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(・・・・と、まぁ、こんな事もあったわけなのですが・・・。(笑)

 

それよりも、今回の本題は、こんな事ではなくて、もっと他のところにあったわけなのです。

 

そして、ここは協会の最上階に位置する長老室の一角であり、

ここの創設者であるジョカリーヌの個室、別名『奥の院』。

 

そこには、現長老と、ジョカリーヌ、そして・・・・エリアの三人がいるようです。)

 

 

エ:そうですか・・・・今日とうとう アレ を・・・。

  永い間、ご苦労でしたね。

 

長:いやいや、何々、いつまでも、古狸がここを牛耳っていたのでは、前に進むのも進みませんからな?

 

ジ:そんな事を言うておきながらな、実は坊主のヤツはな、早くからこの職を降りたかったようなのじゃが、

  今までに適切な人材がおらなかったから、降りるに降りれなかったようなのじゃ。

 

長:ハッハッハッ、いやぁ〜〜これは先生には敵いませんワイ!

 

エ:まぁっ!(クスクス・・・)

 

長:ところで・・・エリアちゃん、今日はいつもより元気がないようじゃが・・・・

  どうかしたんかいの?

 

エ:え?い・・・いえ、ちょっと・・・今朝ここに来る前に、

  アダナ様に大変失礼な事を・・・・それで、ちょっと・・・・ね?

 

ジ:何・・・アルディナが?? 何があったというのじゃ?

エ:え〜〜っと・・・実は・・・ですね・・・

 

 

(そして、エリア、今朝方あった、事の一部始終を、つぶさに二人に話したのです。)

 

 

ジ:ハッハッハ! なんと・・・・そんな事が、まぁあやつはアレでいいところがありまするから、

  そんなに気になさらなくともよろしいですよ。

 

  それより、大事なのはこれからじゃ・・・・。

 

エ:そうですね・・・・あのお二方、これからも仲良くやって下さるといいのですけれど・・・。

 

 

 

 

(そして・・・・始業時間。

しかし、今日はお仕事を始める前に、全ハンター、全職員達が、館内放送にて、

ギルドの建物の、丁度中腹辺りの階にある『大講堂』に集められたのです。

 

そして、ここで重大な発表がなされたのです・・・・。)

 

 

長:あ〜〜、全ハンター並びに、全職員の諸君。 実は、本日重大な知らせがあるのじゃ。

 

ざわざわ・・・

 

長:その・・・重大な知らせ・・・・とはな。

 

  ワシ事、 ジョセフ=ベーリング は、本日、今日を持って、ここの・・・・

  ギルドの長老を辞める事にしたのじゃ。

 

 

え・・・

どよどよ・・・

 

 

ア:へっえぇ〜〜、とうとうあのヒゲジジィも、年貢の納め時・・・・ってなもんかねぇ。

  こいつはいいや!

 

ヱ:全く・・・あんたも口が減らないんだから・・・。

 

コ:でも・・・それだったら後任は、誰がやるのかしら??

 

ア:まぁた、ジョカりんでもやるんじゃあないの?

  まかり間違っても、私らなんかじゃあないよ。

 

ヱ:あんたみたいな自堕落リッチーが、ここの頂点に据えられた日にゃ、この世も、もうお終いですよ。

 

 

ア:あんだとぉっ!ンにゃろっ!!

ヱ:なによっ!!

 

コ:あ・・・っ!ちょっと!!二人共・・・長老様からの発表、まだ済んでませんよ??

 

 

長:ウ――オッホンッ!

  ・・・そこでじゃ、このワシの次に長老になる者の名を、発表したいと思う。

 

  ・・・・その者の名はの・・・・

 

・・・・・  ・・・・・

 

長:・・・・・実はの・・・・・

 

 

 

ア:なぁ〜〜んだよっ!勿体つけずに早く言いやがれっ!

 

 

(そして・・・現長老の口から出た、次期長老の名・・・・その者の名に、そこに居合わせた者、全員が驚嘆してしまったのです。

(しかし、その実、一番驚かずにおれなかったのは、彼女自身に違いはなかったでしょう・・・・))

 

 

長:次期長老は・・・・。

エルミナール=ド=エステバス!!

 

タ:(えっ?!)

ア:(うんっ?!)

コ:(ええっ?!)

 

ヱ:え・・・・っ、ええっ??!

 

 

ざわっ・・・・・ざわざわ・・・・

 

 

長:どうした、エルミナールよ、おるのじゃろう? いたのなら、早く前に出てきなさい。

 

ヱ:え・・・・あ・・・は、はい。

 

 

(そう、現長老が発表したのは、他の誰でもない、あのヱルムだったのです。

 

しかし、その事実に突き当たり、会場からは、異様とも思えるどよめきが起こります。

 

そして、こんな心ならずの声も・・・・・)

 

 

ハ:おい・・・なんで、日頃オレ達が狩ってる奴等と、同じヤツを上に崇めなきゃならないんだ??

ハ:そういえば、あの子・・・ヴァンパイアなんでしょ? サイテー

 

 

(・・・そう、それは・・・今迄は心でどう思っていたかは、定かではないにしても、

日頃、アダナや、ヱルムの二人を快く思っていない者達の、怨嗟の声・・・だったのです。)

 

ヱ:(ど・・・どうして・・・わ、私なんかが・・・・)

 

(そして、長老に呼ばれるまま、ナゼ自分が長老職に任命されたかも分からないヱルム、壇上に・・・・

しかし・・・そこには、恐るべき事実が・・・・

 

今朝方まで、同じ門を潜り(くぐり)、愉しげに会話までしていた、同僚達とは明らかに違う眼が・・・・

そこには、存在していたのです。

 

そして・・・・その数のあまりの多さに、絶句し、声も出ないでいるヱルムが・・・・

そこには、存在していたのです。)

 

 

ヱ:(はうぅぅ・・・・っぁあ・・・)・・・・わ・・・・わ・た・・・・し・・・は・・・・っッ・・・

 

ア:ああ?なんだぁ? あんのバカ、ガラにもなくキンチョーでもしてやがんのかぁ?!

  しっかたのねぇヤツだなぁ・・・。

 

コ:あ・・・っ!ち、ちょっと!! アダナ、どこ行くの!?

 

 

(自分の事を、白い目で見ている数千のハンター達の前で、言葉を失っているヱルムを、

緊張のあまりに、声が出ないでいるものと勘違いしたアダナ・・・・同じく壇上に。

 

しかし、彼女もまた、この目線に気付いたのです。

 

そして・・・・)

 

 

ヱ:あ・・・っ、アダナさん・・・。

 

ア:あ〜〜にやってんだ?おま・・・・(うんっ?!)(ピク! クル・・・)

  (な〜〜る程、そうか・・・こういう事だったか・・・・)

 

  ワリィな、ヱルム・・・・こいつ、ちょいと借りるぜ。

 

 

ヱ:えっ??!え・・・えぇ・・・。

 

 

ア:おぅ!おめぇーら! なんだ!その目は!!

  こいつが、今ここに立ってるのが、そんなにも気に喰わねぇのか!!  えぇ!!?

  ナニが不満なのか知らねぇが・・・・そういう事は、きちっと口に出してから言いな!!!

 

ヱ:ア・・・・ッ、アダナさん・・・。

 

ア:ケッ!全く揃いも揃いやがってよぅ・・・・。

  何してんだよ!気に喰わねぇンなら、そのローブと徽章、置いて、とっととこっから出て行きな!!

  遠慮なんか・・・・・いらねぇんだぜ・・・・。

 

 

(すると・・・・どうでしょう、大講堂に埋め尽くされていたはずのハンター達が、

次から次へと、いなくなっていったのです。

 

そして・・・・彼らのいた後には、ギルドのハンターである証の、ローブと徽章が、幾千、幾百と、

その場に残されていたのです・・・・。

 

やはり・・・・相当の不満が、そこにはあった事が、証明されたようです。)

 

 

ア:(ふふ・・・)半分近くも減っちまったな・・・・。

  ・・・と、言うことは、残りの奴等は、こいつが・・・・ヱルムのヤツが、

ここの長老でもいい・・・・ってことだな、そうなんだな。

 

  ・・・よし、そういうことだったら・・・・。

 

済まなかったな、こんな私が、しゃしゃり出たりなんかして、許してくれよ、長老様。

 

 

ス・・・・

(ここでなんと、アダナ、膝を屈し、臣下の礼をとったのです。)

 

ヱ:ああっ!や、止めて下さいッ!アダナさん??!

 

ア:よしなよ・・・・。

 

ヱ:え・・・っ??!

 

ア:上のもんが、下のもんに、同じくして膝を屈めるもんじゃあねぇ。

  それに・・・ましてや、この私に対しては・・・な、らしくはないぜ、ヱルム。

 

  それより、お前には、まだ、することが・・・・あるだろう?

 

 

ヱ:(アダナさん・・・)・・・・ありがとう。

ス・・・・ッ

 

(そして、ヱルム、気を取り直し、仕切り直しをするようです・・・・

そこには既にヴァンパイアや、ハンターの顔ではなく、一つの組織の上に立つ者の顔が・・・・

決意の表情と共にあったのです。)

 

ヱ:只今、次期長老の任を拝した、私がエルミナールです。

  これに異存のある方は、直ちに申し立てて下さい。      ・・・・・・いないのですね・・・・ありがとう。

 

  それでは、改めて、この、ギルドの長老の任、拝命させて頂きます!!

 

 

 

 

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