ここは―――地球がある、太陽系より離れること、数千光年の彼方・・・

「銀河系中心部」―――・・・

 

その宙空に漂う、一隻の艦艇・・・

熾緋(し ひ)色をした、意外に小さいその艦影を、誰が云うとでもなく、「ゼニス」―――と、呼ぶのでした。

 

 

第七十七話;朗 報

 

 

しかし、その艦艇の内部構造は複雑に富み、僅か10kmにも満たない全長からは、想像すら及びもつかない広大な施設が、

その小さな艦艇の内部に、いくつも点在しているのでした。

 

では、どうしてそんな、矛盾した「離れ業」が出来るのか・・・

それこそが、「ディメンション・リンク(次  元  同  調)」―――

 

もし、これが・・・万に余る施設が、一つの艦艇に収容されるとするならば、

現・銀河系に()いて、個人が有するモノの内では、最大を誇る「ソレイユ」(艦の全長、25万km超)―――

この艦艇でさえも、無理がある処だとされていたのです。

 

それを・・・その、「ソレイユ」よりも全長が短い艦艇に、総ての施設が収容されていると云うのは、

この艦艇の所有者の「開発理念(コ ン セ プ ト)」が、「コンパクトかつ、ハイパワー」に、あったからなのでした。

 

そして、決定的な事実―――それは、「ゼニス」は、「ソレイユ」よりも小型だけれど、艦自体が持つ出力は、遙かに「ソレイユ」を凌いでいたのです。

 

 

そんな、艦の内部施設の一つに、一人で入るにしては広すぎる・・・と、云っても過言ではない、「入浴施設」がありました。

 

それに、今も―――どうやら、この艦の所有者である人物が、自分の趣向にあった光景・・・

丁度、この時は、自らが創った、地球の衛星である「月」にも似た天体を、「入浴施設」の宙空に浮かべ、

しかも、「湯船」と呼ばれる補助施設には、大好物の液体・・・もっと判り易く説明するならば、「清酒」「大吟醸」「焼酎」と云った類の代物(アルコール)を、

小型の器「徳利(とっくり)」に入れ、更に小型の器である「猪口(ち ょ こ)」に注ぎ入れ、口に運ぶ―――・・・

 

そして、感極まった処で・・・

 

 

 

艦:〜〜〜―――かあぁ〜〜っ! 極楽たぁ〜この事だぁ〜ねぇ〜♪

  時間よ〜―――このまま、止まっておーくれっ♪ ・・・てか?w

  ―――ま、私でも、ンな器用な事、出来るはずもないんだけど、ネ♪

 

 

 

一体、誰に発信して、説明臭い事を(のたま)わっているのか・・・今一つ、判らないところではあるようですが―――

その人物・・・つまり、この艦艇の艦長である人物にとっては、その時こそが、至福・愉悦の時間―――では、あったようです。

 

ですが、しかし―――事態と云うモノは、そんな理屈などお構いなく、飛び込んでくる・・・と、云ったモノのようで―――

 

 

 

高:創主・ガラティア様―――

 

ガ:〜ん、だよ―――相変わらず、無粋な奴だねぇ・・・ベェンダー

べ:これは、失礼を致しました―――

  ですが、折角の朗報を、告げずにおくと云うのは・・・

 

ガ:ほぉ〜う・・・朗報―――ねぇ・・・どれのことなんだろ。

 

 

 

ゼニス艦長の、至福の時間を邪魔した人物こそは、この人物の優秀な助手であり、また、高弟(ハイ・ディスクリプト)の一人でもあった―――

そして、その人物が創り出した、作品の一つ―――「無精卵人間(ホ ム ン ク ル ス)」・ベェンダーなのでした。

 

とは云っても、ベェンダーが「お邪魔」をしたのは、何も本当に、自分を創造してくれた、創主の嗜好の邪魔をしよう・・・と、云うわけではなく、

現時点に()いて、ある地点で発生しつつある現象そのものが、創主・ガラティアの利益になる「朗報」だと思ったから、報告に上がっていたまでだったのです。

 

けれど・・・ガラティアにしてみても、一体、どの地点で発生した現象であるのか、見当もつかず・・・

―――と、云うのも、今現在、ガラティアが抱えている案件は、多岐多様にして分散しており、とても一つにまでは絞り込まれなかったのです。

 

だから、そこでベェンダーは、今回(もたら)そうとした案件を、特定すべく・・・

現象が発生した地点と、この一報を(もたら)した人物の名を、云おうとしたところ・・・

 

 

 

べ:太陽系第三惑星に出向中の―――・・・

ガ:ああ、坊やからか―――するってぇ〜と・・・あの事なんだろね。

 

 

 

総てまでを聞かないうちに、高弟(ハイ・ディスクリプト)の一人が(もたら)そうとした、朗報の内容を、立ち所に知り得てしまった、その人物・・・

お陰で、その高弟(ハイ・ディスクリプト)は、またしても朗報の全容を、自分が知らせる内に、既に()られてしまっていた事に、少し残念そうにしたのです。

 

が・・・それも、致し方のないところ―――

 

なにしろ、この人物こそは、「総てを識りし者」として、全宇宙に知られていたのですから・・・。

 

 

けれど、ガラティアも、弟子の苦労を「識らない」者ではなかった為、敢えて、朗報の全容を聞いてみた処・・・

 

 

 

べ:これになります―――

 

ガ:ほお〜〜この私の理論が、また一つ正しい―――と、証明された・・・か。

  〜に、しても・・・500年とは、随分と、待たされたもんだぁ〜ねぇw

 

べ:そのことにつきましては、マエストロ様もぼやいておられました。

  「こんなはずではなかったのに・・・」―――と。

 

ガ:ハハw あの子も、苦労が絶えないねぇ〜。

  ま―――いいだろ・・・それで? あの子のコンセプトに合ったの、誰なんだい。

べ:こちらの人物になります―――

 

 

 

500年の成果―――と、云うべきか・・・

自分が提唱する、理論が正しいと実証された報告を、太陽系第三惑星―――「地球」にいる、

やはりガラティアの高弟(ハイ・ディスクリプト)の一人である人物より受け取った・・・

 

そのことを知ったガラティアは、「500年」とは待たされたモノだとはしましたが、

今回(もたら)された報告―――「モデュールが喪われた状態での、完全なる顕現(チ カ ラ)の発動の有無の検証」・・・

これが、成功の内に終わった事に、喜びは隠せなかったモノでした。

 

しかし・・・一方で、「モデュール」を創ったと見られる「マエストロ」なる人物も、もう少し早い段階で、その現象に到達できるモノと見込んでいたのに、

(さき)の継承者であり、「清廉の騎士」の称号まで受け継いだ人物が、そこまでの能力がなかった事に、残念がってはいたのです。

 

けれど・・・今回の「朗報」の中心にいたのは、紛れもなく、リリア―――

そう、つまりは、(さき)のお話しで、リリア本人か引き起こした、「あの現象」―――・・・

緋刀(ひ と う)貮漣(に れ ん)」を(うしな)った状態で、「晄楯」を発動させた事に、ガラティアは次のステップを・・

 

つまり、これにより、今まで趣向に愉しんでいた時間は、終了―――

 

変わって、今からは・・・何者にも染まらない、漆黒の導衣に―――胸部には(きら)びやかな勲章、腰には、「斬獲剣・グラム」をあしらった飾りを付け・・・

宇宙に散在する、海千山千共を相手とする為、議場への道程(みちのり)闊歩(か っ ぽ)するのです。

 

そして―――ガラティアが、大会議場の、指定の席・・・「議長席」に収まった処で、

開口一番―――

 

 

 

ガ:それではこれより、「フロンティア・第七銀河系統括理事長」の権限に()いて、「第71289回推進会議」を執り行う―――

 

 

 

「フロンティア・第七銀河系統括理事長」―――

それが、現在のガラティア=ヤドランカ=イグレイシャスの肩書きでした。

 

以前のお話しの時代より、そう過ぎた時間ではなかった頃、ガラティアはその功績を認められて、

自らが所属する組織の、大幹部に昇格していたのです。

 

しかも・・・「地球」が所属する、「太陽系」―――その星系が所属する、「第七銀河系」を統括する、責任者に・・・

 

それでは・・・

次姉である、ジィルガ=エスペラント=デルフィーネは、どの立場なのか・・・

今回のお話しでは、どこか仄めかされているようですが・・・

 

 

「地球」のジョカリーヌ―――

「第七銀河系」のガラティア―――

そして、ジィルガ―――

 

 

この三者三様が一同に会した時、また新たなる方向性が、指し示されつつあったのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと