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(そして、終業時間になりまして・・・)
婀:姐上、それでは妾達二人、お先にあがらさせて頂きます。
お:ご免なさいね、本当は私も行きたいのですけれど・・・。 明日までにやっておかなくちゃならない仕事が出来ましたものですから・・・。
婀:何もそこで姐上が謝る必要なぞございませぬよ・・・。 ス:ま、あんまし無理しなさんな・・・って。
お:また今度、お誘いくださいましね? 婀陀那さん。 婀:はい、もちろんですとも。 では、参りますかな? ステラ殿。
お:(それにしても、どうして婀陀那さん、ステラさんなんかを誘って・・・。)
いけませんわね! このような雑念あるようでは、すぐに終わるものも、終わらなくなりますわ!?
(カフェ・バー『シャングリ・ラ』に向かう途上にて)
ス:あんのさぁ〜〜、何で婀陀那っち、ワシなんか誘おうと思ったわけ?
婀:うん? さぁ、なぜかの。 あるとすれば、急にピアノが弾きとうなってのう。 それをお主に聞いてもらいとうなってな・・・。
ス:そんなら別に、そゆのって、ワシなんかでなしに、ひぃさんの方が、わかんじゃないの??
婀:それはどうかの? 人は見かけによらぬものじゃと言うし。 ス:・・・・・。
(そうこうしているうちに、『シャングリ・ラ』につく二人、そして・・・・この扉を潜り抜けると同時に、運命の歯車が急加速するのである)
ガラン ガラン・・・・
我:はい、いらっしゃい・・・。 あ、これはこれは、婀陀那様。 いつもいつも・・・・ え゛?
婀:うむ、今日は連れがおる。 こやつじゃ。 ス:ども・・・、お初で。
我:・・・・・・!!(ガタッ!!)(流石に動揺の色を隠せず、狼狽してしまう我矛羅)
婀:どうしたのじゃ、我矛羅。 お主がうろたえるとは、また珍しい・・・。
我:い・・・・いえ、な、何でも・・・(はは・・) そ、それよりなんにいたしやしょう?
婀:うむ、とりあえず、妾は『コニャック』でももらおう。 ス:『コンニャク』?
婀:(ガク) ではのうて、『コニャック』! 仏のブランデーの一種じゃ。
ス:あ、さいですか・・・。 ふんじゃあさ、ワシは『賀茂鶴』の“大吟醸”ある?
我:ええ、ありますが・・・? ス:そいじゃそれ。
婀:ホ・・・、中々渋いのがお好きなようじゃの。 どれ・・・
カンパーイ!(チン!―☆)
ス:(ゴク・・) ぷひゃあ〜〜、五臓六腑に沁みわたるねぃ〜〜。 それよかさぁ、なんか聞かせてくれるんじゃなかったの??
婀:うむ、実は・・・・ 妾も、一度聞いただけでしかなかったのじゃが。 ここで、とある曲を耳にしてのう。
ス:へえ・・・。 婀:一曲、よろしいかの?
ス:どんぞ。 婀:それでは・・・。
ポロロン ポロン〜♪(この婀陀那が弾いた曲こそ、かつて耳にした事のある・・・・あの曲であった)
ス:『We are all alone』・・・。(ヤレヤレ・・・仕方がない・・・。) 我矛羅・・・・至急、皆を呼集しろ。
我:で・・・ですが・・・。 ス:いいから・・・・言う通りにしてくれないか・・・。
我:分かりやした・・・。
ポロン・・・・♪
婀:どうも、お粗末じゃったの。 うん? 如何された? ステラ殿。
(このとき、カウンター席のステラバスター、うつむき加減で酒をあおる。 その為、心なしか表情が分かりづらくなっている)
ス:その曲・・・一体どこで? 婀:先程も言うたように、ここで・・・・じゃが?
ス:そうか・・・、そうだった・・・・ね。 婀:(ステラ・・・・殿?)
ス:すまないが、ちょっと考え事をしてたものでね・・・。 聞き逃したところがあったんだ。 もう一度、演ってくれないかな・・・。
婀:あ、あぁ、妾なら一向に構わぬが?
ポロロン ポロン〜♪
ガラン ガラン(そして、ここで団蔵、紫苑、真沙螺が入ってくる。 と、同時に我矛羅“CLOSE”の看板を表に掛ける。)
紫:こんばん・・・・ ハッ! あ、婀陀那様・・・。 真:ちょ・・・ちょっと、兄さん、これって・・・どういう・・・。
団:御前、こらまた、一体どういうお考えで・・・ ス:今はいい、とりあえず、皆を所定の位置に・・・。
団:へい。 そら、行くぞ。
(ステラ、ここでカウンター席を離れ、おもむろに、婀陀那の近くの席まで移動する。)
ス:(ふぅ・・・) この曲、ハナちゃんがよく好んで、聞いてた曲なんだ・・・
婀:(ポ・ロ・・・) な・・・? い、今なんと?? ハナちゃん??
ス:彼女、本当にこの曲が好きでねぇ、二年前の治療室でもそうだったよ・・・。 《済みませんが、驍様、もう一度、あの曲、お願いします・・・》
ってね。 そして・・・、ワシが弾き終わった時には・・・・、もう・・・・彼女はこの世の人では、なかったんだ・・・。
婀:あ・・・、はあぁぁ・・・。(なんと・・・では、まさか・・・?)
ス:アイゼンより、聞いた事があるんだろう。 杜下のメイド長、『松元ハナコ』の事を。
婀:ス、ステラ殿・・・。 そなた、もしや・・・。 やはりそうだったのですか?!
驍:意外に早かったね、ここに辿り着くのに。 どれ、今度は、ワシが演ろう。
ポロロン ロン ポロロン〜♪
(ここで驍が弾いたのは、先程の『we
are all alone』のように静かで優しい曲調とは違い、一転してアグレッシブなものであった。しかし、この曲、婀陀那自身聞き覚えのあるようで?)
婀:こ・・・ッ、この曲は!!? 団:公主さん、あんたも聞いた事があるじゃろ? この曲を・・・。
婀:え・・っ?!(クル) (ハッ!!)そなた・・・団蔵、それに、紫苑殿に真沙螺殿まで!?
団:この曲、演ってる楽器こそ違いやすが、四年前、聞いた事があるはずですぜ?
婀:それでは・・・やはり!!? 団:そう、あんたの推察通り。
婀:そ、それでしたら、どうして、かようなマネを??
驍:『内虚外実』と言えば少しは分かるかな? 婀:え・・・っ。
驍:ワシがいて困るやつらが大勢いる。 なら、家を出て、名も変え、奔放にやってた方が気楽になれる。
それにね、ワシの一番大ッ嫌いな事は、権力を笠に着て好きな事をやりたい放題する・・・という事なんだ。
だから、いつも気を張り詰めてると、なんだかおかしくなりそうでね。 そういう意味では、ハナちゃんはワシのよき理解者でもあり、相談相手だったのさ。
でも・・・、二年前・・・、ワシの断りもなしに、遠いとこへ行ってしまったんだ・・・・。
婀:そ、そんな事が・・・
驍:そして、彼女がいなくなってすぐに、ワシは家を出、今の『ギルド』を設立したのさ。 それが一年前の事だ。
婀:なんと・・・
驍:ま、見てくれの通り、のんびり屋さんだからね、ワシは。 高校の時でも、『遅刻魔』として、教師の連中に目をつけられていたものだったよ。
それが、今では別の人に目をつけられてるけどね・・・。(フフ・・・)
婀:それは、 ウソ で、ございますな?
驍:そう思ってもらってもよし。(ふぅ・・・) さて、ワシの話はここまでだが・・・・あなたはどうする?
婀:妾は・・・、これまで通りですよ。 社主殿。
驍:(フ・・・)それを聞いて安心したよ。 明日になって、急にへりくだったり・・・なんかしないでくれよ? 婀陀那っち。
婀:分かっておりますよ。 杜下
驍 様。
驍:それじゃ、取って置きのを聞かせてあげよう。
ポロロン・・ポロン〜♪
婀:(この曲・・・。 ふふ、流石は驍様・・・。) ちょっとよろしいかの? 〜〜〜〜〜〜♪
(驍の伴奏に続いて、歌い始めた婀陀那、この曲とは・・・・??)
【驍&婀陀那】
〔DUNNY
BOY〕
団:ほぉ〜〜、これは・・・ 真:す、スゴ・・・
紫:な、なんて見事なコンピレーション 我:ヒぇ〜、思わず聞きホれちゃいそ・・・
驍:中々にやるねぇ。 婀:ふふ、妾も無駄に四年間向こうへ行っておりませんでした故・・・。
驍:ははは、そうか、それじゃ、もう一曲行ってみようか? 婀:望むところです。
(こうして、女三人、男三人は、夜が明けるまで歌い明かした・・・・と言う事です)