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(なぜなら・・・この国独特の衣装を着たものが二名、その日の夜半に、主の呂孟を尋ねてきたからなのです。
(しかも・・・その二名の衣服、一般人のような瑣末なものではなく、宮仕えの者が着ているような雅なもの・・・だったのです。)
それを・・・書斎の窓から見かけてしまうアダナ・・・。)
ア:・・・・。(チラ) うん?なんだ?あいつら・・・。
ソ:『一介の町人の家の訪問者にしては、ちと大袈裟すぎるな・・・。』
ア:・・・・(フフン・・・)なら・・・ちょいと聞きにいってみる・・・か?
ソ:『ワシとしては、あまり気が進まんのだがね。』
ア:まぁ・・・・そう言ってるなよ。(ヘヘへ)
(・・・・どうやら、彼女の悪い虫が出てきたようです。
しかし、そこには・・・・何と、二人の客が、一介の町人であるはずの主の呂孟に対し、上賓の礼をとっていたのです。)
客:大将軍!お懐かしゅうございます・・・・。
客:今日は我ら、お願いがあってこちらに参上した次第にございます!
孟:・・・・・何の・・・・事ですかな?諸卿殿・・・。
客:こっ・・・・これはお戯れを!!
客:どうか・・・・どうか我らの願い、聞き届けて下され!!
孟:・・・・また、その話か・・・。
しかし、ワシは例の一件にて、退いた身・・・・何の所以あってか、元の鞘に戻れようか。
客:そ、それならご心配なく!!あの一件より、陛下もお考え直された由にございますれば!!
客:それに・・・かの一件を企てた、敵の間者を捕らえ、閣下の誤解も解けました。
お恥ずかしきは、それに踊らされておった我らにございます・・・。
客:そうです、ですから・・・どうか、どうかお戻りくだされ・・・・!!
孟:・・・・・・。(すっく・・・)
(ここで呂孟、やおら立ち上がり・・・・)
孟:誰かある!!湯を点ぜよ、客人がお戻りだ・・・・。
客:か・・・っ、閣下!!
客:わ、我らに戻れと・・・??!
孟:今は・・・お帰り頂こう。 凌統に、丁奉。
卿等の申し出、嬉しくはあるが・・・少しは考えさせてはくれぬか・・・。
統:お・・・っ、おお!そ、それでは・・・・!!
奉:快いお返事、お待ち申し上げております!!
(そう・・・今ここに、主を訪ねてきた者達こそ、呂孟の部下でもあり、優秀な武官 凌統 と、 丁奉 だったのです・・・。
しかし、主であり、元上官の呂孟は耳を貸す風でもなく・・・・
いや、それでも『少し考える・・・』とは、そう言う気持ちがないではなく・・・この二人も、半ば安堵の胸をなでおろしたようでございます。
(*時に、『湯を点ずる』・・・とは、お湯を沸かせることであり、それはこの地の慣わし、冷えた足を暖めて帰す・・・と、言う事。)
そして、何と、ここでこの二将の出迎えをしたのは、一人の妖艶なる女性・・・・。
その正体とは、誰あろう・・・・この国の衣装を身に纏った、アダナなのでした。)
統:・・・・・あぁ・・・っ。
奉:こ・・・っここれは・・・・。
孟:・・・・・・・・・。
ア:お二人がお帰りと聞き、顔を見せぬままでは悪かろうと存じ、参上いたしました・・・。(ス・・・・ッ)
統:てっ・・亭主・・・
奉:だっ、誰なのだ・・・この・・・・女性は・・。
孟:ワシのところに、数日前より身を寄せておる客人じゃよ。
統:そっ、そうか・・・・あ、いや・・・失礼仕った・・・。
奉:でっ・・・では我等はこれにて・・・。
(そう・・・そこには、まさに『傾国の美』が・・・。
いかに知らぬとはいえども、この二将は、アダナのこの美しさに目を奪われ、彼女を疑う事すらしなかったのであります。
(そうは言っても、ここの主、呂孟の説明で、既にそうだったのかもしれませんが・・・・ね?)
そして、二人が呂孟邸を後にした、その後で・・・)
ア:・・・・・。
{帰ったか・・・。 しっかし、聞いたかい?大将軍様・・・だとさ。 やっぱこのオヤジ、只者じゃあなかったなぁ、ソロン。}
ソ:『・・・・・。』
孟:・・・・なぁ、あんた・・・。
ア:(ぎっくぅ!)(やっ・・・ばぁ〜〜、盗み聞きしてたの・・・・バレちったか??)
な・・・なんだい?(アセ・・・アセ)
孟:その服・・・・どこで?
ア:えっ?!ああ、これかい?これは・・・麗姫ちゃんにもらったもんでねぇ・・・・。(しどろもどろ)
孟:・・・・そう・・・でしたか・・・。(フ・・・ッ)
いや、しかし・・・・よう似合うていなさいますのう。 まるで、あれにそっくりですわい・・・。
ア:(うんっ?!なんだ? アレ ・・・って。)
えっ・・・は は・・・、そうかい?まぁ、よく言うじゃない、初めては誰でもよく似合う・・・って。
孟:ははは、それを申すなら、『馬子にも衣装』・・・ですな。
ア:えっ?!あっ、ああ・・・そうそう、それそれ。 それよりさぁ・・・・誰だったんだい?あの二人・・・。
孟:なに・・・・昔の馴染みよ・・・。
ア:フぅ〜〜ン・・・・そうかい。 に、しちゃあ、随分と豪奢な服・・・・だったねぇ・・・。
孟:なぁ、アダナさん・・・。
ア:・・・・・なんだい。
孟:あんた・・・・酒は飲むほうかい?
ア:へっっ??!あっ・・・ああ、よく口にするほう・・・・だけど??
孟:ほう・・・そうかね。 ならば、ワシの秘蔵のを振舞おう。 どれ、ワシの部屋に来なさい。
ア:は・・・・ハイ。
(どうやらアダナ、この目の前の男が何者であるのか・・・、自分の口からそれを出させようと、こんな事を聞いたのですが・・・。
しかし、相手もさるもの、難なく交わしたどころか、好物のアルコールで釣られ、その問いはどこへやら・・・・のようです。)