<壱>

 

(自分達の大切な仲間を、たった一匹の妖魔にやられたのに、

一向に動こうとしないシホに、業を煮やした臾魅は、

自分の上着の襟につけられていた『狩り手』の証の徽章を、床に投げつけ、

“以後は一人でもやる”と言い残しその場を立ち去ったのです。

 

 

普段はJokaや、ステラとふざけあったりして、皆を和ませていた明るい彼女がどうして・・・

 

それは、何よりも愛しい存在、自分の母親をその者に殺されたから。

 

そう・・・・そして、それは・・・・いたし方のなかったことなのです・・・・。

 

 

ですが、その臾魅の投げた徽章を、シホは拾い上げずに、

代わりにある人物が拾い上げる事となったのです。

 

その、人物・・・・とは。)

 

 

お:(・・・・・臾魅ちゃん・・・・。)

  シホさん、どうして臾魅ちゃんの無念、分かって上げられないのです?

 

マ:勝手にさせればいい。

  所詮、今当たったところで、犬死するのは確実な事だ・・・。

 

お:そ、そんな言い方・・・って・・・。

 

マ:ならば、あなたがついていってやればいいじゃないか。

  そして・・・、真に絶望を味あわされればいい!

 

  結局何も出来ないでいる自分にな!!

 

 

サ:く・・・・っ!!(ギリ・・・)

ナ:・・・・・。

 

 

お:そっ・・・・それでは、Jokaちゃん、あなたなら・・・。

 

J:あたしも・・・・シホさんの意見に賛成ね・・・。

お:えっ?? そ、そんな・・・。

 

J:今は・・・、苦渋の選択だけれど、耐えるべきよ。

  まだ、早すぎるわ・・・。

 

婀:それは・・・・本心でありますか? 女禍様。

J:そうよ、婀陀那。

  あいつは、今のあなたなら敵わないでしょうね。

 

婀:でっ、ですが・・・それでしたら、あなた様が・・・。

 

J:私が・・・・そんなことをして、他のヤツらが黙っているとでも思っているの?

  もし、かりに私がそうしたとして、これ幸いと、第二、第三のアビスが来るかもしんないんだよ?

 

  そんなことをしたら・・・・ここはいっぺんに、めちゃくちゃになってしまう!!

  

それだけは・・・・それだけは避けなければいけない事なのよ!!?

 

婀:(じ・・・女禍様・・・。)

 

 

(そう、アビスといえば、前回説明のあった通り、ランクは“S” 通称『オリジナル』と呼ばれるこの魔物は、

たとえ頂神の力を持つものでさえも、周囲の事を考える・・・となると無事では済まされない者達だったのです。

 

 

しかし・・・

 

ここで、今までの彼女達のやり取りを聞いていた、食客のうちの一人が・・・・)

 

 

ジ:・・・・・・そなたら、結局自論を述べうるだけで、何もせぬ・・・というのか・・・・。

 

お:ジ、ジョカリーヌさん・・・。

 

 

ジ:たった一人の仲間を見捨てるとでも? では、逆にお伺いいたすが。

女禍殿、そなた、あの時妾に言った事・・・・

あれはウソ偽りじゃった・・・・と、こう言う事なのじゃな?

 

J:・・・・・残念だけど・・・・、そう言う事になっちゃうわね・・・・。

  たった一人の為に、大勢を犠牲になんかできやしない・・・!!

 

 

ジ:甘ったれた事を申すではない!!

 

・・・・然様か、ようわかった。

所詮そなたらの仲間意識・・・・とは、お遊び程度じゃったようじゃな?!

 

 

マ:あいつは・・・・自らの意思で、私達の元を離れたのだ、

  もう・・・・仲間でも何でも・・・・ない。

 

ジ:然様か、ならば、ここに居座って議論を交わすというのは、最早、無駄な時間のようじゃな

  帰らせて頂く・・・・、さ、エリア殿・・・。

エ:・・・・はい。

 

 

(どうやらジョカリーヌ、その重い口を開いたのは、自己を正当化させるための弁論大会に、業を煮やしたようで、

そもそもの仲間意識・・・・というものは、何かを問いただしたわけなのです。

 

ですが・・・・その返ってきた答えとは、またも『暖簾に腕押し』のような答え・・・・・。

 

こうして、一向に交わる事なきに終わった彼女達の論争は、

ジョカリーヌが、その時にきていた、もう一人の食客、エリアと共に引くという形で終わったのです。

 

そして、その場を去る時に言い残したジョカリーヌの一言とは・・・・。)

 

 

ジ:そなたらには非常に失望させられた!!

 

バタンッ!−☆

 

(こうして、ジョカリーヌは、失望の色を隠せないまま、エリアと共にその場を後にしたのです。

 

すると・・・・それでは、やはり・・・・・今回の交流は失敗?

  ・・・と、そのように、捕らわれがち、なのですが・・・・

どうやら、そうではないようです。

 

 

それはさておき、その後の彼らのやり取りは・・・というと?)

 

 

婀:・・・・・女禍様・・・。

 

J:近寄らないで!!

 

  ふふ・・・・、ひ、非道い神様もいたもんだよ・・・・ね。

  たった一人の人間も・・・・仲間も救えないなんて・・・・さ。(ギュッ!)

 

マ:何、仕方のないことだよ、女禍。

  何もあなたが心を痛めることは、ありません。

 

ナ:・・・・・・・。(ガタ)

 

マ:おい、ナオミ、どこに行く・・・・。

 

 

ナ:アタシも・・・・よぅく考えたんだけどさ、やっぱあんた、おかしいよ、間違ってる。

 

  だって、今まで一緒にやってきた仲間を見捨てる・・・・だなんて・・・・

  それじゃあ、まるでトカゲの尻尾切りみたいじゃあないか。

 

  そうだろ? サヤ・・・。

 

 

サ:青いな・・・・お前も。

ナ:な、なんだって? それじゃあ、あんたも??

 

 

サ:今はな・・・・今は、辛いだろうが、忍苦のし時なんだよ。

 

  何も辛いのは臾魅だけじゃあない。  こいつだって・・・・・

 

マ:それ以上は言うんじゃあない、サヤ。

サ:だって、そうじゃあないか!

  あいつは・・・・霞織は・・・あんたの一番の理解者。

 

  それを、ヤツはあんたの目の前で無残にも・・・!!

 

 

ナ:な・・・・なんだっ・・・・て?

お:そんな事が・・・・。

婀:シホ殿・・・。

 

 

マ:もう・・・・過ぎた話だ。

  今、その事を論じても、あいつは帰っては来はしない・・・。

 

 

ナ:でっ・・・でも、アタシは・・・・臾魅を、あいつを放っておくわけにはいかないっ!!

  同じ、仲間としてっ!!

 

 

マ:ならば、勝手にするがいい!!

  

  全く、どいつも、こいつも、人が親切心で言ってやれば言う程、反抗しおる!

 

  ただ、これだけは言っておくぞ、後で泣き言を言ってきても・・・・私は知らんからな!!

 

ナ:あぁ、それでも、構わないよ。  じゃあな!

バタンッ!−☆

 

 

サ:・・・・・。(スッ)

 

マ:・・・・・サヤ。

サ:オレは・・・・、誰にも指図はされねぇ。

  ただ、自分の信じる道を、行くだけさ・・・・。

 

マ:・・・・・・早まるな。

サ:へっ、心配してくれてんのか? お前らしくねぇじゃあねぇか。

  じゃあな・・・。

バタン

 

 

(ここで、ナオミ、続いてサヤ退室・・・・)

 

 

 

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