<参>
(それはそれとして・・・・、ここは臾魅の家。
そして、その座敷にて、一着の闘衣を前に、手を合わせている臾魅がいるようです。
そこには、いつもおどけている彼女はおらず、悲壮な決意を胸に秘めた、
一人の修羅の姿があったのです。)
臾:(母ちゃん・・・・よう見といてくれや・・・・)
今度こそ・・・・今度こそ仇とったんねやからな・・・!!(バシン! バシン!!)
おっしゃーっ!! やったんでぇーっ!!
(そして、その闘衣に袖を通す臾魅。
その闘衣は、現在(いま)ある生地の織り方ではなく、
古(いにしえ)から、とある部族にしか伝承されていない、特殊な生地を使用。
そして、その背には、梵字で一字 『ヴァジュラ』 と縫い付けられているのがみてとれます。
つまり、それこそが、彼女が自分の母より受け継いだ、“夜叉”の闘衣だったのです。
そして、角鬼腕『氷炎』(ひょうえん) を装着する臾魅。)
臾:(頼むで・・・・うちの相棒・・・・)(ギュッ)
(そして、静かに家を出る臾魅、でもそこには・・・!!)
臾:(うん・・・?) 誰や、そこにおるんは・・・・。
・ ・・って、なんや、アミさんやないか、どないしたんでっか? うち止めるなら、無駄なこってすで・・・。
ナ:誰が止めに来たってよ。
お前が一人で死ぬのは寂しいだろうから、一緒についてってやるのさ、不服か?
臾:ふ・・・ふふン・・・物好きもおったもんやなぁ・・・。
かましませんが・・・・死にまっせ?
ナ:旅は道連れ、世は情け・・・ってな。
ま、それにさぁ、アタシもトカゲの尻尾切りになっちまってなぁ・・・・。
臾:さよか・・・・ほな、行きましょか。(ありがとな、アミさん・・・。)
(意気揚々と、出発する二人、でも最初の障害が意外なところから現れたのです。)
臾:はぁ・・・ん? 誰や? 道のど真ん中におって、うちらの行く手を阻むんは・・・・。
ナ:(あれは・・・)サヤ? じゃあないか・・・・?
どうしたんだ、一体・・・・まさか・・・アタシ達の助太刀に・・・・?
サ:何も、オレがここにいるのは、助太刀に限った事じゃあないだろ・・・・。
ズッ・・・・ズ・ズ・ズ・・・ チャキッ!
臾:ク・・・ッ! 魔忌悧(まきり)!!
そうかい・・・ドンッ! あんた、うちら止めに来た口かいっ!!
サ:臾魅・・・お前、その闘衣・・・おっ母さんのか。
似てきちまったな・・・・何もかも・・・・、血は・・・・・争えねぇなッ!!(クワッ!!)
シェ・・・・ッ ピュ・・・・ン ヒュゥ・・・・ン
臾:へへっ、どないしたい、ドンッ! いつもの切れが、ないとちゃいまっか??!
サ:・・・・思い出すねぇ・・・。
意見出し合うにしたって、何一つ噛み合わない、お前のおっ母さんとは、よく大喧嘩やらかしたもんさ・・・・。
そんな時、『セイバー』と『スレイヤー』のヤツに中に割ってもらって、仲裁してもらったもんさ・・・・。
ナ:(うんっ?! セイバーって言うのは元締めだよな・・・じゃあ、スレイヤーって誰だ??)
臾:そうでっか・・・、どのみち、うちらはやりあう・・・っちゅう血筋っちゅうことでんな!?
アミさんっ!!
ナ:よしっ! 『凍波弾』!!
臾:喰らいや〜〜!『氷槍凍結拳』!!
パキ・・・・パキィィ・・・ン!
サ:な、なにっ!? (ナオの魔道弾に、上乗せしやがった・・・・だと?)
っ・・・くッ! あ、足・・・がっ!!
臾:へっ、どないでっか、これで暫くは動けへんはずや!
ほな、行かしてもらいまっせ!!
サ:へ・・・っ、へへへ、行っちまいやがったか・・・。
なぁ・・・霞織よ、心配するこたぁねぇよ、
お前の娘・・・このオレに、一杯食わすまでに成長しちまったぜ、安心しろよ・・・。
(臾魅たちの最初の障害の相手は、なんとサヤなのでした。
そして、彼女の口から漏れた意外な事実、それは、臾魅の母親とは、仲間ながらもしょっちゅう、喧嘩が絶えなかったという事。
それを耳にした臾魅は、当然の如くサヤに向かっていきます。
でも・・・いつも稽古をつけてもらっている臾魅は、軽くあしらわれるという苦い経験ばかり・・・
そこで、彼女のとった策とは、ナオミと一致協力して、少しでもサヤの足を留め置くという事・・・。
その作戦は当たり、足元で炸裂した氷の弾と、凍結する拳は、サヤの動きを封じたようです。
そして、当のサヤは、その事で落胆するかと思いきや、逆に何か嬉しいようです、やはり彼女も・・・・
と、そこへ??)
婀:ふふ、どうされた、サヤ殿、手を貸してしんぜようかの・・・・。
サ:なんだ、婀陀那か・・・。
スマねぇな、ちょっくら体を預けさせてもらうぜ。
よ・・・・っと!
ザス! ドシュッ!
婀:お主・・・、自ら足を斬るか?!
サ:へへっ、こうでもしなきゃあ動けねぇじゃんかよ・・・。
ま、安心しな・・・そのうち、すぐ生えてくっからよ。
婀:・・・・・途中まで負ぶってやろう。
サ:スマねぇな・・・、よっくらしょっと。
婀:どの方角じゃ?
サ:あっちだ・・・
婀:よしっ、急ぎますぞ!!
(どうやら、そこに現れたのは、婀陀那のようです。
でも・・・・ちょっと待って下さいよ? 彼女、おひぃさんの後を追ったのでは・・・・?
ですが、機転の効く彼女は、いち早くこの事を察し、おひぃの下ではなく、こちらに向かった・・・と言う事なのです。
その一方で、襲撃された本部のある地点まで、足早に進む臾魅たち二人・・・・なのですが、
どうやら、またしても、彼女達を待ち受ける存在が・・・・!!)
臾:ン・・・げっ! ひ、ひぃさんやないでっか!!?
たっ・・・はぁ〜〜、うち、こん人苦手なんやぁ・・・・。
ナ:たっ、頼む! あんた・・・そこを通してもらえないか??!
お:・・・・いい・・・顔になってきなさいましたわね、臾魅さん。
わたくしは、鼻が高うございますよ・・・。
臾:ひぃさん! すんまへん!! 説教やったら、あの世に逝ってじっくり聞きますさかいに!!
お:臾魅さん・・・あなた、何を勘違いなさっていなさいますの?
今回はお願いしに来たのよ? どう? わたくしも・・・・お仲間に入れて頂けません事?
臾:えっっ?! そら・・・まぁ、別にかましませんけど・・・
今回、生きて帰れる保障、あらしまへんで?
お:いいのよ・・・・それでも・・・どうなの? ダメ?・・・なの?
臾:ありがと・・・ひぃさん、一生恩にきますで・・・。
お:(うふふ・・・) どういたしまして。
(そう、その存在も、彼女達の後をおったおひぃさんだったのです。
ですが、止めにきたであろうと思われた彼女の口からは、またも意外な言葉が・・・・
そう、それは協力の申請だったのです。
また、新たに一人の仲間を加え、彼女達が本部(で、あろう場所)に辿り着いたそこには、
信じられない光景が目の前に広がっていたのです・・・・。)