400年もの昔―――自分を冷遇した者達へ怨恨(う ら み)(そそ)ぐべく、「大怨霊」「大魔障」と化した「崇徳上皇」は、

当時、「華の都」として栄えた「洛中」を、荒らすだけ荒らしまわったモノでした。

 

・・・が―――ある機会をして、その音沙汰は、全く途絶えてしまったのでした。

 

その解釈を、宮中の者達は、「上皇の気が収まったからだ」―――と、し、

これ以上、自分達の生活を脅かして欲しくないモノだと、改めて、反乱者である上皇に恩赦を与え、

流刑の地である「讃岐」に塚を築き、その御霊(み た ま)慰撫(い ぶ)することとなったのです。

 

しかし―――その真相は・・・

 

 

第九十四話之参;巡りゆくもの

 

 

野盗である自分達が奪ってきたモノを、更に奪おうとする者・・・

その者のお陰で、グワゴゼウスの根城(ア ジ ト)は、壊滅状態にありました。

 

 

 

手:ギャヒ〜! な、何てヤロウだ!! オ、オレ達の攻撃が、一切通じねぇ〜!!

グ:くそぉ〜〜ヤツはヴァンパイアか!

  それに・・・くそっ!完全に遊んでやがる!!

 

サ:ヘッ―――へへ・・・さあ〜どうした、どうした!! さっさと逃げねえと、獲って喰っちまうぞ?!w

 

 

 

常人ならば、深手の傷も、その恐るべき再生能力で、立ち所に快復させてしまう、驚異の種族・・・ヴァンパイア―――

 

実は、こうした種族には、うってつけの手段があるのですが・・・

まさか、自分達に先んじて、こうした厄介な種族が来ているモノとは思ってもみなかった為、

そうした手段は、地球より遠く離れた、太陽系内の宙域に駐留させてある、自分達の母艦に置いてきている為、

現時点ではどうすることもできず、ただ・・・ただ・・・逃げ惑うしか他はなかったのです。

 

しかし、グワゴゼウスも、「逃げ」の一手だけでは、自分の沽券(プライド)にも拘わると思い、

母艦に置いてある、自分達を襲うヴァンパイアに抗う手段を取ってくるため、あの「小型偵察艇」に、戻って来たまでは良かったのですが・・・

 

 

 

グ:なにっ?! くそっ・・・もう既に、こっちにまで手を回してやがったか!!

 

 

 

(あらかじ)め、母艦に戻れないよう、手が加えられていた―――・・・

グワゴゼウスが、小型偵察艇に入ったら最後・・・総ての機能がダウンするように、細工が施されており、

ただ、しかし・・・「ある装置」だけは、機能は活かされたままだったのです。

 

その「装置」とは・・・「冷凍睡眠装置」―――

 

しかも、ご丁寧に、たっぷりと400年分眠れるだけの容量が、確保されてあったのです。

 

おまけに、出入り口も、400年後にしか開かないように操作されており、(しかも、内部からの操作はNG)

ここに来てグワゴゼウスは、400年間、「冬眠」を余儀なくされてしまっていたのです。

 

 

しかし、これこそが、グワゴゼウスに下された「科料(かりょう)」でした。

(ここで云う処の「科料(かりょう)」とは、軽い刑罰の意味、サヤやジョカリーヌから見れば「大切な人」でも、所詮、上の立場からしてみれば、「辺境惑星の現地人」止まりと云ったところか。)

 

ですが―――グワゴゼウスが率いていた「グリフォン」の部隊と、根城(ア ジ ト)を壊滅させた張本人(サ   ヤ)にしてみれば、

グワゴゼウスが活かされていること自体、不服ではなかったのではないでしょうか。

 

とは云え、サヤをしても、従わざるを得ないだけの、決定が下されたとするならば―――・・・

 

そう、サヤが、自分の友でもある「リリア」の仇討ちだと称して、グワゴゼウス達の成敗の準備をしていた処へ・・・

 

 

 

ガ:ハァ〜ロォ〜〜♪

サ:ン・ゲッ―――ガラティア・・・様??

 

ガ:ン・フフ〜―――「なんで」・・・って、顔をしているようだねぇ〜。

  よろしい―――説明してあげようじゃない。

  それにしても、ダメだよぉ〜? あんたがそんな(けつ)、下しちゃ・・・。

 

サ:はい? な、なんのことだか―――・・・

 

ガ:はいはい、見え透いた言い訳するもんじゃないよ。

  あんた、「グワゴゼウス」―――ってのを、殺すつもりでいるんだろ・・・。

 

サ:ええっ?! ど・・・どうしてそんな事を―――

 

ガ:今回の、あの子の事に関しては・・・まあ、私の方も残念に思うよ。

  もっと長生きして貰って、ジョカリーヌちゃんの為にも、役立って貰いたかったんだけどね。

 

  それに、ね―――あんたが、怒り任せに、グワゴゼウスを()ったとして・・・だったら、ジョカリーヌちゃんの憎しみの矛先は、どこへと向ければいいんだい。

 

 

 

そのガラティアの警句は、暗に、最悪の事態・・・「その矛先は、部下であるサヤ達にも及ぶかもしれない」事を物語ってもいたのです。

 

しかしそう、これから・・・征伐に向かう直前に、思わぬ人物の、非公式の来訪を受け、その思いを留めさせられたサヤがいたのです。

それにサヤは知っていたのです、憎しみの果てに、「怒れる存在」となってしまったジョカリーヌが、どう云う行動に及ぶのかを・・・

 

ならばここで、グワゴゼウスを、このままのさばらせておいていいのか―――と、云う事になってくると、

それはそれで、また別問題だったようで―――・・・

 

 

 

ガ:なぁに、そいつは簡単な事さ。

  (やっこ)さんは、ここへと来る時に、「小型偵察艇」ってので来てるんだろ。

  だったら―――あと一歩の処まで、(やっこ)さんを追いこんどいて・・・偵察艇まで逃げるように誘えばいいのさ。

  それまでに、(やっこ)さんを封じ込める手筈を整えないと・・・ね。

 

サ:あいつを・・・封じ込める??

 

ガ:ン〜〜〜まあ、この手が、唯一ジョカリーヌちゃんの目を欺ける・・・と、云っても、過言じゃないかもね。

 

 

 

正直を云って、敵わなかった―――敵うはずも、なかった・・・

この目の前の人物は、物事の先の先までも読んで、落ち着くべき処に落ち着かせようとしている・・・

到底、自分如きでは―――・・・

 

つまり、そこでガラティアが披露して見せた解決策そのモノこそ、(くだん)通りの計略であり、

これで少なくとも、ガラティアの妹であるジョカリーヌに知れる可能性は、格段に低くなった・・・

ジョカリーヌには、この後適当な理由を付けて、現在の胸中を少しでも鎮めて貰えればいい・・・

折角、ここまで順調に運んできた計画を、ジョカリーヌ自身の手によって壊してしまうのは、

ガラティアも―――何よりジョカリーヌ自身も、希まないこと・・・なのだろうから。

 

サヤは、400年間の封印を施した、小型偵察艇の前で、そんな思いを巡らせていたのです。

 

 

・・・と―――ここまでの事情は、サヤも所属する「フロンティア」の事情でしかなかったのですが・・・

 

実はこの時、讃岐にいる崇徳上皇を鎮める為、組織され派遣されてきた「討伐隊」には、また別の事情があったのです。

しかも、この「討伐隊」を率いていたのは・・・

 

 

 

細:これ―――そこにいる者は何者ぞ!

サ:はぁ〜ん? ・・・誰だ、あんた―――

 

細:不遜な(やから)めらが、我こそは―――名門細川家が惣領、細川勝元である!

サ:(〜・・・。)ああ〜―――さいですか・・・じゃ、私はこれで・・・

 

細:待たれぇい! 我が来るなり去るとは、いかなる所以か!

  怪しいヤツめ〜〜ひっ捕らえよ!!

サ:あっ?! なにしやがる―――細川の〜〜負元か何だか知らないけど、私がなにしたって云うんだよ!!

 

細:ぅぬう〜〜・・・人の気にしておる事を〜〜

  我は、(ちょう)の勅によって、讃岐に巣食う大魔障・崇徳上皇を討ち平らげよ・・・と、斯様に仰せつかった者である!

 

サ:はあ?「ストゥク」??

  ああ―――そいつなら、ここにいるぜ。

  たった今しがた、私が閉じ込めたばかりだ。

 

細:な―――なんと? 我を(たばか)りおるか!

  そちの様な下賤の(やから)が、我のような名門を差し置いて・・・

サ:(はぁん?なんだか面倒臭い事になってきやがった・・・)

  ああ〜〜はいはい、さいですか・・・なら、その手柄、あんたにくれてやるよ。

 

 

 

そう、この度、讃岐へと流され、大魔障と成り果ててしまった崇徳上皇を討伐するように、常磐の(すめらぎ)から申しつけられた「総大将」こそ、

現在の時間軸に置いて、市子の宗家でもある「細川家」の、当時の「惣領」―――「細川勝元」だったのです。

 

しかもこの人物は、名誉欲がかなり強い人物と見受けられ、あたら敵いそうもないのに、強気な発言を繰り返すばかり・・・

それにサヤも、こうした人物の性質(ク セ)が悪い事は、百をも承知だったので、

自分が封じた対象を、彼の手柄にしてやることで、この後の諍いの矛先から、どうにか逃れられたのです。

 

 

こうして―――洛中を襲っていた大魔障の(くだり)は、一旦落ち着きましたが・・・

それに引き続く常磐の内乱―――「応仁の乱」「関ヶ原の合戦」を呼び込む結果となり、

また、「応仁の乱」を引き起こさせた一方の当事者が、この「細川勝元」だったとは・・・

 

歴史は、繰り返されるモノですが、こうした愚かしい行為もまた、人間のなせる業でもあるのです・・・。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと