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(何事もなかったように思われた、この『イヴ』の日の出来事、しかし、事の重大さは、この後にあったのです、おひぃがサヤを送り出し
自分のマンションへの帰途、丁度空から白いものがちらほら・・・・)
お:あら、雪・・・。 道理で冷えると思ったら・・・。 それにしても珍しいですわね、この地に雪だなんて。 『ホワイト・クリスマス』かぁ・・・。
(このわたくしの隣に・・・・あの方がいてくれたなら、どんなに・・・・)
ポロロン♪ポロン♪
(すると・・・、風に乗って、どこからかピアノの音が聞こえてきたのです)
お:(あら・・・? ピアノの音・・・?) 一体どこから・・・。
(その・・・・優しい音色に興味のわいたおひぃさん、自分の耳を頼りに、音のする方向に足を進めて行くのです。そして・・・)
お:(ようやくたどり着きましたわ・・・あら? ここは・・・) 『シャングリ・ラ』・・・桃源郷?
(そう、そのピアノの音の発生源こそ、その町に一軒あるカフェ・バー『シャングリ・ラ』からのものだったのです)
お:へェ・・・、ここにこんなところがあったなんて・・・、今まで忙しかったから、こんなところにまで目が行き届かなかったんですわ。
わたくしも中に・・・・、って、あら『貸し切り』。 仕方がありませんわね・・・またの機会にいたしましょ。
(そう、そこは今誰かが『貸し切り』で楽しんででいるようなのである。自分も中に入って誰が弾いているのか知りたかったが、
なんとなくためらわれたためその場を立ち去ろうとするおひぃさん。・・・・が、次の瞬間)
お:え・・・っ??! こ、これは・・・・『キャロル』!!
(そうそこには、今日自分達が披露したような華やかさはないものの、素朴で、いかにもクリスマスらしい歌が聞こえてきたのです)
お:あ・・・・。(も、もう少し・・・聞いてみたい、ここならば迷惑はかからないはず・・・・)
(貸し切りになっているため、入る事はままならず、かといって帰るわけにもいかず・・・、やむなく、近くの電柱に寄り添うようにして、側耳を立てるしかないおひぃさん。
ところで、今この『シャングリ・ラ』を貸し切っている連中とは誰なのでしょうか・・・?)
<バー『シャングリ・ラ』にて>
驍:なあ、アイゼン、ここであんたの得意な歌声を聞かせてくれよ。《独》 アィ:ああいいとも?《独》
【アィゼナッハ】
〔もみの木〕
真:へぇ〜〜っ、アイゼンさん歌上手いじゃないのさ。 団:ああ〜、おめぇのよりかな?
真:あんたぁ〜〜そりゃ言いっこなしだよ。
紫:でも・・・、本場の方の『キャロル』が聞けるなんて幸せですね、私達。 我:それに、御前のピアノとあっちゃ贅沢この上なしッ!!
真:ホント、ホント、世の人達が聞いたら羨むだろーねぇ〜〜。
(なんとなんと、そこには、独の武官リヒャルト=アィゼナッハその人と、驍の四人の暗部たち、そして・・・、杜下驍本人がいたのです。
(そして、どうやら婀陀那のところのパーティーの司会の真沙螺が途中で抜け出したのもこのため・・・のようです))
アィ:いやいや、そんなことはありはせんよ、私だって幼い頃から聞き付けた音色だからね。 自然と口ずさむ事が出来るものさ。《独》
驍:でも、今日は一段と声の張りの方も冴えてるじゃない? やっぱ美人二人に囲まれてると違うものかねぇ。《独》
アィ:ははは、驍もしばらくみぬうちに、口の方も達者になってきおったようだな?《独》
紫:やだぁ・・・、御前たら。 真:なぁ紫苑、あんた、なに赤くなってんだ? それに、御前なに言ってんだ??
団:おめぇは知らねぇほうがえェ。(グイッ!) 真:あぁ? なんだいそりゃ・・・、ますます気になってくるねぇ。
驍:はは・・、じゃあ、お次はアイゼンと真沙螺のデュエットでもどうだい? 真:ええ? い・・・、いいんですかぁ?
驍:本人に聞いたらどうだい?《日》 なぁ、どうだい? 彼女と一曲・・・《独》 アィ:ああ、私ならかまわないが?
驍:いいそうだよ、じゃこの曲行ってみるね。
【アィゼナッハ&真沙螺】
〔山で告げよ〕
(そして、この曲を『シャングリ・ラ』の中だけでなく、外で聞いていた人物が一人)
お:あ・・・、今度はデュエット・・・(しかもこの曲もキャロルだなんて・・・) それにしても、女性の方どこかで聞いたことのある声ですわね。
我:へぇ〜〜っ、案外やるじゃんかよ、真沙螺も 団:ま、とりえの一つもなけりゃ、かぁいそうだかんな。
紫:お頭・・・、そりゃちょっとあんまりじゃ・・・。 団:不細工で、とろくて、おまけにチンチクリンだからなぁ、こいつは。(グビ)
真:ちょいとぉ! あんたぁ、そいつはあたいにけんかうってんのかぃい!!?#
団:おお〜〜こえーこえ、ドチンチクリン様のお怒りじゃあ。(ヒックッ)
ドケシィッ!!−★
団:お゛う゛っ! なにしゃあがる! こんこんちきめぃ!! 真:ふんっ!ドチンチクリンだけよけいぢゃわッ!!
アィ:おやおや、あの二人、あんなので本当に大丈夫なのかね?《独》
驍:ああ、よく昔日本では、『夫婦喧嘩は犬も食わない』って言ってるしね、あれはアレで中々仲が良いもんなんだよ。《独》
団:よかねぇよぅ〜〜、御前・・・、ワシゃあもう一辺、見直し要求しますぜ 真:あ〜ん〜たぁ〜、そりゃ本気で言っとるのかいぃ?!#
紫:あははは・・、まぁまぁ、ここは一つ私のこの歌に免じて。 それにせっかくの『聖夜』なんですから
真:・・・・そうかい? うん、それもそうだね。
驍:それじゃあ紫苑にはこの曲とこの曲を・・・。
【紫苑】
〔オールド・トイ・トレイン〕
〔ホールを柊で飾って〕
お:あぁ・・・なんて和やかな雰囲気、とてもわたくしの入り込む余地なんて・・・・なかったんだわ・・・。 さむぅい・・・、かえろ・・・。
(男四人と、女二人・・・、たった六人でも、和気藹々とした中に入り込めるところなどなく・・・、肩に雪を積もらせたまま、
彼女は自分の寝床に帰っていったのです そして・・・、外の異変に気付いた者が約一名)
団:うん? おや・・・、どーりで冷えるとおもっとったら、雪じゃあ・・・。 真:へぇ・・・・それじゃホワイト・クリスマスかい?
団:ああそのようじゃなあ・・・・。 おや? 真:うん? どうしたんだいあんた・・・。
驍:アイゼン、アイゼン、ほら見てみろよ、あの二人・・・。《独》 アィ:成る程・・・・、確かに仲睦まじくあるようだな。《独》
真:ああっ! ほ・・・ホントだ・・・。 じ、じゃあ誰かいたって事かい? 団:ああ、恐らくな・・・。
驍:どうしたんだい、真沙螺、急に大声出したりなんかして。 びっくりするじゃないか。
真:あ・・・・っ、あぁ、御前、実は、あそこの電柱に今しがたまで人がいたようなんです。
驍:どれどれ・・・、ふ〜〜ん、成る程、確かに、あそこの電柱だけ周りのと、雪のかさとかが違うな・・・・。 どう思う? 団蔵。
団:はぁ、しかしこちらに入ってこなかった・・・というのは、襲撃者ではない・・・、かと。
驍:ふぅん・・・・、じゃあここに入れそびれてしまったとでも? 団:へい。
驍:そいつは気の毒したな。(ポリポリ・・・) それじゃ明日は『貸し切り』の看板のけとこう。
アィ:いいのかね、驍。 そんなことをしてしまうと・・・《独》 驍:友よ・・・、ワシは無粋なマネはしたくないだけだよ。
(外にいたのが、おひぃさんだとは、今となっては知る術もなく、こうしてかれらの『イヴ』の夜も更けて行ったのです)