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(そして、この家の食卓にて。)

 

 

ア:やあ、どうも、遅くなって申し訳ない。  へぇ・・・・これがここの食卓・・・。

 

孟:ああ、まぁ大層なもてなしは出来んが、これでカンベンしてもらいたい。

ア:いゃあ、タダでここに置いてもらえるってのに・・・それに、そんな厚かましい事を、言える立場じゃあないよ、私は。

 

孟:(ほぅ・・・・。)

麗:(なんて・・・素晴しい・・・。)

 

 

ア:そいじゃいっただっきまぁ〜ッす。(はぐ・・・・んぐんぐ・・・)

  あれ??どったの?私のほうばっかり見て・・・・なんか・・・した??

 

 

孟:フフフ、アルディナさん、あんた・・・その箸の持ち方、違うよ。

ア:箸ィ??なんだ?そりゃ・・・。

 

孟:ああ、この地域独特の食器の事じゃよ。 こうやって持つんじゃ・・・。

ア:・・・・・こう??

 

孟:いや・・・・・こう。

ア:こう???

 

麗:いえ、こうです・・・。

ア:あぁ、ありがと。  へぇ〜〜こりゃあ変わった持ち方だねぇ。

 

麗:そして、これで、こう・・・・挟んで食べるんです。

ア:(こう・・・・んで、こう・・・・?!)(ぱくっ!)

 

孟:ほぅ、初めてにしちゃあ上達が早いねぇ、あんた。

ア:えッ?!そ・・・そうかい?(テレ・・・)

麗:まぁっ、面白いお方・・・。(クスクス・・・)

 

ア:へへへ、ありがと。

  あ、それからね、私の事、アダナって呼んでかまわないよ。 アルディナじゃあ、舌かみそうだろ?

 

孟:ふっ・・・・あっははは! あんた・・・見かけによらず、面白い事をいうお人だのう。 よし!気に入った!

  アダナさん、あんた学者さんじゃから、ワシの書斎・・・遠慮のう使ってみなされ。

 

ア:ヱっ??!あっ・・・・あ、ありがとう・・・。(ちゃ〜〜参ったね。まさかこんな事になるたァ・・・・)

 

 

(いやはやなんと申しましょうか・・・。 その場しのぎで口からついた言葉が、よもやこんな結果になろうとは。

この時ほど、『口は災いの元』が、身に沁みた事はなかったでしょう。

 

まぁ・・・それはそれとして。(笑)

 

食事も滞りなく終わり、この家の主人呂孟の計らいで、この家の一室に通され、そこでくつろぐアダナ。)

 

 

ア:あ〜〜ア、ヤレヤレ・・・これからどうすっかねぇ・・・。

  下手に学者になっちまったもんだから、本の一冊くらい読まなきゃいかんねぇっしょ?

 

ソ:『ま、せいぜい取り繕うんだな、学者君』

ア:む゛〜〜〜##

 

 

(・・・・と、そこへ、娘の麗姫がこの部屋に・・・・(しかも彼女、何か手に持っているようですが???)

 

 

ア:おや・・・どうかしたかい?麗姫さん。

麗:あ・・・いえ。 そ、その服ではなんでしょうから、私の母の着ていた服にお召し換えを・・・と思いまして・・・。

 

ア:へぇ〜〜〜、んで?その・・・お母さんは?

 

麗:母は・・・・父上と離縁・・・・別れました・・・。

ア:あ・・・・ッ、そ、そいつはすまないことを聞いちまったね。許しておくれ。

 

麗:いえ・・・・いいんです。 私・・・父上の事、好きですから・・・。

ア:・・・・・・。(へェ・・・。)

 

 

麗:あの、それよりこれにお召し換え・・・あっ!ど、どうも済みません!この服の着付け、知りませんですよね?

  では・・・・この私が・・・。

 

 

(それからしばらくたって・・・・)

 

 

ア:はぁ〜〜これが・・・この国の衣装なのかい?

:そうです・・・。  (まぁ・・・)よくお似合いで・・・まるで初めてではなさそう・・・。

 

ア:えっ?!そうかい??  う゛〜〜ん・・・でも、なんかよくしっくり来ないなぁ。

  やっぱいいや、私は・・・・元のまんまで十分だよ。

 

麗:そ、そうですか・・・・残念です・・・。(しゅん・・・)

 

 

 

ア:・・・・・なんだかなぁ〜、ちょっち、悪い事したみたいで・・・・後味悪いや。

ソ:『なら、今から追っかけて、着ると頼み込むかね?』

 

ア:けぇっど・・・・さぁ・・・。  もぅ・・・・なんかいいや、とっとと書斎行こうぜ?

 

 

 

(そう・・・彼女・・・麗姫が手に携えていたものとは、今は別れた母の品、この国の着物だったのです。

(果てさて・・・この着物の意味するところ・・・とは一体なんなのでしょうか・・・??)

 

そして、それは、彼女が思っていた以上に、アダナには似合っており・・・・なのですが、

当の本人、アダナはしっくり来ないようで、今まで着ていたハンターの装束に着替えたようなのです。

 

これには麗姫もがっくりと肩を落とし、失意の表情を隠せないままその部屋を後にしたのです。

 

そして、その表情を見るにつけ、なんだか悪いことをしてしまったように思うアダナ。

 

 

でも・・・まぁ、その辺のところはあまり深く考えない・・・というか、大雑把な性格のこの人の事、なので(うやむやのうちに・・・)

 

とるものもとりあえず、この家の書斎へ・・・・(ほんと、うやむやのうちに・・・))

 

 

ア:おっじゃまっしまぁ〜〜〜っす・・・。

 

  はぁ〜〜、ここがこの家の書斎かね?!たぁっくさんあるねぇ〜〜。(まっ、ギルドのそれ・・・には負けるっけどもな)

 

  どれどれ?フぅ〜〜〜ン・・・・、いろんなのがあるねぇ・・・・・。

 

  うん??なんだ?これ・・・・(パッ!パッ!)         ・・・・・・・『六韜八略』・・・・・・・・。(パラ)      こ・・・っ!これは!!

 

 

(アダナ、この書斎に数ある書の中でも、とりわけ目を引いた一冊を手にし、早速目を通したのです。

 

すると・・・・それは何と、戦術・戦略の何たるかを取りまとめた “軍略書” だったのです。

 

そこへ、主の呂孟が現れ、その本をまるで隠すかのようにしまいこむアダナ・・・。)

 

 

孟:どうかね、アダナさん。 お目当てのものは見つかりましたかね?

ア:あ・・・ッ、いや、何しろたくさんありすぎるんでね・・・目移りしてたとこなんだよ・・・。(アセ・・)

 

孟:はっはっはは!ここにはいろんな蔵書がありますからな!目移りするのも無理はなかろう。

  ま、ゆっくりとしていきなされ。

 

 

 

ア:・・・・・なぁ、ソロン?

ソ:『なんだね?』

 

ア:お前・・・あの男、どう思う?

ソ:『何を・・・・だね?』

 

ア:しらばっくれんなよ、薄々は勘付いてるんだろ? あのオヤジ、た〜だの町人なんかじゃあなさそうだぜ・・・。

ソ:『フフッ・・・バカは、バカなりに考えたようだな。』

 

ア:な・・・っ!なんだよ!それ・・・って。

ソ:『・・・・確かに、今の軍略書にしろ、言葉遣い、立ち居振る舞い、そのどれをとっても、一介の町人には程遠い。』

 

ア:じっ・・・・じゃあやはり??!

ソ:『まぁ待て、そう結論を急ぐ事ではなかろう。 じっくりと・・・腰を据えて待ってみろ、やがて向こうから話してくる機会もあろうて・・・。』

 

 

ア:(ふんむ・・・・)それもそうだな。  これはこれとして・・・他にも見てみるか・・・。

 

 

(自分を、一介の町人だという 呂孟子明 という男。  そしてその家にある、まるで不釣合いな“軍略書”。

そして、そのギャップに疑問を抱き始めるアダナ。

 

しかし・・・この疑問は、とどまるどころか、より一層膨らんでいったのです。)

 

 

 

 

 

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