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(アダナとエリア、どうにかジョカリーヌの部屋、奥の院に通されたようです。

 

そして・・・)

 

 

 

ジ:どうしたというのじゃ。 戦の前日でもあるまいに、そんなに殺気を漲らせ(みなぎらせ)・・・

ドサッ!

(アダナ、背負っていた布の包み(ヱルム)を床に・・・)

 

ジ:・・・・なんじゃ? これは・・・

バサッ!!

(そして、その布を取る・・・)

 

ジ:・・・・(うん?)・・・・・。

 

ア:あんた・・・これがなんだか分かるかい?

  今の今まで、人間様のために化け物と戦っていたハンターの成れの果てだよ。

 

  何で・・・何で、こいつがこんな目に遭わなけりゃなんないんだよぉ!

  私ぁ悔しいやら・・・情けないやら・・・。(ツツ・・・)

 

 

(ここでアダナの目から落涙が・・・。

 

しかし、次の瞬間、ジョカリーヌの口からは、思いもよらない言葉が発せられたのです。

 

しかも、その時の表情は、目の白いところを赤くする・・・という、

ジョカリーヌ激怒の時のあの表情だったのです。)

 

 

ジ:汚らわしい・・・。

 

ア:(え・・・?) 何・・・? なんだって言った! 今!!

 

 

ジ:汚らわしいというたのじゃ!!

  お主、今 自分が何をしたか分かっておるのか!  この浅慮者が!!

 

ア:(んな・・・)

 

 

ジ:不浄なる者の血でここの床を汚してくれおって!!

  えぇい! 不愉快じゃ、即刻ここから出てゆくがよい!!!

 

ア:(く・・・っ!!)

 そ、そうかい・・・それがあんたの今の言葉かい・・・見損なったぜ、ジョカリーヌ!!

 

  あんたに頼ろうとした私がバカだったよ。

  身も心も疲れ果てたこいつを匿って(かくまって)貰おうとした私が!!

 

  もう・・・誰にも頼らんねぇ、こいつは私一人でも守り通してみせるぜ・・・・・じゃあなっ!!

 

バタンッ!−☆

(アダナ、ヱルムを布で包み込み退室・・・)

 

 

(そう・・・アダナは傷ついたヱルムを、

ここの最高責任者でもあるジョカリーヌに預け、匿って貰おうとしたのです。

 

ですが・・・その対応は、自分の思惑とは裏腹に、かえって彼女を怒らせただけではなく。

 

強制退去という、見た目にも厄介払い的な方向で片付こうとしていたのです・・・・・。

 

 

ですが、この時の彼女の怒りの表情は、血まみれになったヱルムを運び、

そしてその血で床を汚したアダナに対して・・・・ではなく・・・。

 

誰あろう、ここに重きを為している自分達に・・・・対してだったのです。

 

それを証拠に、幼きエリアがここを出るとき、

ジョカリーヌとこんな言葉を交わして立ち去っているのです。)

 

 

エ:お辛い事ね・・・・ジョカリーヌ。

ジ:(フ・・・)

  何、今 あの者達が受けておるものとくらぶれば、いと軽きものよ・・・。

 

  それにしても・・・・既に死したる者が、その瞳より、涙をたたえられるとは・・・・。

 

エ:あなたの それ は・・・とうに枯れ果てた、というのにね・・・。

 

ジ:・・・・用件は、以上ですかな・・・。

 

エ:ええ、そうよ。 お忙しいのに、お邪魔でしたね、ジョカリーヌ。

  それから、先程よりのアダナ様の非礼・・・

 

ジ:フフ、その事でしたら構いませぬよ。

  友を思う気持ちの現われ と、そう捉えておりますれば・・・。

 

エ:ありがとう・・・・ありがとう・・・・。

 

ジ:いえ・・・、勿体のない・・・。

 

パタン!−☆

(エリア退室)

 

 

 

ジ:・・・・・。(スッ)

 

(そして、やおらジョカリーヌ、椅子より立ち上がり、

長老達のいる会議室に向かうようです。(しかし、彼女自身の怒りの色は醒めていないようです)

 

そして、そこで彼ら、彼女の目にしたものとは・・・。

 

恐らく、作業の途中でとっていたものなのだろうが、

皆一様にリラックスしており、お茶を飲む者や、談笑をしている者達ばかり(ジョカリーヌ目線)

のところへ・・・なぜか目の色を真紅に変え、怒りの表情を露わにしてそこに佇むジョカリーヌ(職員’s目線)

 

そこへ、運悪く(?)手洗いから帰ってきた長老・・・)

 

 

ジ:・・・・坊主よ、いま少しピッチを上げられぬのか・・・・?(ワナワナ・・・)

 

長:あぁ・・・先生。

  一応急いではいるのですが・・・なにぶんにも手間取ってお・・・・っ??(ギョ・ギョッ!!)

 

  あ・・・・・ああ・・・・せ、先生・・・。(ガタガタ・・・)

 

 

ジ:お主ら・・・・一体いつまで斯様(かよう)な事に、時間をかけておるのか・・・。

  それに、今は一刻を争わねばならぬのに、休憩を取っておるとは何事かっっ!!(クワッ!)

 

長:(あわわ・・・) し、しかし先生・・・。 ワシらも最善の努力は尽くしておりますので・・・。

  それに、この者達も今までに休み返上でやっておりますれば・・・。

 

ジ:えぇい!! 言い訳などは聞きとうないっ!!

 

  よいか! ギルドはあと少しで優秀なるハンター二名を失うところじゃったのじゃぞ??!

  そこのところをようく肝に銘じよっ!!

 

長:(先生・・・。)・・・・分かりました。

 

  いや、実のところ、あとは幹部の者『八部衆』の承諾を得るだけなのですが・・・。

  どういったことか、あいにくと集まりが悪くありましてな・・・。

 

  簡単にはいきませぬのじゃ。

 

ジ:(く・・・そう言う事か・・・)

 なれば伝令なりとも走らせればよいではないか!!  これっ! たれかある!!

 

伝:ははっ!

 

ジ:よいか、急ぎあやつらにこう伝えるのじゃ。

三日待ってつかわす、もしそれまでに『長老会』に出席できぬのであれば、

その者は決議の意思なしとみなすからそう心得よ

  そう伝えてくるのじゃ。 よいな?!!

 

伝:ははッ!!

 

ジ:よし、では行けッ!!

 

(ジョカリーヌの意を受けた伝令は、瞬く間に去り、

『八部衆』と呼ばれるここの八名の最高幹部のところに向かったようです。

 

そして・・・)

 

 

長:せ、先生・・・。 いくらなんでも、少々強引過ぎやせんですか・・・。

 

  それに、この発案、あの八名全員が賛成するとは限りませんぞ??

 

ジ:かまわぬ・・・。

長:は・・・・?

 

ジ:この案、もとより全員一致、可決させようとは思うてはおらぬ。

  ただ、あの八部衆の前ではっきりさせておかねば、妾の気が済まぬのじゃ・・・。

長:し、しかし・・・それでは先生が・・・・。

 

ジ:じゃから構わぬと申しておろう。

  もうこの年にもなって人に好かれようなどとは思うてはおらぬ。

 

  それに、あのような事は、妾一人で十分じゃ・・・。

 

長:エルミナールのことですか・・・。

  惨い(むごい)ものですよのぅ・・・、外見は人とはそう変わりませんというのに・・・。

 

ジ:変わりはせぬよ・・・。

長:は?

 

ジ:どこも変わってはおらぬ、ただ一点・・・既に肉体は死を迎えた・・・ということ以外はな。

長:は・・・はい・・・。

 

ジ:のぅ、坊主よ、あの二人・・・不死の身じゃというのに、人を襲わぬ・・・とは、どういう了見かの?

長:・・・・はて? 人 を襲わぬのは先生とて同じ事・・・。

 

ジ:それはのぅ、坊主よ、ココロが・・・信念がしっかりしておるからじゃ。

  人類に対して敵対はせぬというココロがある限り、人を襲うという事はないものよ・・・。

 

  じゃがな、そういうものは余程強いものではない限り、堕ちてしまうのも早いものよ。

  妾も、可愛い教え子がおらなんだら、今頃は、ハントの対象になっておったろうものよ。

 

長:・・・・・・・・・。(ゴクッ)

 

ジ:されど、あの二人はその心配は要らぬ。 何しろあの二人には特別なものがかかっておるからな?

長:特別な・・・・もの?

 

ジ:うむ。 死したる肉体に、魂を・・・ココロをつなぎとめておくものじゃよ。

長:そ、そんなことが可能なのでありますか??

 

ジ:可能じゃから、この世に存じておるではないか。

 

  (ククク・・・)あの二人は強いぞ・・・、

何しろ死のうと思うても死ねぬ体に、頑健なるココロを持ち合わせておるのじゃからな・・・。

  努々(ゆめゆめ)逆らおう・・・などとは思わぬことじゃな・・・。(ククク・・・)

 

 

 

 

 

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