

 

ならば、「无楯」は自然消滅して然るべきであり、また再び「彼の者」が復活を遂げた時、

対抗しうる術は「ない」―――とさえ思われていたのです。

 

そこを・・・「ですが」―――と、クラウドマンが切り出すと、普段は相好を崩さないダンテの表情が険しくなり・・・

 

 

 

ク:「賢下五人」の一人である「哲学士(フィロゾフィア)」が、永年に亘るシュミレーションを経て、ようやく「そのデータ」に到達・・・

ダ:だが・・・「无楯」は、データに捉えきれるものじゃあない・・・

 

ク:そうですね・・・それだけ簡単であれば、あのような畏るべき能力は、人工精製・・・

  もっと辛辣に述べるのであれば、「大量生産化(マ  ス  ・  プ  ロ)」が可能となってしまいますから・・・

 

  ですが―――お忘れですか? 「哲学士(フィロゾフィア)」・・・ガラティア女史の、「あの言葉」を―――

 

ダ:「信じて待て」―――

  あの時は・・・熱過ぎるほどに熱かったよ・・・今では、凄く後悔をしている・・・。

  どうしてあの時・・・あんなひどい事を云ってしまったんだろう―――って・・・ね。

 

 

 

現在の「ように」気の抜けた「ような」彼の態度を理解する者は、そうはいませんでした・・・。

けれど、今の彼の言葉が真実ならば、かつての「彼」は熱過ぎるほどに燃えていた・・・

「使命感」に―――なにより「理想」に・・・

 

しかし「現実」は、そう甘くはなく・・・程なくして「現実」に打ちのめされてしまった「彼」は、

「重き荷」の「一つ」である、「无楯」を放棄してしまった・・・

 

「現実」「真実」とは、斯くも過酷であり―――また非情なのだ・・・

かつて「想い」を遂げようとした存在が、自分が倒すべき「宿」の人である・・・

 

 

やがて「大禍」の後、「賢下五人」の方でも動きがあり、五人それぞれが独自の展開で解決を模索する処となった・・・

 

その内の一人である「哲学士(フィロゾフィア)」・・・ガラティアは、永い試行錯誤―――「千思万考」と云うべきか・・・によって、一つの結論に辿り着いたのでした。

それが、「ジルコニア」で作成した、「グラム」であり・・・また「緋刀貮漣」でもあったのです。

 

そう・・・もうお判りである様に、かの「勇者」が振るっていたとされる、「聖剣・覇蝕(はしょく)の剣」―――その材質にほど近い「ジルコニア」の魔力に(おか)された「所持者」は、

ほどなく「ジルコニア」とリンクし終えると、果たして・・・「无楯」と非常によく似た能力を得られるのではないか・・・

そのガラティアとジィルガの推論は、間違ってはいなかった―――

その「証明」として、「リリア」がいるのだから―――・・・

 

けれど・・・その「宿」は―――?

かの「勇者」の、直属の血統であるとされる、「天帝」が放棄したと云う「重き荷」は・・・?

 

すると―――そのダンテの問いに、呼応するかのように・・・

 

 

 

誰:フッフッフ―――あんれま、随分と感傷的になっちゃってぇ〜w

 

ダ:(!!)ガラティア―――

 

ガ:よ♪ 小僧―――ちぃ〜とばかし待たせちまったかね・・・

 

ダ:いや・・・それよりも―――

 

ガ:(・・・フッ―――)あ〜んまし、くよくよしなぁ〜い! 男の子だろ?

  そぉ〜れにw 第一そんな事云われたの、すっかりと忘れちまってたよww

 

ダ:(!)それは・・・どうも―――・・・

 

ガ:(はあ〜あ・・・)ヤレヤレ―――しばらく見ない間に、元に戻っちまったか?

  そんなんなりたくないから、「無責任」の(てい)を演じてた―――ちゅうんかい。

 

ダ:そうだったね・・・すっかりと忘れてたよ―――そう云えば、そんな事を云ってた事も、あった・・・かも。

 

ガ:そーそーそれで善し♪

  で〜? 向こうさんの動き・・・どうなってる―――

 

 

 

ふと・・・懐かしの声がする方向を振り向いてみると、自分に「脱力」の重要性を説いてくれた(ヒト)がいました。

 

「あまり肩ばかり張っていると、空回りすることが多いよ」

 

事実―――そうだった・・・

いくら自分が熱く革新を推し進めようとしても、「先代」からの臣は、こんな「若僧」からの提案に耳を貸すでもなく・・・

 

まるで―――「お飾り」に等しかった・・・

まるで―――「虚像」だった・・・

 

ただ自分は、かの「勇者」の血を引いている―――と云うだけで祭り上げられている・・・所詮は「神輿」だと、痛感させられた・・・

 

そんな時に出会った―――自由な発想にて、次々に「何か」を創り出していく女性・・・

 

しばらく「彼」は「彼女」の下に通い詰め、型に嵌ったそれまでの考え方を棄て・・・

「なにもしない」―――・・・一度「無」にする事により、考え方を柔軟にする術・・・「脱力」を習得したのでした。

 

すると、そこから見える、数々の可能性―――・・・

自分はこれまで、いかに「見えない制約」を受けていたのだろうか・・・

 

目の前が、開けて行くようだった・・・

 

「何も考えない」―――時には「離」も必要である事を知り、そこで思い立った「后」―――・・・

その最初の「后」には、「師」であるガラティアを据えようとしていましたが、その時には(むべ)もなく断られた・・・

だけど、「代わりに・・・」として、ある一人の人物を紹介されました。

 

そして、その(ヒト)もまた、ひとつの真理を教えてくれた・・・

(云うまでもない事だが、「最初の后」こそは、ミリティアだったりする)

 

それから都合―――「賢下五人」の五名とは、悉く(よしみ)を結び、現在で10人目となる―――・・・

 

 

けれど・・・「運命」は変えられない・・・

現在より・・・前々々代―――「7代目」の「后」の時、「その日」は近い・・・と、覚悟(さ  と)りました。

 

なにしろ・・・その(ヒト)は、かつての「自分(勇 者)」の「想い人」に、瓜二つ・・・だったのだから―――

 

『これは何かの・・・いや―――これ「も」、「運命の悪戯」と云うヤツか・・・』

 

 

自分の「伴侶」ではない―――「后」と云う役割・・・

しかし「彼女」を「后」として迎えた時、現在の「宿」が「そうでなかったとしても、ダンテには・・・

いえ―――恐らくは、女禍の方も、気付いていたのでしょう・・・

 

なにより、「勇者」としての血が・・・「託宣の巫女」としての血が・・・

「そう」させているのかもしれない―――・・・

 

けれど・・・女禍は・・・何も云わない・・・

ただ黙々と、「后」としての業務(つ と め)を、果たしてくれるだけ・・・

 

それに・・・自分(ダ ン テ)としては、いかに永く、彼女(女 禍)を押し留めておけるか・・・

だからつい―――「無責任」な姿勢に、輪を掛けてしまう・・・

それでも彼女(女  禍)は、何一つ不平不満を云うでもなく、業務(つ と め)をこなしてくれる・・・

 

けれど・・・「いつまでも」―――と、云うわけにはいかない・・・

 

結局、彼女(女  禍)には、他の誰よりも長く―――「100期」務めて貰った・・・

 

それから三代後―――今度は、「かつての自分(リ    リ    ア)」に出会った・・・

 

しかし彼女(リ リ ア)は、自分よりも速く「脱力」を・・・それも感性で受け入れていた―――

そんな彼女(リ リ ア)が・・・彼女(ジョカリーヌ)の指導を受けている・・・?

 

何と云う・・・歴史の―――運命の悪戯だろうか・・・

 

 

かつて―――「宇宙(せ か い)」か・・・「想い人(勇  者)」か・・・の、二者択一を迫られ―――

宇宙(せ か い)」を選択してしまった「彼女(託宣の巫女)」・・・

 

そんな「彼女(エ リ ス)」と「かつての自分(サ   ウ   ロ   ン)」が・・・「手を取り合って」―――??

 

 

「運命」・・・と云う名の歯車は、奇妙な音を立てて・・・今―――

大きく(きし)んで行こうとしているのでした・・・

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと