<弐>

 

≪臾魅のケース≫

 

(そうこうしているうちに、特訓の現場といえるところに、着いたようです。

 

そして、早速自分の母の形見の『炎』と『氷室』の両方を装着する臾魅・・・。)

 

 

臾:へへ・・・何やん、母ァちゃんの想いも、こもっとるとなると・・・・えらい重とう感じるわ、これ。

婀:ムダ口はよい、時間が惜しい。

  まずは、シャドー、“3セット”やってもらおうかの・・・。

 

  始め!

 

臾:ほっ!フッ!はっッ!!

婀:なんじゃ・・・その足のふらつきようは!        もう少し重心を低く!

  どうした・・・頭がブレておるぞ??!

 

  よし、止めい!!

 

臾:はぁ・・・はぁ・・・・はぁ〜〜あ

 

 

婀:なんじゃ、もう息が上がったのかの?

 

臾:え・・・?はあはあ・・・い、いやなんでも・・・・はあはあ・・・・・な、なんか・・・・はあはあ

  ・・・・こいつに気ィ吸い取られ・・・・はあはあ・・・・・てんちゃうかと思うて・・・はあはあ

はあぁ〜〜〜あ。

 

 

婀:ふぅむ・・・成る程。

  そういえば、お主、夜叉の血を引いていたのであったの?

 

臾:へ?せや・・・・ねんけど??

婀:ふむ・・・よし、では次には、その夜叉になって、3セットやってもらおう。

 

臾:え・・・ま、まあ、かましまへんけど。                      すぅ・・・・・ふぅぅ・・・・

 

婀:よし、では始めてみよ。

 

臾:はっ!・・・・ほっ!・・・・ふっ!はっ!はっ!

 

婀:ほぅ・・・・・(やはりな)

  見てくだされ、姐上。

 

お:あら、だいぶよくなってきましたわね。

 

婀:・・・・そうではございませぬ。

  あの者の、闘気の事でございます、先程までは、周囲に駄々漏れではありましたが・・・・

  今は、あのように、よくまとまっております。

 

お:ふぅん・・・・でも、それだけかしら?

婀:いえ・・・妾はそうは思いませぬ・・・・(まだ、何か?)

 

 

臾:フへぇ〜〜よーやく・・・・スみましたでぇ?

  あ゛ぁ〜〜きっつぅ、ちょと休憩や。

 

 

婀:ようし・・・・では5分じゃ。

  その後は、妾と組み手をするぞ。

 

臾:あぁ?!たった・・・?  モー少しくらい、まけてぇーな・・・。

 

婀:ふふ、なれば、その間、妾は体でもほぐしておこう。

バサ・・・ッ

 

(通常の状態と、夜叉の時の状態とで、計6セットのシャドーをこなす臾魅、それで、どうやら息の方あがったようで・・・?

でも、休憩はたった五分のようで、その後は婀陀那、自ら組み手の相手を志願します、でもその事に不満を漏らす臾魅。

 

そしてその間、休憩の間に、体をほぐすという婀陀那、そのために、着ている上着を取ると・・・そこには、文字通り、鍛えぬかれた鋼の体が。)

 

 

臾:(お、おわ〜〜な、なんちゅう鍛え抜かれた体しとんねん・・・こりゃあなかなかできるこっちゃあらへんで、

  趣味の粋を越えとる・・・ドンが一目置くのも分かるわ・・・・)

 

 

(そして臾魅、その婀陀那の体を見て、奮起したのか、5分を待たずに・・・・)

 

 

婀:ほぅ・・・・もうよいのか、では、かかってまいれ。

臾:はっッ!!そりゃ!てぇりゃ!

 

婀:ふんっ!ほっ!  どうした、その足の運びは!

  もう一回!

 

臾:えりゃ!とぅっ!せいぃっ!

婀:・・・・ふぅぅん!えぇいやぁ!!

 

臾:ぅわうっ!

(な・・・なんや、あの立ち位置から一歩も動かず、うちをかるぅいなしよる・・・

しかも、自分からは一つも手ェ出さんと・・・さっきから、返し技ばっかり喰ろうとるだけやん、自分・・・)

 

 

婀:どうした、不服か?!妾が組み手といいおきながら、今立っておる処から一歩も動かず、

  手をも出さぬという事が・・・・。

 

臾:え・・・っ?!(な、なんで、それを・・・)

 

婀:ふふ・・・それはの、簡単な事じゃ、

なぜなら、お主の攻撃パターン、先程のシャドーの時に、じっくり見させてもろうたからな?

既に、見切りをつけておるのじゃ。

 

臾:ええっ??!(さ、さっきのあのうちのシャドーで??ほ、ほんま・・・・なんか?)

 

婀:・・・・なれば、その証拠に、少しハンデをつけてつかわそう、

  姐上、申し訳ありませぬが、鉢巻を取って下さいませぬか?

 

 

お:はい、どうぞ・・・。

臾:ど、どないすんねや・・・・?

婀:ふふ、こうするのじゃよ・・・。

 

 

(ここで婀陀那、持ち前の鉢巻を、その額でなく、もう少し下、そう、目に施したのです。

しかし、それでは、彼女の視界は完全にふさがれたわけなのですが・・・

当の相手の者からすると・・・・?)

 

 

臾:ナ・・・・っ、目、目隠しぃ??!

 

婀:どうじゃ?これでもまだ不服かの?

臾:上等じゃあ〜〜!うちをナメ腐ってからに〜〜!!

 

婀:フフッ・・・。

(上段の突き・・・)ふんっ!  (中段の蹴り)ハッ!    (そして・・・・上段の蹴り!!)てりゃあっ!

 

 

お:(ふふ、あいも変わらず、読みの的確ですこと。)

 

臾:えええっ?!ぜ、全部受け止められた??   う、ウソやろ?

婀:フフ・・・・ッ、不思議・・・・かの?

  されど、光はなくとも、風の流れ、闘気等を感ずる事によって、

  いくらでも、お主の行動は、読めてくるものなのじゃぞ・・・。

 

 

臾:な・・・・、そ、それ・・・って元締めの・・・・?

婀:分かったのなら、かかってくるのじゃな・・・。

 

臾:・・・・・・。

婀:(ふふ・・・。)

  (中段の突き・・・)せいッ!    (下段足払い・・・)とぅッ!

(・・・・うん?闘気が消え・・・)うぐっ!(パシッ!) てぇりゃああっ!

 

 

お:あ・・・っ、入った・・・。(でも、同時に腕を掴んでのあの投げ・・・)

  『捻り込み』・・・・。

 

 

婀:プフぅ〜〜ッ・・・ようやく、闘気を抑え込むの、理解できたようじゃの。

  ふふ・・・・今のは効いたよ・・・。

 

臾:あ・・・っ、大丈夫でっか?婀陀那はん・・・。

婀:お主こそ、妾に投げられて、なんともないのかえ?

 

臾:えっ??!あ・・・、まあ頑丈なだけが、うちの取り柄やさかいに・・・。

 

お:まあっ、臾魅ちゃんたら。(クスクス)

  それでは、お次はわたくしの番ですね?

 

臾:ええ〜〜っ、もうでっか?もうちぃとインターバルなごうしてや。

お:ゼ〜〜タクいわないのっ!さ、立って・・・。

  ちょいと『煉獄掌』出してごらんなさい。

 

臾:は?・・・・こうでっか?

ぼわッ!

 

お:(ふぅん・・・炎の方は大丈夫のようね・・・・)

  じゃあ、そちらの方で何かやってごらんなさい。

 

臾:え・・・・っ?!こっち(氷室)の方で、でっか? こら ちと難しいなぁ。

  ・・・・・・・・・・『氷魔邪拳』!!

パキキ・・・・

 

 

お:あら、初めてにしては、出たじゃない。

  では、それを同時にコントロール・・・・出来ます?

 

臾:へええっ?!そらちょっとあかん・・・・ムリやわ。

 

お:何も最初から、全開で・・・・という事ではありませんよ。

  出来る事からこつこつと、互いにセーブする事ぐらい出来るでしょ?

 

臾:そら・・・・まぁ・・・・セーブする事は出来るけど・・・・

  いくらなんでも、同時には・・・・なあ。

 

お:ふう・・・・(頼りないわね。)

  それでは、交互にやってみなさいな、そして、出す間隔を互いに短くしていくのです。

 

婀:(ほほう・・・・成る程、徐々に慣らしていく・・・・というわけですな)

 

臾:フ〜〜ン、ほなら一つやってみるか・・・・。

  炎・・・・・・氷・・・・・・炎・・・氷・・・炎・氷・・・・。

 

 

(どうやらお次はおひぃさんの番、しかしこの時、彼女は婀陀那のように組み手ではなく、

この武器『炎』、『氷室』の特性に目をつけたようで・・・・ですが、それにも一苦難ありき・・・・のようです。

 

と、そこへなんとシホ=マクドガルが顔を見せます。)

 

 

マ:ふふ、どうかね?上手くやっているかね。

お:あっ、シホさん。

 

マ:ほう・・・・交互に、かね。  誰の発案で?

お:あの・・・・わたくしですが。

 

マ:ふぅむ、いい感をしていなさる。

  あれは、単独ではなく、二つ同時に使うことで、その威を発揮するものなのですよ。

 

お:やはり・・・・そうでしたの。

  以前に何かの書に目を通していた時、“違う性質のモノが混ざり合わさった時、何かしら凄まじい力場が生じる”

  というのを思い出しまして・・・。

 

 

臾:はぁ〜〜そゆことやんの。  おっしゃ、ならちとやってみるわ。

  (まずは10%に力をセーブして・・・・)

ぼうッ パキキ・・・

 

 

臾:はっ!!で、できた・・・!!

  はは・・・・で、でもちっちゃいやんなぁ・・・・これ。

 

マ:ふふ、初めてでそれだけ出来れば上等だ。

  では、それをあの岩に向けて放出してみなさい。

 

臾:あ・・・・はい。   はぁぁあッ!ちぇいやァッ!

シュパン・・・・

 

臾:な、なんやん・・・・なんも起こらへん・・・・失敗か?

マ:いや・・・・そうでもない。

 

(すると・・・・?)

 

グラ・・・・グラグラグラ・・・・

ゴ・ゴゴゴ・・・・・

グワワ〜〜ン!

 

臾:あ・・・・・

お:す、スゴい・・・・(聞いてたより遥かに・・・)あ、あんな大きな岩が・・・・

婀:し、しかも斯様な小さな気の塊で・・・・

 

お:これが、あの武器の秘めたる力・・・という事なのですか?

マ:いや、違うね・・・あの能力(ちから)こそ臾魅本来のもの、

  あの武器は単なる補助でしかない、そしてあれこそが・・・・

『臥硫巫烈風波』!

<ガルフ・ストリーム>

 

婀:なんと・・・・アレが『秘中の秘』とさえ呼ばれた・・・

 

マ:ふふ、それでは陽も落ちてきた事だし、ひとまず引き上げる事にするかね。

 

 

(ところで、あの可愛らしい二人・・・コみゅと、乃亜ちゃん・・・一体どこに行ったのでしょう?

それは・・・・彼女達は、彼女達なりに、別の意味で闘っていたのです。

 

その彼女達・・・・どうやら、一仕事終え、帰ってきたようですよ・・・・?)

 

コ:おひぃさぁ〜〜ん、これ見て、これ見てみゅ〜〜!

  栗にマツタケ、それにブナシメジ!! それにカキさんもあるみゅ!!

 

乃:・・・・あたちも、エリンギにエノキダケ、それにアユやイワナさんもあるみぅ。

 

 

臾:ヒャッ・・・・はぁ〜〜こらまたようさん採れたでんなぁ。

  晩飯のおかずにはこまらへんわ。

 

婀:フフッ、食べる事に関しては、一人前のようじゃな?臾魅殿は。

臾:それ、いわんといてや〜〜。

お:まぁまぁ、臾魅ちゃんたら・・・。(うふふ・・・)

 

 

 

 

 

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